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第103話 条件


 先日月面騎士さんの母親を助けるために天使の涙の情報をダンジョン協会の百武から教えてもらった。その件については礼をしたいとも伝えたのだが、虹野なんちゃらの件で迷惑を掛けたからということで、礼は不要だと言われた。


「まあぶっちゃけると、今後のことも考えて、ダンジョン協会に貸しは作っておいた方がいいと思っているんだ。ダンジョンの情報についてはダンジョン協会が一番持っているに決まっているからな」


 チャンネル登録者数が激増した今なら一般配信でリスナーさんから情報を集めるということもできるが、それでもダンジョン協会に貸しは作っておいた方がいいだろう。


 虹野の件でいろいろとダンジョン協会に不信感はあるが、今後月面騎士さんの件みたいにダンジョンの外で何か起こる可能性もある。その時のためにダンジョン協会へ貸しを作っておくのはありだ。


"確かにダンジョン協会に貸しを作っておけるのはでかいよな。 @ケチャラー"

"前回の天使の涙の情報もすぐに手に入れてくれたもんね。 @ルートビア"

"確かにつながりを作っておくのは大事かもしれない。だが、今回の依頼自体が何らかの罠という可能性もゼロじゃないから、油断はしないほうがいいぞ。 @†通りすがりのキャンパー†"


「ああ、もちろん警戒はしていくさ。そもそもイレギュラーモンスター相手に油断なんてするつもりは欠片もないぞ」


 どうやらリスナーのみんなもダンジョン協会に貸しを作っておくという考えには賛同してくれるようだ。


 もちろんキャンパーさんの言う通り、今回の依頼自体が罠の可能性も十分にあるから準備はしっかりとしていこう。とはいえ、さすがにこんなあからさまなことで罠に嵌めようとするとは思えないけれどな。




「お久しぶりです、百武さん。先日は天使の涙の情報を調べていただき本当にありがとうございました」


「いえ、とんでもないです。先日はダンジョン協会の不手際に寄りまして、ヒゲダルマ様に多大なご迷惑を掛けてしまいましたからね。横浜ダンジョンの配信を拝見しましたが、無事に目的の天使の涙を手に入れられたようでなによりです」


 リスナーさんたちと相談をしてから、ダンジョン協会の百武に電話をした。前回電話した時と同じようにたったの1コールで百武が電話先に出る。


 どうやら百武も横浜ダンジョンの配信を見てくれたらしい。天使の涙を俺が必要としていたことは向こうも知っているから、そこから月面騎士さんのこともバレている可能性もゼロではないんだよな。


「こちらにご連絡をいただけたということは、先程お送りさせていただきましたご依頼を受けていただけるということでしょうか?」


「そうですね。もちろん詳しいお話を聞いてからになりますが」


「承知しました。それでは詳しい説明をさせていただきます」




「……という状況となりますが、いかがでしょうか?」


「なるほど、分かりました。ひとつ条件というかお願いがあるのですが、そのイレギュラーモンスターであるブルーオーガを討伐する際、俺の配信チャンネルでその戦闘を配信してもよろしいですか?」


 先程リスナーのケチャラーさんから、ブルーオーガとの戦闘の様子を配信したらどうかとアドバイスをもらった。もちろん配信で人気を取るという理由ではなく、リアルタイムで配信をしていれば、ダンジョン協会もあからさまな敵対行為はしてこないだろうという理由だ。


 うん、確かにその通りだよな。さすがケチャラーさんである。それにどちらにせよ、週に一度の一般配信が明日の予定だったからちょうどいい。


 そして、もしなんらかの思惑がダンジョン協会にあるならば、俺のこの要望は断るはずなのだが――


「はい、もちろん大丈夫ですよ。むしろ私たちもイレギュラーモンスターの戦闘を見ることができるので、こちらからもお願いしようと思っていたところでした」


「……分かりました。それではこの依頼を受けさせていただきます」


 どうやら俺の考え過ぎだったか。まあ、さすがに何か仕掛けてくるとしても、初回から何らかの罠を仕掛けるほど相手も馬鹿ではないだろう。


「あと報酬についてですが、討伐できた際のイレギュラーモンスターの素材は不要ですので、そちらで研究などに役立ててください」


「本当によろしいのでしょうか? ヒゲダルマ様なら当然ご存知だと思いますが、イレギュラーモンスターの素材は研究の面から見ても、収集の面でも非常に価値があるのですよ」


 イレギュラーモンスターについては発生の条件や仕組みなどがまったく分かっていないため、その素材は研究価値が非常に高い。また、イレギュラーモンスターは普通のモンスターとは異なるため、それ専門のコレクターがいるくらい、普通の素材よりも価値があるのだ。


 とはいえ、俺にとっては食べられないならば価値はない。


 素材が武器などに使える可能性もあるが、おそらくは今俺が使用している武器や防具ほど強いものにはならないだろう。


「ええ、すべてお譲りしますよ。百武さんとは今後とも良い関係を続けていきたいですからね。素材はご自由に利用していただければと思います」


「……承知しました、本当にありがとうございます。私たちもヒゲダルマ様とは友好的な関係を築いていければと思っております。もちろん素材の買取金額は上乗せさせていただきますので」


「ありがとうございます」


 うん、ダンジョンの外で何かあった時のための現金もあった方がいいだろう。今回の依頼の件はダンジョン協会への貸しと多少の現金が手に入れば問題ない。


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