第159話 メイン料理
「うわあ~凄く豪快なお肉だね!」
「すごいですね! それに骨まで付いていて、とても大きいです!」
ドンッという効果音と共に出したタイタンエレファントの肉。大きなテーブルの上に丸々とした両側に骨のついた肉の塊を山盛りで載せる。
「こ、これはマンガ肉じゃん!」
「こいつは驚いたな。再現できるものなのか」
「マンガ肉?」
「よく漫画やアニメなどで出てくる骨の付いた肉の塊です。実際にできるとはすごいですね!」
瑠奈の質問に那月さんが答えてくれる。
そう、こいつはいわゆるマンガ肉と呼ばれるものだ。マンガ肉はかなり昔の原始時代のアニメで出てきたもので、骨の付いた巨大なマンモスの肉の塊を焼いた料理だ。他の漫画やアニメなどでもよく出てくるので、男性陣は全員知っているようだな。
やはりマンモスといえばこいつなので、実際に作ってみた。
「漫画やアニメとかでは簡単に作っているけれど、実際に作るのは結構大変なんだよな」
漫画やアニメでは表面全体を焼くだけで出来上がるマンガ肉だが、実際にそのように作っても表面が焼けるだけで、中身までしっかりと火は通らないのである。
そのため現実では、焼いた薄切り肉を骨に巻き付けて縛ってもう一度焼いたものか、ハンバーグのようなひき肉を巻いて外側に薄い肉を巻いたものが大半だが、このマンガ肉は大きな肉の塊となっている。
「肉の中心に火を通せるように金属製の串を均等に刺して、パン窯でじっくりと全方向から弱火でローストにしてみたんだ。一番奥はまだ少し赤いかもしれないけれど、ローストビーフみたいにちゃんと熱は入っているから安心してくれ」
ちゃんと中まで食べられるように工夫がしてある。まずはローストビーフやステーキなんかと一緒で、表面をしっかりと焼いて焼き目を付ける。そのあと肉全体に熱伝導率が高い金属製の長い串を均等に肉の中心まで刺していく。そうすることで熱された金属製の串からも肉の内部に熱を加えることができる。
そして以前に作ったパン窯をマジックバックから取り出して熱し、その余熱によって肉全体に弱火でじっくりと火を通していく。パン窯を熱すると窯の石から遠赤外線が発生し、表面だけでなく内部まで焼くことが可能になるのだ。
とはいえ、それにも限度はあるので、何回か肉の大きさを変えて試してみた。これはその成功例だな。一番最初は欲張って肉を大きくし過ぎたから、肉の中心に全然火が入っていなかったぞ。今は両手で持ってちょうどかぶりつけるくらいの大きさだ。
「うおっ、噛むと肉汁が溢れてくるな!」
「うん、表面はこんがりと焼かれていて、中はとってもジューシィーだね!」
両手で骨の両側を持って豪快にかぶりつく大和さんと零士さん。やはりマンガ肉はこうやって食べないといけない。
最初に表面をしっかりと焼き、内側に溢れる肉汁を逃さないようにしているので、肉にかぶりつくと肉汁が溢れてくる。タイタンエレファントの肉の旨みがこれでもかと口の中に広がっていく。
「味は奥まで染みわたっていないから、香辛料やタレをかけて味を変えて食べてみてくれ」
さすがにこれほど大きな肉だと、塩コショウは表面だけにしか振れなかった。もう少し時間があれば塩漬けにしたり、じっくりと調味料の味を肉に染みこませることができたのだけれどな。まあ、こうやって味変をしながら大きな肉にかぶりついていくのも悪くない。
「もう少し肉は柔らかい方が良かったんだけれどな。元々肉質が硬い肉だったから、肉の中心まで柔らかくする工夫を見つけたかったところだ」
「いえ、十分においしいですよ!」
「ええ。それにこれくらいの硬さの方が肉を食べたという充実感がありますよ! それにこういった料理は料亭などでは食べることができないので、本当に新鮮でおいしいです!」
「それならよかった」
華奈も那月さんも気に入ってくれたようでなによりだ。
肉の表面にはタマネギのみじん切りやグロウアップルを刻んだものに漬けたり、弱火でじっくりと炙ったことで多少は柔らかくなっているが、肉の中心部はまだちょっと硬い。確かに肉を食べていると感じられるが、もっといろいろと工夫をしてみたいところだ。
ダンジョン産のモンスターの肉を工夫して調理するのもなかなか楽しいものである。
「他にも炭火で焼いたカニやカニの刺身、天ぷらなんかもあるからな。いろいろと楽しんでくれ」
「うわあ~すっごく楽しみだったんだ!」
「こちらもおいしそうですね! 本当にありがとうございます」
華奈と瑠奈には横浜ダンジョンで倒したタイダルクラブや他の素材なんかを食べさせる約束だった。
抜かりなくその辺りも準備してある。今日はみんなでのんびりと楽しむとしよう。




