第127話 ただの犯罪者
「そいつの指先に刺すだけでいい。おい、お前も動いた方がむしろ危ないぞ」
「た、頼む! 許してくれ!」
「お前らが虐待してきたモンスターや迷惑を掛けた探索者や配信者もそう思っていただろうが、おまえらはやめなかっただろ。安心しろ、死にはしないはずだ」
「ひいいいい!」
「す、すまん!」
金髪ピアスが俺の言う通りにロン毛の手の平を針型のマジックアイテムで刺す。
「ぎゃあああああ!」
「お、おい大丈夫か!?」
金髪ピアスがロン毛の手に傷をつけると、突然ロン毛が頭を押さえて苦しみ出した。
「……やはり毒か? いや、傷口は腫れてもいないし、苦しんでいるようだが毒の症状は見られない。もしかして精神的な攻撃か何かか?」
「「「………………」」」
冷静にロン毛の症状を確認している俺に怯えている残りの3人。
こういった対象の観察もダンジョンで生きていく上では大切なことなのだがな。まあ、俺を怖がってくれるのならそれでもいいか。
「はあ……はあ……」
少しするとロン毛の呼吸が落ち着いてきた。
「身体的には問題なさそうだな。一体どうなったんだ?」
「はあ……はあ……斬りつけられた瞬間に頭の中にすげえ苦痛が直接叩き込まれた感じだ。手の痛みなんか吹っ飛んじまった……」
やはり精神的なダメージを与えるマジックアイテムだったか……
ダンジョンにはこういった危険なマジックアイテムもあるから怖い。こいつをモンスター相手に試した時は少し動きが鈍っただけで何が起こったのか分からなかったが、そういう仕組みだったのか。
モンスター相手にはこいつほど効いていなかったから、人の方が効くのかもしれない。というか、完全に拷問用のマジックアイテムだな。精神的に影響を及ぼすマジックアイテムは基本的に禁止マジックアイテムに指定されるので、このマジックアイテムも間違いなく禁止マジックアイテムに指定されるだろう。
……やはりこれらのマジックアイテムを虹野に渡したやつは個人ではなく、そこそこ大きな組織と考えるのが妥当だろう。あれだけのマジックアイテムを用意できるのは大規模な犯罪者組織、あるいはダンジョン協会あたりに絞られる。
今のところはダンジョン協会が怪しいが、百武やリスナーさんの言う通り、ダンジョン協会もその中でいろいろと分かれているらしい。ダンジョン協会の一部が怪しいといったところか。
「なるほど、いい情報が得られたよ。さて、次はこっちの瓶に入ったマジックアイテムだな。おそらくだがこれは飲んで使うマジックアイテムのようだ」
とりあえずこのナイフ型のマジックアイテムの効果は分かった。次のマジックアイテムはフラスコのような瓶に入った紫色をした液体だ。
ダンジョンの宝箱から現れるポーションや解毒ポーションなんかはその色や瓶の形によってある程度系統が判別できる。ポーションやハイポーションなどの体力回復は緑色で、解毒系のポーションは黄色といった感じだ。
だが、この紫色の液体はむしろ毒のような色をしている。俺は毒物を少しずつ摂取して無理やり毒の耐性をつけたが、それでもこいつを飲んでみる気はしなかった。
「もう一度一番悪いことをしたやつにこいつを試してもらおう。次は反対の左回りでいこう。それじゃあもう一度お前からだな」
俺はさっきと同じロン毛を指名する。ただし今回は左隣なので、さきほどこいつが針型のマジックアイテムを試す原因となったリーダーの金髪ピアスの悪行を話すことになっている。
「こいつは捕まらなかったが、以前にダンジョン内で強姦事件を起こしている!」
「んなっ! てめえ、ふざけんな!」
「半年くらい前に7階層で見つけたドローンを持っていない初心者の女探索者をヤったと自慢げに話していたのを聞いたんだ!」
「……本当にクズだな」
どうやらこのDQN配信者のリーダーである金髪ピアスは迷惑系配信者どころかただの犯罪者だったようだ。
これはさすがにあとで通報案件だ。日付と階層が分かれば、ダンジョン協会や警察も動けるかもしれないしな。
「さて、今のでもうほぼ決まったと思うが、次はお前の番だな」
「ま、待て! そうだ、こいつは店で商品を万引きしてそいつをネットで販売していたぞ!」
「お、おい、てめえ!」
金髪ピアスが茶髪の悪行を暴露する。もはや自分が助かりたくて必死のようだ。
一度こうなると人なんてもろいものだな。まあ、こいつらはやっていることが最悪過ぎるし、絆なんてないのかもしれないが……
この液体は一番の悪行を犯した金髪ピアスが飲むこととなった。そのあとはDQN配信者同士で醜く罵り合い、お互いの悪行や卑劣な行為や秘密などを互いにバラしあった。
当然この状況も俺のドローンで録画をしているので、これでこいつらも自分たちの悪行を知った俺に逆らうことはもうないだろう。
そして俺が用意したものと、虹野が持っていた使用方法が分からないマジックアイテムによって心身ともにボロボロとなっていった。
これでもう俺の関係者に手を出す気は無くなったに違いない。最後らへんでは完全に心が折れたのが俺にでもはっきりと分かった。
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ちょっとやり過ぎた感もあるので、書籍版では唐辛子のところまでにするかもしれませんね…
その前にここまで続刊できるかわかりませんがw(書籍でたら買ってくださいw)