第119話 今後のこと
俺がXYZさんとダンジョンの外であっている間に、みんなにはこれからのことを考えてもらっていた。
あのDQNどもの動画は結構広がってしまっているらしいし、どうすればよいのか俺よりもみんなの方が詳しいだろうからな。
"ヒゲダルマとXYZがいない間にいろいろと調べてみたんだが、正規の手続きを踏んでいるとかなりの時間が掛かりそうなことが分かった。 @†通りすがりのキャンパー†"
"まずはあのDQN配信者の本名と住所が分からないと何もできないから、弁護士に相談をしてから開示請求をして、あいつらの名前と住所を手に入れないといけないっぽい。それから裁判所や警察に告発をして民事訴訟と刑事訴訟を起こすことになりそうなんだよね。 @月面騎士"
"それ以前にヒゲダルマの住所がないから、安アパートでも借りて住所を作らないといけないみたいだ。一応身分証明書はダンジョン探索者の資格でいいんだよね? @ルートビア"
「ああ、ダンジョン探索者の資格は運転免許証代わりにもなるぞ。あっ、でも登録されている住所は以前の住所だから、先に住所を変更しないと駄目かもしれない。それにしても、だいぶ手続きは面倒になりそうだな……」
"やっぱり住所がないと手続きの手順が一気に増えるんだよ……なんで住所がないかなあ~ @たんたんタヌキの金"
"今更な問題w しかもそれで個人に対しての名誉毀損罪の賠償金なんて、たかだか数十万くらいにしかならなそうなんだよ。実際のところヒゲダルマは知名度があっても、それで仕事なんかを受けている企業とかじゃないから、大した賠償金額にはならないっぽい…… @ケチャラー"
"しかもあのDQN配信者はアパートで撮影機材もしょぼかったことから考えると、その賠償金額すら払えない可能性があるな。裁判に勝ったとしても、下手したらまったく金が返ってこないなんてこともあるぞ。 @XYZ"
「金が返ってこないのは気にしないが、問題が長引いてあの動画が更に広まったり、同じようなことを繰り返されそうになることが一番の問題だな」
確かに裁判に勝ったとしても相手が支払えるもお金がなくて泣き寝入りするということがあると聞いたことがある。ただ、俺の場合は金については戻ってこなくても問題ない。
問題はやはり時間か。裁判も時間が掛かるというし、どの段階で動画の停止命令が出るのかも分からないし、そもそもあいつらがその命令に従うかも怪しいんだよな。
正規の方法だと住所を取得してから弁護士を雇って、その開示請求とやらをして相手の名前や住所を調べて、ようやく裁判が始まるとしたら平気で1年以上掛かっても不思議はない。
"そんなわけでまずはダンジョン協会の伝手を使ってどうにかできないか確認してみるのが一番早い。 @†通りすがりのキャンパー†"
"夜桜さんのボディーガードをダンジョン防衛隊に頼むのなら、ダンジョン協会へ連絡をするよね~? @WAKABA"
「そうだな。どちらにせよしばらくは夜桜のボディーガードは頼むつもりだし、一度ダンジョン協会へ連絡をしてみるよ」
仮に動画がすぐに止められたとしても、しばらくの間はボディーガードを頼むつもりだ。夜桜には護衛用のマジックアイテムを渡したとはいえ、念には念を入れておいた方がいい。
"なんだかいろいろと申し訳ないね…… @夜桜"
"今回の件は夜桜さんもヒゲダルマが悪いという訳でもないからな。 @ケチャラー"
"ああ。しいて言うなら、あのDQN配信者がピンチの時に遭遇してしまったヒゲダルマの運が悪かっただけだ。 @たんたんタヌキの金"
"まさか人助けをしてこんな目に遭うとか、ヤバイやつらもいるもんだよ…… @月面騎士"
本当にあの時あいつらと遭遇したのは運が悪かったな。あるいは早々にあの場を立ち去るべきだった。俺はヒーローなんかではないから、もしも時を戻せるのなら迷わずあいつらを見殺しにしていただろうな。
「もしもし、百武です」
「ヒゲダルマです。百武さん、少しお時間をいただいても大丈夫でしょうか?」
「はい、もちろんです、ヒゲダルマ様」
ダンジョン協会なんちゃら支部のなんとかという役職の百武に電話をしたところ、いつもと同じようにすぐ電話に出てくれた。相変わらずこの人は何時に連絡をしても、数コール以内に必ず出てくれるよな……
「もしかすると、本日配信されたビビビンチャンネルというダンジョン配信者の配信についてですか?」
「………………」
相変わらずこの人は察しが良すぎて、ちょっと怖いのだが……
「はい、まさにその件についてです。そちらの動画を見てくれていたなら話は早いですね。実はその動画は完全にでっち上げられたもので、確かに普段その店で買い物はしていたのですが、その店の店主とは別に深い仲という訳ではありません」
「そのようですね。こちらでもその配信を確認させていただきましたが、動画の加工があまりに不自然でしたし、何より他の配信を見てもあのチャンネルの信憑性はないように思われました」
「そうなんですよ。ですが、あの配信を見て直接あの店に行く人も数名はいると聞いたので、念のためダンジョン防衛隊のボディーガードの力を借りたいと思っておりまして……」
「承知いたしました。すぐにこちらでダンジョン防衛隊の優秀なボディーガードを手配させていただきます。手配するボディーガードは3人ほどで大丈夫でしょうか? それと15分もすれば手配可能だと思いますが、どこへ向かわさせればよろしいでしょうか?」
仕事が早すぎて本当に怖いんですけど!




