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第111話 暇なやつら


『へっへ~この映像を撮るのには苦労したぜ! 何せヒゲダルマのやつは毎日長時間ダンジョンに潜っていやがったからなあ』


『あいつを見つけるのに4人がかりで4つのダンジョンの出口に何日張り込んだことか……もしかしたら、深夜にダンジョンへ出入りしていたのかもしれねえな』


『実は俺たちはあいつと直に会ったことがあるんだぜ! だから変装していても、あいつのことはバッチリ分かったんだよ。まあ、大宮ダンジョンじゃなかったら、変装している配信者や探索者が多すぎて見つからなかったかもしれねえけどな』


「……なるほど、そういうことか」


"こいつら、4人がかりでダンジョンの4つの出口をすべて見張っていたのか…… @たんたんタヌキの金"

"おい、どんだけ暇な連中なんだよ!? @月面騎士"

"ダンジョンの出口で長時間出待ちしているとダンジョン協会の職員に注意されるから、おそらくは更衣室あたりでずっと張っていたんだろうな。本当によくそこまでやるものだ…… @†通りすがりのキャンパー†"


 どのダンジョンでもダンジョン探索者やダンジョン配信者の出待ち対策としてダンジョンの出口や更衣室は複数作られている。そして出口での出待ち行為は禁止されているため、長時間ダンジョンの出口の前にいると職員に注意されてしまう。


 おそらくキャンパーさんの言う通り、出口ではなく更衣室かその廊下辺りで張っていたのだろう。俺がいつダンジョンに入って、出ていくのかなんて分かりっこないのによくやるよ。


 確かにあの日はイレギュラーモンスターのブルーオーガを倒した後、ダンジョン協会の百武に会うため、更衣室でいつもの装備からちゃんとした服に着替えて変装をしたから、おそらくその時からずっと尾行をしていたのだろう。


"というかこれ、もしかしたらダンジョン協会がヒゲダルマといつ会うかをこいつらにリークしたとかワンチャンある? @ルートビア"

"いや、そもそもこいつらがヒゲダルマを探していることなんて、ダンジョン協会は知らないはずだぞ。 @月面騎士"

"そうだね。それに仮に知っていたとしても、さすがにこの人たちに協力はしないと思うよ~ @WAKABA"

"確かにw こんなやつらに協力したら秒でダンジョン協会から教えてもらったとか喋りそうwww @XYZ"

"ヒゲダルマに何かちょっかいを出してくるにしても、こんな後先も考えていない馬鹿どもに協力はしないだろうな。 @†通りすがりのキャンパー†"


「そうだな、この件はダンジョン協会とは無関係だろう。虹野ならともかく、こんなやつらに協力するほど馬鹿じゃないだろうな」


 確かにダンジョン協会なら事前に連絡をしているから、俺がいつダンジョン協会へ行くかを知っている。だが、ここまで何も考えていない連中に協力をするわけがない。少なくとも何を考えているのか読めないあの百武は絶対にしないだろうな。


 この件についてはダンジョン協会とは無関係と考えていいだろう。たぶん本当に4人がかりでひたすら張り込みをしていたんだろうな。本当に暇な連中だよ。その間にダンジョンを探索していた方がよっぽど有意義なのに……


 俺は再び動画の再生ボタンを押す。


『あの野郎はあれだけの力があるのに、俺たちがモンスターに襲われているところを遠くからずっと見ていたんだぜ』


『俺たちが死にそうになってようやく手を貸してくれたが、助けるならもっと早く助けやがれってんだ!』


『どうせギリギリのところでモンスターを倒して、ヒーローを演出しようって魂胆だろ。本当にせこいやつだぜ! 例のツインズチャンネルの2人を助けた時も会見の時もギリギリだったし、間違いなく狙っていやがるな!』


「……ヒゲさん、こいつら今どこにいるか分かる? ちょっとこの4人に生まれてきたことを後悔させてくる!」


「落ち着け、瑠奈。こいつらの居場所なんて知らないぞ」


 こいつらの言動が瑠奈の気に障ったようで、ものすごく怒っていることが分かる。


「……大丈夫です、すぐにこいつらの居場所を調べますね。私たちの情報網を使えば、すぐに4人の住所を割り出すことができると思います!」


「何も大丈夫じゃないからな! とりあえず華奈も落ち着け!」


 いつもは冷静なはずの華奈の方がむしろ怖いんだが! 2人とも俺のために怒ってくれるのは嬉しいのだが、とりあえず落ち着いてほしい。


「華奈の時は危なくなるまで助けなかったし、瑠奈を見捨てようとしたことは事実だしな。俺は基本的にギリギリのところまで助けないし、自身の危険があったら手助けもしないから、そういう非難があっても仕方のないことだ」


 ダンジョン内で探索者や配信者を助ける時は本当に危険になった時だけ助けるようにしている。


 余裕がある時に助ければ自分たちで倒せたのだから邪魔をするなと言われたり、経験値泥棒なんて言われ、ギリギリで助けたらヒーローを演じていると言われるんだから、本当にどうしろという話だ。


 ……まあ、会見の時だけはただの遅刻で100%俺が悪かっただけだが。


「そんなことないよ! そもそも助けてもらっているのにそんなことを言う方がおかしいんだ!」


「ええ! ヒゲダルマさんだって自分の命が懸かっているのですから当然です! 感謝するならともかく、非難する方がおかしいに決まっています!」


 ……2人にそう言われると少しは救われるな。


 もちろん2人みたいに助けたことに感謝してくれる人の方が多いことは間違いない。とはいえ、こいつらみたいなやつらもいることは事実なんだよなあ。


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