第121話 謎の男
「それじゃあ今日の配信はこれまでだぜ!」
「あわせてチャンネル登録も頼むぜ! ウェ~イ!」
ダンジョンの18階層の森の中。
4人の男が金髪で両耳にピアスを付けたリーダーらしき男の周囲に浮かんでいるドローンに向けて話をしている。
「……今日の配信の視聴者数はどうだった?」
「ざっと100人ちょっとって感じだな。まだまだ全然足りねえよなあ~」
「少し前に比べりゃ倍以上は増えたが、やっぱりあのヒゲダルマのバズった配信と比べちまうとちょっと物足りねえよな、ユキヤ?」
「そうだな、あん時は今の数十倍は視聴数があったもんなあ。さすが今話題のダンジョン探索者だったぜ! にしても、やっぱコボルトとかホーンラビットをいたぶるくらいの配信じゃあ駄目か……もっと過激な配信をしたいところだが、さすがにここよりも上の階層のモンスターはあぶねえからな」
「もうちっとマシな装備があれば20階層のボスモンスターを倒して先に進めそうなんだけどよ。そのためにはモンスターを狩ったり配信で金を稼がねえとな」
「ああ。もう少ししたら、例の動画のおかげで結構な金が手に入るから、そしたら20階層のボスに挑んでみてもいいかもしれねえな。当面はそれを目標にしていこうぜ」
「おう、そうしようぜ」
4人の男は楽しそうに話しながら、森の中から帰還ゲートへと進んで行く。
「いやあ~それにしてもヒゲダルマさまさまだったぜ!」
「それな! イケメンで少し強いからっていい気になりやがって……ちょっとくらい俺たちの配信に出てくれりゃあ良かったのによ!」
「ああ、そうすりゃあいつもあんな目に遭わずにすんだし、俺たちも今くらい人気が上がってWINWINだったのにな」
「違えねえ。それにしてもあの店の女も結構可愛かったよな! もしかしたら本当にヒゲダルマと付き合っていたりして」
「いや、さすがにそりゃねえだろ。あの日は様子を見てたが、キスすらしてなかったし店が閉まってからもヒゲダルマは来なかったしな。本当に付き合ってたら、飯くらい一緒に行ってそのままホテルにしけこむだろうよ」
「そりゃ本当に彼女がいたら毎日やリまくりだろうな。俺はどちらかといえばツインズチャンネルの華奈がタイプだ。あの巨乳はマジでたまらねえ。嫌がるところを無理やり揉みしだいてやりてえな!」
「俺は瑠奈の方がタイプだぜ! あの強気な女を無理やり従わせてみたいところだ」
「どうせならあの双子両方じゃね? 双子の姉妹丼とか最高じゃん。お互いの目の前で見せつけるようにさせてよ」
「うわあ~さすが鬼畜のユキヤだ。あ~あ、あの双子がもっと弱けりゃなあ。うまくダンジョン内の人気のないところに連れ込んじまって、そのままやりたい放題できるのにな」
「ああ、さすがにダンジョンの外だとガードが厳しすぎるからな……ダンジョンの中なら人は少ねえし、配信で今どこにいるのかも丸わかりで配信用のドローンさえ何とかしちまえばやりたい放題できるんだが」
「おいおい、具体的過ぎるが、まさかすでに実行済みかよ?」
「ぶっちゃけ、ちょっと考えたことはあるけどな。ただ、そこまでしたいと思えるレベルの可愛いダンジョン配信者なんていなかったんだよ。本当に綺麗な事務所に所属しているアイドル配信者にはちゃんと強い護衛が付いているし、個人で配信をするような女はブスばっかだったぜ……」
「まあ、ダンジョンに潜るような女なんて訳ありの女ばかりだろうからな。だけど、そこそこのやつならいるかもしれないぜ。マジで計画してみるか?」
「おっ、ワンちゃんありか。そうと決まれば、部屋に戻って酒でも飲みながら女配信者の動画でも漁ってみるか!」
「いいねえ! 俺は巨乳の配信者なら文句ねえぜ!」
「ははは、相変わらずおまえは巨乳好きだな」
キンッ
金髪で両耳にピアスをしている男の周りに浮かんでいるドローンが突如真っ二つとなって地面へと落ちた。
「……はっ?」
「ダンジョンの中で大声を出しながら笑っているし、本当に隙だらけだ……そして本当に救いようのないやつらだよ」
森を出ようとする4人の目の前に突然パーティグッズらしきマスクをかぶった謎の男が現れた。
「て、てめえはまさか……がふっ!」
「ぎゃあ!」
「ぐえっ!」
「ぐはっ!」
金髪で両耳にピアスを付けた男は目の前に突然現れたマスクをかぶった男に心当たりがあったようだが、その言葉を発する直前にマスクの男の姿が目にもとまらぬ速度で動き、4人の男が一瞬で地面に伏した。
「本当に危機感のないやつらだな。自分たち自身でも言っていたが、配信で今どこにいるかは丸分かりで、配信用のドローンをなんとかしてしまえば好き放題にできるのはこっちも同じなのにな。おっと、一応付近に探索者やダンジョン配信者はいないことを確認したが、さっさとこいつらを例の場所へ運ぶか」
そう言いながらマスクをかぶった男は軽々と成人男性4人を両肩に担ぎ、ダンジョンの森の奥へと消えていった。