第158話 様々な料理
「さて、まずはタイタンエレファントの肉からだな。こっちのやつは少し薄めに切っているやつだから、塩コショウで食べてみてくれ。そっちのやつは少し厚めに切ってあるけれど、タレに漬けてあるから柔らかく食べられるようにしてあるぞ」
「あのゾウ型のモンスターですね。皆さんの配信を見て驚きましたけれど、本当に巨大なモンスターでした」
「うん。あんなに大きなモンスターは見たことなかったよ!」
「僕たちもあんなマンモスみたいなモンスターは初めて見たし、どんな味がするのか楽しみだね」
「ああ、どんな味がするのか興味があるな」
いよいよ実食である。
すでに大きめのバーベキューコンロに炭を入れて火を準備してある。トングを使って肉を載せていくと、華奈と瑠奈が手伝ってくれた。6人もいることだし、じゃんじゃん焼いていくとしよう。
「なるほど、普通のモンスターの肉よりも少し赤黒い感じですね。肉の焼ける香りはとてもおいしそうです」
「普通に焼いて食べると少し硬かったから、柔らかくする工夫をしてみたんだ。それにこれくらいの厚さならちょうどいいくらいだと思う」
昨日色々と試してみた結果、タイタンエレファントの腰の部分、牛でいうとヒレ肉が一番柔らかくておいしかった。ヒレ肉とは大腰筋の部分で、筋肉の動きが少ない部位のため柔らかく、きめ細やかな肉質が特徴である。
ヒレ肉の中でも、特に柔らかい部分はシャトーブリアンとも呼ばれる部分だが、さすがにその部分まではいまいちわからなかった。本来なら肉全体の数パーセントほどのヒレ肉、身体が大きいとはいえ、そのさらに柔らかい部分まで判別するのは難しい。
「うわあ~おいしい! しっかりとした歯ごたえがあるけれど、ちゃんと噛み切れるし、今までに味わったことがない味だね!」
「脂が少なめのお肉だけあって、しっかりとした肉の味が舌の上に伝わってきます! 見た目はあんなに大きくて硬そうだったのに、とてもおいしいです!」
瑠奈と華奈がタイタンエレファントの肉を頬張りながら目を輝かせている。
この肉は少し硬いかもしれないが、その筋を切って肉を叩くなどの柔らかくする工夫をすれば普通の肉以上の味へと変わる。ダンジョンには様々なモンスターが生息しているが、どの肉もそれぞれ特徴的な味の違いがあるから、それを食べ比べるのも非常に楽しいものである。
「こっちのお肉は味が染みこんでいておいしいですね!」
「それに少し厚切りにしてあるから、食べ応えもあっておいしいよ!」
「あのでかくてつええゾウの肉とはとても思えねえな。こいつはいける!」
もう一方でタレに漬けていた方の肉を焼いていく。
昨日いろいろと試してみて肉を柔らかくする効果が高かったタマネギ、そしてダンジョン産の果物であるグロウアップルを刻んだ物に昆布だし、醤油、調理酒、みりん、唐辛子、ニンニクとショウガを加えて混ぜたドロッとしたタレの中に一晩肉を漬けておいた。
あとはその肉を先ほどの薄切りにした肉よりも少し厚めに切り分けて焼いていく。十分にタレの味も染みこんでいるけれど、市販のちょっと高級な焼き肉のタレを付けて食べてもうまい。やはりこの焼き肉のタレの味だけは市販のものに敵わないからな。
まずは焼いた肉を堪能していく。
「さて、お次は煮込み料理だ。こいつはタイタンエレファントの鼻の部分をじっくりと煮込んでみた。見た目はちょっとあれだから、無理に試さなくてもいいからな」
「み、見た目はちょっとすごいね……」
「で、でも香りはとてもいいですよ」
さすがに瑠奈と華奈はちょっと微妙か。タイタンエレファントの鼻を輪切りにして、表面を焼いてから弱火で何時間もじっくりと煮込んだ煮込み料理だ。尻尾であるテールを煮込んだ料理は何度か作ってみたことはあったが、鼻を使った料理は初めてだ。ノーズ料理とでも言うのかな。
タイタンエレファントの鼻はとても筋肉質だが、コラーゲンが豊富で煮込めば煮込むほど柔らかくなっていく。こういった肉質のものは薬味などと一緒にじっくりと煮込むとプルプルとした食感になって、とても柔らかくなる。
まあ、見た目の方はちょっとあれだから、無理して食べることはない。ただ、ダンジョンに出てくるモンスターはゲテモノっぽい見た目でもうまいモンスターは結構いる。俺は基本的にはいろんな部位を食べてみている。
ちなみに調べてみたらダンジョンの外でも豚の鼻は沖縄で食べることができる。沖縄は豚の耳であるミミガーや豚の顔のチラガーといった感じで1頭丸々余すことなく食べるからな。
「うん、けっこういけるね! プルプルしていて噛むとすぐに解れるよ!」
「ああ。見た目はアレだが、じっくりと煮込まれて柔らかくなっていていけるな。こいつは酒が進んじまうぜ」
「臭みなどもまったくありませんね。これはおいしいです」
ネギや野菜なんかと一緒にじっくりと煮込むと柔らかくなるからな。固い肉なんかは煮込み料理と相性がいいのである。
さて、いよいよメイン料理といくか。