第161話 鍛冶
「うん、もちろんだよ」
「ええ、もちろんです」
そう言いながら、二人は自分の武器を見せてくれた。
「……ほう、武器の柄の部分やその下の部分に魔石を仕込む場所があるんだな」
「はい。魔石の大きさや種類によって出せる威力が異なりますね。エネルギーを使い切った魔石は砕けてなくなりますので、注意も必要です」
「なるほど、戦闘中のここぞということろで使用できなくなったら最悪だもんな」
戦闘中や止めを刺す瞬間に魔石が使えなくなったら致命的になるかもしれない。属性付きの武器は普通の武器以上に武器の手入れは必須だな。
魔石は電池のようなもので小さくてもかなりのパワーがあるが、電池とは異なって充電をして何回も使うことはできない。そのため、魔石を使用する道具には魔石を入れ替えられる構造になっている。
ケチャラー:
まだ新しい技術だから、扱い方が難しそうだよな。
XYZ:
とはいえ攻撃力が落ちるわけではないから全然ありだと思うぞ。ヒゲダルマなら強すぎる武器に振り回されるようなことにはならないだろうし。
ルートビア:
あの圧倒的な身体能力があれば、普通は武器の方が持たなそうだよね。あの大剣は十分強そうだったけれど。
「属性には火、風、水、雷の4種類がこれまでに確認されているね。僕の武器の風属性は風を引き起こしたり、武器の切れ味を強化することができるよ」
「私の武器や那月さんたちが使っていた火属性の武器は武器に炎を纏わせるので威力が上がります。ただ、傷口を焼いてしまうので、あまり長期戦には向いていないかもしれません」
攻撃が通りにくいモンスターには長期戦を選ぶこともある。その際には多くの傷を作り、そこから血を流させる手段も有効だ。もちろん血を一滴も流さないようなモンスターも存在するけれどな。
たんたんタヌキの金:
その分結構な技術と費用が掛かるんだけれど、ヒゲダルマはその辺りを気にしないだろうし、時間もあるからいろいろと試せそうだ。
†通りすがりのキャンパー†:
魔石なんかも山ほどあるからな。いくらでも試作はできると思うぞ。
「ああ、武器の威力が上がるのは助かるし、少し面白そうではあるな。時間には余裕があるし、そろそろ挑戦してみるとするか」
材料となる魔石もあるし、以前にダンジョン協会からもらった現金もある。足りなければたくさんあるモンスターの素材やマジックアイテムなんかを売ればいい。
これまでは目立つことを避けて高価なモンスターの素材や希少なマジックアイテムは売らないでいたが、最近はだいぶ目立ってしまったからその辺りを気にする必要はなくなった。
ダンジョン協会の百武に買い取りを頼んでみてもいいかもしれない。少なくとも今のところはこちらと持ちつ持たれつの関係だしな。
「それだったら、僕たちが今お世話になっているダンジョン探索者向けの武器や防具のお店を紹介しようか?」
「ああ、それはありがたいな。ぜひ頼むよ」
ダンジョンにこもり始めた頃はそういった店に入ることもなかったし、今では武器や防具にマジックアイテムなどはすべて自分で調達しているため、そういった店にはまったく縁がなかった。
そもそもダンジョンの外では夜桜の店くらいしか関わりがなかったからな。
「私たちがお世話になっているお店の人は昔ながらの職人さんといった感じなので、きっとヒゲダルマさんと話が合うと思いますよ」
「例の会見の時にも僕たちを信じてくれていて、ずっと応援してくれていた良い人だよ」
「なるほど」
†通りすがりのキャンパー†:
ダンジョンの武器を作る人は昔ながらの職人気質な人や研究職の人なんかも多いからな。
XYZ:
昔は日本刀を作る鍛冶師みたいな人はかなり少なかったらしいけれど、世界にダンジョンが現れてからはそういった専門職の需要がめちゃくちゃ増えたって習ったな。
ケチャラー:
さすがに包丁とかはともかく、長い刀なんかを工場生産するのは無理だ。
「皆さんの言う通りです。一人一人に合ったオーダーメイドの武器を作ってもらう際にはそういった方の協力が不可欠ですね」
「僕たちも最初は普通にお店で売っている武器を使っていたけれど、オーダーメイドで作った武器はとっても手に馴染んで扱いやすいんだよね」
「確かに俺も最初は市販の物を使っていたけれど、それじゃあ満足できなくなったな。それに金属だけでなく、硬いモンスターの素材を使う際には専門的な技術も必要になるから、そういった専門職の人が必要になるんだろうな」
鍛冶の技術だけでなく、モンスターの素材にも精通していないといけない。俺も含めて今の世代の者はダンジョンやモンスターの素材のある生活が当たり前になっているが、ダンジョンが出現した当初の人たちは大変だっただろうな。
さて、二人が紹介してくれる人はどんな人なのだろう?