第155話 ゾウとマンモス
「ああ、もちろんだ。むしろ俺の方から提案しようとしていたよ」
那月さんからのお誘いがなければ俺の方から提案しようと思っていた。那月さんたちとなら、一緒に打ち上げをすることは楽しいだろう。
「今回の件とは全然関係ないんだけれど、もし那月さんたちが良ければ華奈と瑠奈も誘ってみてもいいだろうか? 横浜ダンジョンで獲ってきたモンスターの食材をご馳走する約束をしているんだ」
「ええ、もちろんです。ぜひ誘ってみてください」
「女の子が増えるのは大歓迎だよ!」
「……別に構わねえよ」
よかった、3人とも大丈夫なようだ。とはいえ、2人は忙しいだろうから、予定が空いていたらになりそうだけれどな。
「それとヒゲダルマさん、もしよければ先ほどのタイタンエレファントの食材部分をもらっていただけませんか?」
「えっ、いいのか? あれは那月さんたちだけで倒したモンスターなのに……」
先ほど倒したタイタンエレファントとの戦闘に俺は一切参加していなかったぞ。
「もちろんだよ! この1週間でいつもおいしい昼ご飯をわけてくれたからね」
「おう。それにどうせ俺たちはほとんど料理なんてせずに売っちまうだけだからな」
「ええ、ぜひもらってください。少し贅沢を言わせてもらえば、明日ヒゲダルマさんが料理してくれたタイタンエレファントを食べさせていただきたいですね」
「ああ、そんなのお安いご用だ」
もしかしたら、俺がタイタンエレファントの肉を食べてみたいと顔に出ていたのかもしれないな。ここしばらくは那月さんたちと行動を共にしていたし、俺の行動パターンは読まれているのかもしれない。
那月さんたちの厚意は遠慮なく受け取るとしよう。実はあのマンモスのようなモンスターを食べてみたいと思っていたところだ。
「……というわけで、那月さんたちからありがたくタイタンエレファントをいただいたぞ」
"うおおお~マンモスきちゃ~! @月面騎士"
"しかし、かなりデカいな……。本当にダンジョンの中のモンスターってどうなっているんだろう? @ルートビア"
"確かにこの階層にしてはかなり大型のモンスターだな。そしてどう見てもマンモスにしか見えんw @たんたんタヌキの金"
那月さんたちと別れて、48階層の奥の方にあるセーフエリアへと戻ってきた。今はタイタンエレファントの血抜きをしているところだ。モンスターの解体用具一式はマジックポーチに入れて持ってきている。
華奈と瑠奈に連絡をしたところ、明日時間を作れるようだ。
今は限定チャンネルでいつものリスナーさんたちと話している。
"そもそもゾウとマンモスってどう違うんだろう~? @WAKABA"
"両方とも同じゾウ科だが、マンモスはすでに絶滅している。マンモスは寒冷地に生息していたため、長く密な体毛があって、凍傷を防ぐためにゾウよりも小さな耳が特徴的だな。 @†通りすがりのキャンパー†"
"相変わらず詳しすぐるw そしたら、どちらかというとこいつはマンモスに近い感じなんだな。 @XYZ"
「なるほど。見た感じ食べられそうな肉っぽいぞ。大昔マンモスは食べられていたらしいけれど、ゾウとかマンモスとかって、どんな味がするんだろうな?」
"そもそもゾウは絶滅危惧種で食べるなんてもってのほかだからな。一応ggったら少し硬くて癖のある味だが食べられるっぽいぞ。 @†通りすがりのキャンパー†"
"さすがに動物園で見るゾウを見るとあまり食べる気にはならないな。だが、マンモスの肉は食ってみたいから不思議だ! @たんたんタヌキの金"
"そりゃマンモス肉といえば例の漫画肉が定番だからな。ぜひあれだけは作ってほしい! @ケチャラー"
「そうだな。確かに俺もあの肉は作ってみたい。とはいえ、あんなに大きな肉を普通に焼いてもうまく火が通らないだろうからな。じっくりと弱火で火を通して蒸し焼きにするのがいいか」
今ある漫画肉という物の大半火が通りやすい薄い肉を何重にも巻き付けたものだが、巨大なモンスターの肉を使えば骨の大きな肉ごと焼き上げることができる。ただし、あまりに大きすぎると中まで火が通らないので、低温でじっくりと焼き上げて中まで火を通す必要がある。
「まずは解体をして、いつも通りいろんな部位の味をみてみてどんな味がするかを確認してからだな。とりあえず明日のステーキとバーベキュー用に準備しておくとしよう」
毛皮や牙などのお金になりそうな素材は明日那月さんたちに渡すだけだから、今日中にすべて解体しておくとしよう。
そのあと明日の打ち上げのための準備だな。もちろん肉だけでなく、タイダルクラブとかの準備もしておくか。久々の大きな獲物だし、腕が鳴るな。
"いったいどんな味がするか楽しみだ! @月面騎士"
"マンモスの肉か、漢のロマンはここにもあったみたいだな! @たんたんタヌキの金"
"華奈ちゃんと瑠奈ちゃんも楽しみにしているだろうね~ @WAKABA"