第105話 先手必勝
「ウガッ?」
俺が遠方より投げた石が草原階層にある木へ当たり、音がする。その音に気付いたイレギュラーモンスターのブルーオーガが気付いてそちらの方向を見る。
カッ
「ウガアアアアア!」
そして時間差で同じ方向へ投げたダンジョンで手に入れたマジックアイテムの閃光玉が破裂し、ブルーオーガの視界を奪った。
階層が深くなればなるほどモンスターの様々な耐性は上がっていく。イレギュラーモンスターであるとはいえ、ここよりも遥かに深い階層で手に入れたマジックアイテムの閃光玉による威力は強力で、暫くの間視界を奪う。
ザンッ
そしてその隙を逃さず、最速で背後から接近し、愛刀の白牙一文字でブルーオーガの首を一刀両断した。
「……よし、もう動かないな」
いつも通り残心を忘れず、ブルーオーガが完全に死亡していることを確認してから警戒を解く。
さすがにブルーオーガは首を斬れば絶命するとは思いつつも、イレギュラーモンスターは俺が想像もつかないようなとんでもないことをしてくる可能性もあったからな。
とはいえ、完全に警戒は解かずにブルーオーガの頭と胴体をマジックバックへと収納する。マジックポーチには生きている生物は入らないから、マジックバックに入れることができて、初めて安心することができるんだよ。
「とりあえず、無事にイレギュラーモンスターのブルーオーガの討伐は完了だな。さて、コメントはと……うわっ、すごいコメントだな」
いつも通り戦闘中はコメントを非表示にしていたので、設定を変更してコメントを表示するとかなり多くのコメントが流れていた。コメントを少し前にさかのぼって確認してみる。
"いや、閃光玉とか卑怯すぎだろ常考!"
"相変わらずヒゲダルマの動きが早すぎてまともに見えん! 固そうなブルーオーガの首を一撃とか、さすが首狩り職人!"
"てか、いきなりの奇襲で目潰しからの急所を一撃とか、オーガよりも鬼畜過ぎるんだけどwww"
"いつも通り、配信者らしくない配信でワロタw"
うん、やはり奇襲からの閃光玉の使用についていろいろ言われているみたいだな。
「卑怯だという気持ちも分かるが、俺は自分への危険を極力減らしたいだけだ。ダンジョン内のモンスター相手に気を抜きはしないぞ。特にイレギュラーモンスターは何をしてくるか分からない怖さがあるからな」
投擲武器という攻撃方法もあるが、イレギュラーモンスター相手では確実性に欠ける。一撃で仕留められなければ、何かとんでもない隠し玉を持っていて、やられてしまうのは俺の方かもしれない。
もちろんボスモンスターの場合は一撃で仕留めきれない可能性が高いから、ボス部屋からの撤退を最優先に考えながら、少しずつボスの情報を集めて戦っていく。
ダンジョンに引きこもって自暴自棄に攻略を進めてきた俺だが、今まで生き残ってこれたのはこういう性格なのもあるかもしれないな。もちろんリスナーさんたちのおかげでもあるが。
"まあ、その攻略方法でそこまで攻略できたわけだしな。"
"むしろなりふり構わない姿勢を他の探索者も見習った方がいいのかもしれん。"
"それにしてもその格好はさすがにないと思うがなw"
ちなみに今日の俺の武器と防具は愛刀の白牙一文字とみんなには蛮族と言われている自作の防具だ。
確かに見た目はちょっとアレかもしれないけれど、防御力はこっちの方が遥かに高いからな。イレギュラーモンスターを相手にするんだから、たとえ低い階層であっても武器や防具は万全の物を使用するべきである。
あの閃光玉はもっと深い階層で手に入るマジックアイテムだが、人にも十分に効果があるから、パーティでの攻略には向かないんだよな。もちろんドローンのカメラ越しなら、目が潰れると感じることはないはずだ。
「とりあえず無事にイレギュラーモンスターを討伐することができたな。いったんダンジョン協会に報告するから、また改めて配信するぞ」
"せっかくの配信が一瞬で終わってしまった件についてw"
"相変わらず見せ場もクソもないが、イレギュラーモンスターを倒して階層が平和になったなら良しとしよう。"
"イレギュラーモンスター自体が貴重だし、いい素材にもなりそうだ。そういえばよく見るとブルーオーガの角は普通のブルーオーガの角とはちょっと異なるみたいだな。"
「そうだな。角もそうだけれど、普通のブルーオーガより大柄だったのもイレギュラーモンスターだったからかもしれないぞ。まあ、今回の素材はダンジョン協会に引き渡すから、何らかの発表はあるだろう」
元々そういう約束にしていたし、何らかのアクションが出てくるはずだ。
それにしても、やはりダンジョン協会からのちょっかいはなかったみたいだな。さすがに最初の依頼から何かを仕掛けてくるわけはないか。
とはいえ、今後もダンジョン協会の依頼については警戒心を持って受けることにしよう。
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