第140話 本日のゲスト
「ヒゲダルマチャンネルのヒゲダルマだ。今日もよろしくな」
"おっ、今日も始まったな! 果たして今日はどんなモンスターを血祭りにあげることやら……。"
"斬首人キター! 今日もスローじゃないと戦闘が見られない配信乙w"
"あれっ、今日はいつものヒゲスタイルじゃないだと……?"
"ちょい無精ひげのダンディバージョンじゃないですか! 何があったの、デート?"
"いつもこっちの方がいいよ~!"
俺の配信チャンネルは例の虹野の件から登録者数がめちゃくちゃ増えて、今ではかなりの登録者数がいる。例のDQN配信者の動画が流れた時は夜桜と付き合っているのかとかコメント欄が荒れたけれど、今ではそれも落ち着いてきた。
月面騎士さんが俺の動画を編集して、タイトルやサムネを付けてくれたり、ライブ配信の切り抜き動画を作ってくれたおかげで動画がだいぶ見やすくなったこともあって、一般配信のリスナーたちにはとても好評だ。
週に1~2回行っている一般向けの配信には多くの視聴者さんがいる。今日も平日の午前中というのにたくさんのコメントが流れているが、ダンジョン内で身体能力が向上している俺の目には一瞬で流れていくコメントを瞬時に読むことができる。
「昨日は人と会っていたから、多少は身なりを整えていたんだ。それでもたった1日でこれだから面倒だよな」
"たった1日でこれとか本当に人間か!?"
"ダンジョン内には育毛作用とかでもあるのかと錯覚しそうだなw"
"そんな検証結果が出たら、ダンジョン内が頭の薄い人たちで溢れてしまうwww"
"人に会っていたって誰だ? もしかして華奈ちゃんと瑠奈ちゃんの2人か?"
相変わらず俺が一言喋ると何十件ものコメントが返ってくる。
昔の頃と比べると嬉しい限りだが、こうやってもてはやされて調子に乗ってしまうダンジョン配信者も多いようだから注意はしないといけない。
「会っていたのはツインズチャンネルの2人じゃないぞ。あの2人とは滅多に会っていないからな」
本当は毎週数回は限定配信で会っているのだが、そのことは一般配信のリスナーたちには秘密にしている。
……限定配信のリスナーさん曰く、そのことが知られたら結構まずいようだ。今では華奈も瑠奈も有名になってしまったし、俺もかなり有名になっている。ツインズチャンネルは一応アイドル配信者としてではなく、ガチ攻略の配信者として配信をしているらしいけれど、実際には2人の可愛さに惹かれているリスナーが多いらしい。
その辺りのことは例の夜桜の件で十分に思い知ったので、俺も配信でうっかりと話さないように気を付け、ダンジョンの外に出る時は変装もちゃんとしている。ガチのファンはいろいろと怖いところもあるらしいからな。やはりダンジョンの外は色々なしがらみが面倒くさい……。
「今日は昨日会っていた人たちが来てくれている。そういえば俺の配信で他の人を呼ぶのは初めてかもしれないな。こういうのをコラボというんだっけ? そんなわけで先日とてもお世話になった探索者パーティ、金色の黄昏団の皆さんだ!」
「初めまして、金色の黄昏団のリーダーをしております那月と申します。ダンジョン配信に出演するのはあまりないことなので、粗相がないように気を付けます。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします」
「初めまして、零士だよ~みんなよろしくね!」
「……大和だ」
"金色の黄昏団キター!!!"
"えっ、嘘、マジ!? なんでこんな有名なトップ探索者が!?"
"マジで一緒に配信するの!? 神回確定なんだが!!"
"きゃあああ、那月様だ!! すごい、超格好いい!"
"そうか、例の横浜ダンジョンを周回していた時の縁か。それにしても、配信には出たことがない金色の黄昏団とコラボとかやべえ! ちなみにコラボは相手も配信者だった場合だから、ゲストと呼ぶ方が正しいのかもな。"
"大和さんの配信が見られるなんて最高!"
おう、リスナーの盛り上がり方が半端じゃない……。
那月さんたちは横浜ダンジョンの最高到達階層が50階層を超える有名なトップ探索者ではあるが、メディアにはそれほど露出しないようだ。しかも3人ともイケメンのダンジョン探索者でることから女性にとても人気があるらしい。
というか、様呼びってすごいな。まあ、ぶっちゃけヒゲダルマ様とは呼ばれたくないけれど……。あとこういう時はゲストと読んだ方がいいのか。なるほど、いろいろと勉強になる。
「これから1週間だけだけれど、那月さんたちのパーティに入れてもらうことになった。しばらくの間はこの4人で横浜ダンジョンを探索することになるから、リスナーのみんなもよろしくな」
「僕たちの方から無理を言って、ヒゲダルマさんに同行させてもらうことになりました。ヒゲダルマさんの戦闘を見て勉強させてもらいたいと思っています」
"うおおおお! ヒゲダルマとトップ探索者がパーティを組むだと! 拡散、拡散"
"金色の黄昏団が教えをこうとかマジか……確かにヒゲダルマの実力は50階層を余裕で超えてそうだけれど、トップ探索者がそこまでいうとは!"
"なんという胸アツ展開!? 敵のモンスターに同情を禁じ得ない!"




