第130話 これがデフォルト
「そうだな、今後は尾行とかにも気を付けるよ。それにしても、またみんなに助けてもらってしまったな。特にXYZさんには本当にお世話になったよ。何か困ったことがあったら、いつでも言ってくれ」
"たまたまそっちに出張で行っていたから運が良かった。こっちとしてもいい土産をもらったよ。例のブラックドラゴンの燻製肉は本当にうまかった。家族も喜んでくれたぞ。 @XYZ"
「喜んでもらえてよかったよ。またこっちに来ることがあったら教えてくれ」
XYZさんには野次馬が多くて店に行けなかった俺の代わりに夜桜へマジックポーチを届けてもらえた。すでに出張の1週間が過ぎて鳥取に帰っている。
今回はゆっくりと話す時間がなかったけれど、またXYZさんが関東の方に来た際には飲みにでも行くとしよう。
「その時は僕たちも呼んでね!」
「ええ、私たちも皆さんに直接お礼を伝えられていないですからね」
「そうだな。その時は2人にも声を掛けるよ」
そういえば月面騎士さんの時も病院前で合流して、今回のXYZさんの時も俺がひとりで会ったから、瑠奈も華奈も会えていないんだよな。タヌ金さんとだけは実際に2人も会っているけれど、タヌ金さんがあの女の子だってことを2人は知らないから、2人はリスナーさんの誰にも会っていないことになる。
タヌ金さんは分からないけれど、今度XYZさんがこっちに来た時はみんなに声を掛けてみるとしよう。
"その時はぜひ私も誘ってよね。せっかく私もこうしてみんなと知り合えたことだし、XYZさんにもちゃんとお礼を伝えたいよ。それに華奈ちゃんと瑠奈ちゃんにも実際に会ってみたいからね。 @夜桜"
「わかった、その時は夜桜にも声を掛けるよ」
そういえば夜桜もXYZとはちゃんと話せていなかったもんな。やはりコメントや通話などでお礼を伝えることも大事だけれど、直接会ってお礼を伝えることも大事である。
"ほう、今度そっちに行く時が楽しみだ。とりあえずふろしきまんじゅうは外せないな! 酒を飲めるやつもいるし、豆腐ちくわとあごちくわなんかもありか。 @XYZ"
あまり聞いたことがないけれど、鳥取県のお土産なのかもしれない。俺もその際は市場では流通していないほどレアな食材を調達しに行くとしよう。
「さて、とりあえず米や調味料は以前に補給したばかりだし、しばらくは夜桜の店に行かなくても大丈夫そうだ。その間に面倒な連中は来なくなるだろう」
元は俺と夜桜が交際しているというでまかせの動画だったから、俺が夜桜の店にしばらく行かなければ残ったやつらも大人しくなるに違いない。さすがにあの4人がこれ以上何かするとは思えないしな。
ちなみに夜桜の店は明日から営業再開の予定だ。まだ野次馬根性のある輩が夜桜の店に行くかもしれないが、それもすぐに収まるという俺やみんなの判断である。
"そういう輩は話題のある話に飛びついていくだけだから、何か新しい話が出ればすぐにそっちにいくだろう。 @†通りすがりのキャンパー†"
"とはいえ、油断は禁物! ヒゲダルマはダンジョンの外に出る時は今まで以上に気を付けた方がいいし、夜桜さんはヒゲダルマから受け取った護衛用のマジックアイテムは持っておいた方がいい。 @たんたんタヌキの金"
「ああ、了解だ」
"了解したよ。みなさんが選んでくれた護衛用のマジックアイテム、何かあったら使わせてもらいます。でも、これだけのマジックアイテムを使うのはちょっとためらわれるよね。軽い気持ちで値段を調べてみたら本気で驚いたよ…… @夜桜"
「夜桜、他にもマジックアイテムはあるから、何かあれば迷わずいくらでも使ってくれ。そんなマジックアイテムより、おまえの方がよっぽど大事だからな」
「「………………」」
"またこの男は…… @ルートビア"
"たまにマジでヒゲダルマに爆発してほしい時があるよな…… @XYZ"
"しかも本気で言っているからタチが悪い。たぶんあの護衛のマジックアイテムを全部売ったら豪邸が建つくらいするぞ。 @†通りすがりのキャンパー†"
"夜桜さんが今どういう顔をしているのか気になるね~ @WAKABA"
「……いや、別に夜桜のことだけじゃないからな。華奈と瑠奈やリスナーのみんなも何かあったらすぐに言ってくれよ。昔の俺ならともかく、今の俺なら多少はみんなの役に立てると思うからな」
「は、はい!」
「うん! ヒゲさんも何か困ったら何でも言ってね! 僕たちにできることなら何でもするよ!」
「ああ、すでに2人にもいっぱい助けてもらっている」
"……まあ、ヒゲダルマはこれがデフォルトだから仕方がない。 @たんたんタヌキの金"
"確かに華奈ちゃんと瑠奈ちゃんが40階層のボスに挑む時の過保護っぷりはヤバかったw @†通りすがりのキャンパー†"
"2人が心配なのは分かるけれど、何かあれば撤退できるんだから、あそこまで心配する必要はなかっただろうに。 @XYZ"
「……ダンジョン内は想定外のことが起こるのはしょっちゅうだからな。用心しておくに越したことはない」