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第124話 嘘つき


 こいつらの動画が保存してあるネット上のクラウドとやらに入って、俺や他の配信者が映っている動画を削除する。


 えっと、確か月面騎士さんが言うには一度削除したところで復元なんかもできるらしいから、そっちの方もすべて消しておかないと駄目なんだよな。


 事前に聞いていた作業に合わせて、リアルタイムでリスナーのみんなに確認してもらいつつ、ちゃんと動画が復元できないよう動画を完全に消去した。俺ひとりだけだとこんなに複雑なことはできなかっただろうから、いつも通りみんなのおかげだな。


 もちろん仮に俺が捕まったとしても、みんなに迷惑を掛けることだけは絶対ないようにしてある。まあ、捕まる気もないけどな。


「さて、大元の動画はこれで全部でいいんだな?」


「あ、ああ。これで全部だ……」


「ふは、ふはほい!」


「んっ、なんだ。何か言いたいことでもあるのか。もしも一瞬でも辛さを免れるためだけだったら、ギガントキャロキアを丸ごと食べさせるからな」


 ロン毛の男が俺に何かを伝えたそうにモゴモゴ言っている。


 ちなみにこいつら4人のことはリーダーの金髪ピアス、茶髪、ロン毛、ドレッドと髪型で区別することにした。もちろん今後のことも考えてきっちり実名と住所は押さえておくが、今は面倒だからそれでいいだろう。


 ロン毛にポーションを飲ませてとりあえず喋れる状態にする。今回大元の動画を削除した茶髪以外の三人にはペナルティを与えるわけだが、それはこいつが何を話すのかを聞いてからでいいか。


「……ぷはあ! す、すげえ、生き返ったみたいだぜ!」


 汗と涙と鼻水が止まらなく、顔面が酷いことになっていたロン毛の男がまともに喋れるようになったようだ。相変わらずダンジョン産のポーションの効き目はとんでもないな。


「おい、何かあるなら早くしゃべれ」


「あ、ああ。俺がこのチャンネルの動画を編集してネットに上げているんだが、実はそこだけじゃなくて外付けの記憶媒体にも動画は保存してあるんだ。今は俺の家にある」


「んなっ、聞いてねえぞ!」


「そんなこといちいち言う訳がねえだろ! ただでさえ、てめえらは動画編集のことを全部俺に任せて大した報酬も渡さねえくせしてよ!」


 そのことが初耳だったのか、茶髪の男が叫ぶ。


 どうやらあのチャンネルの動画を編集していたロン毛の男もいろいろとストレスが溜まっていたみたいだ。


 ……月面騎士さんも忙しい中動画編集をしてくれていることだし、もう少し報酬を上げてもいいな、うん。


「ほう、それはかなり有益な情報だな。ほら、冷たいミルクとダンジョンの深い階層で取れる極上の甘いスイーツだ。これを食えばさっきの辛さなんて吹き飛ぶだろう」


「お、おう。それはありがてえ……うおっ、なんつー甘さだ! こいつはうめえ!」


 先ほどまでの地獄の表情から一変して、至福の表情を浮かべるロン毛の男。


 ……我ながら見事なまでの飴と鞭だな。まあ、束の間の飴を味わうといい。


「他にも別の記憶媒体に保存してたりはしていないか? 正直に話せばこいつと同様にポーションとミルクと果物をやるぞ」


「「「………………」」」


 この状況でしゃべらないということはおそらく他にもう動画はないのだろう。まあ、たとえ動画があったとしても、あの動画をあげることがないよう徹底的に心を折るつもりではあるがな。


「他にはないようだな。それじゃあ今からその動画を削除しにこいつの家まで向かうとするか。先に言っておくが、下手なことを考えるなよ。俺だってできる限りこいつらを殺したくはない。それにダンジョンの外だからといって、俺には特別なマジックアイテムもあるからな」


「わ、わかった……」


 ダンジョンの外に動画があるというのなら、面倒だがそれを回収しに行かなければならない。ダンジョン内での身体能力は失われるが、マジックアイテムの力を借りることができるから問題はないだろう。


 とはいえ、ダンジョンの外で派手なマジックアイテムを使って問題を起こすのは俺にとってもよろしくない。まあ、これだけ脅しておけばこのロン毛の男も下手なことはしないだろう。


「おっと、その前にさっきの罰の分がまだだったな。2人は1/3個で、おまえは嘘をついていたから丸々1個だな」


「はあっ!? ちょっと待てよ、俺は嘘なんてついていない! こいつが俺たちに知らさずに動画を持っていただけだろ!」


「いや、そっちの内情なんて知らんよ。俺からしたら、まだデータが残っているのにあれで全部と言ったお前が嘘を吐いていることになるからな。ほら、さっさと食え」


「ぐぎゃあ!」


「げへっ! ごほっ!」


「ぐえええええええ!!」


 ……おう、特に丸々1個食べた茶髪の男が悶えまくっている。


 しかもこのまま辛さで苦しんだ後、このロン毛の男が逃げ出したら殺されるかもしれないと言う恐怖に怯えながら待つことになるのだから、相当に応えるだろう。


 しかし、今はこいつらの心を折るためとはいえ、こいつらが撮影していた動画配信のように弱い者いじめをしているみたいだが、やっていて気分がいいものではないな。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >なんか弱いものいじめみたいでヤダわ まぁ武力にモノを言わせてたらそうだったんでしょうけど、今回のは動画配信企画をベリハにしたようなもんだから大丈夫じゃないですかね? それに始ま…
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