第107話 厄介なモンスター
「さすがに早すぎるだろ。まだダンジョンに潜ってから1時間も経っていないんだが……」
「最近のダンジョン関連のニュースは出回るのが早いからねえ~ヒゲダルマも気を付けなよ。有名税ってやつで、何かあるとすぐにマスコミやファンなんかは有名な探索者や配信者に付きまとうからね」
「……そうだな、気を付けるよ」
まさか、こんな早くニュースになるとはな。華奈と瑠奈も日ごろマスコミが大変だと言っていたけれど、有名な探索者や配信者になったらなったでいろいろと大変みたいだ。
まあ、まともにコメントを返していない俺にファンなんていないとは思うが。
う~ん、いずれ俺がダンジョンに引きこもって生活しているのがバレてしまうかもしれない。何かいろいろと考えておいた方がいいかもしれないな。
「まあ、無事にイレギュラーモンスターを倒せたみたいで何よりだよ。ヒゲダルマなら大丈夫だとは思っていたけれど、ダンジョンだと万が一があるからね」
「さすがにもう危険なことはしないさ」
「……そんなことを言っているけれど、横浜ダンジョンのボスモンスター周回の時はだいぶ無茶したと思うよ。まったく、何度も言っているけれど、君はもう少し自分のことを大事にしなよ」
「あの時は心配かけて悪かった。もう夜桜に心配させるようなことはしないから安心してくれ」
「っ!? 相変わらずこの男は……」
「んっ、何だ?」
「何でもないよ、まったくもう! それで、今日は何の用? いつもの食料はまだ準備してないよ!」
顔を赤くしながら目線を逸らして大きな声を出す夜桜。なぜか夜桜はたまにこういう状態になるんだよなあ。
「ああ、夜桜が勧めてくれた例の新しい配信用ドローンの評判が良かったから、またいろいろと聞かせてほしくてな」
なにか怒っているみたいだし、この状況でダンジョン協会に寄ったついでに来たとはちょっと言いづらい。
新しい配信用ドローンの評判が良かったのも本当だし、俺も前よりは配信の機材について興味自体は出てきているからな。まあ、それを使いこなせるのかは別問題になるのだが……
「それは良かったよ! やっぱり最新の配信用ドローンはちょっと前までの物から一気に進化するからね! 頑丈さ、飛行速度、静音性能、画質の良さやブレ補正なんかが一世代前とはまるで別物なんだ。私もあとでヒゲダルマの配信を見てみるとするよ!」
「ああ、気になったことがあったら教えてくれ。それとこの配信用ドローンの設定方法なんだが……」
「ここはこうやって設定すればいいんだよ。あとはこっちをこうやってだね……」
相変わらず夜桜は自分の好きな配信用ドローンのことになると嬉々として語りだすな。まあ、配信用ドローンについては俺には分からないことだらけだし、とても助かる。いろいろと聞いておくとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「そんなわけで、ダンジョン協会からの依頼であるイレギュラーモンスターのブルーオーガは問題なく討伐できたな」
「ブルーオーガのイレギュラーモンスターかあ。僕はもうイレギュラーモンスターは懲り懲りだよ……」
「私もイレギュラーモンスターとはもう戦いたくはありませんね。でも、ヒゲダルマさんが無事でよかったです」
ブルーオーガを倒した翌日。今日は瑠奈と華奈と一緒に限定配信をしている日だ。いつも通り午前中は2人のダンジョン攻略を手伝い、食事をご馳走しつつ、昨日のブルーオーガのことを話題にしている。
"まあ、この階層レベルのイレギュラーモンスターなら、よっぽどのことがない限り大丈夫だろ。 @†通りすがりのキャンパー†"
"それに今回は相手が気付いていない状況から不意打ちで先制できたのはでかいな。まあ、予想通りコメント欄は少し荒れてたが…… @たんたんタヌキの金"
"正々堂々、真正面からとか言っている視聴者は最近のダンジョン配信者に毒されているよね。実際にもっと深い階層に行ったら、モンスターの方が狡猾で容赦のない攻撃を仕掛けてくるものだし。 @月面騎士"
"深い階層だと知能が高いモンスターも多いもんねえ~ @WAKABA"
"集団で罠を張って戦闘をしているモンスターもいたもんな。実際のところ、モンスターが罠を使うとか反則だろw 狩りゲーとかでそんなことをされたらキレる自信があるぞ! @XYZ"
"それは理不尽すぎるwww @ルートビア"
「ええっ!? そんなモンスターも出てくるんだ……」
「ああ。連携がとんでもないモンスターもいるし、不意打ちどころかいろんな道具を使ってくるようなモンスターも存在するからな」
深い階層になると、ただ大きくて強いモンスターだけでなく、モンスターの方も様々な知恵を使ってくるんだよなあ。正直なところ、ただ力のゴリ押しでくるモンスターよりそっちのモンスターの方が厄介だったりもする。
連携がうまいモンスターとか、戦略を使ってくるモンスターとかをソロで相手にするのはかなり厳しい。毒や麻痺なんかの状態異常を引き起こす矢を撃ってくるモンスターなんかもいたし、やはりダンジョンはソロで挑むものじゃないよな。
"とりあえず今回は罠みたいなものがなくてよかったな。 @†通りすがりのキャンパー†"




