第101話 DQN配信者
「すっげ~今話題のダンジョン配信者じゃんかよ!」
「大宮ダンジョンで活動しているのは知っていたけれど、こんな下の階層にいるなんてな!」
「うわっ、配信で見たのと同じでヒゲと髪がやべえ! マジでウケるんだけど!」
「本当だ。ツインズチャンネルの会見に出た時とは全然ちげえじゃん!」
「………………」
俺が最近有名になった配信者と分かると、一気に距離を詰めてくる面倒な配信者たち。
一応俺はこいつらを助けたわけなんだが、感謝の気持ちというものがこいつらにはあるのだろうか? こういうDQN配信者がいるから、ダンジョン配信者が良く思われない原因にもなるんだよなあ……
「よっしゃあ、早速配信を再開しようぜ!」
「おう、まさか有名なダンジョン配信者に出会うとか思ってもいなかったからな!」
「悪いんだが、他の人の配信に出る気はないから、配信は止めてくれないか?」
俺に許可を取ることなく、勝手にライブ配信を行おうとするDQN配信者。
「ケチなこと言ってんじゃねえよ。有名な配信者なんだろ? せっかくだし、俺たちの配信チャンネルに協力してくれよ」
「せっかくのコボルトどもの配信動画でトラブっちまったが、こんだけ有名な配信者と会えたなら、むしろラッキーだったぜ!」
「………………」
俺が配信を止めてくれと頼んでいるのに、まったく止める気のないDQN配信者たち。相手が配信に出たくないと言った場合、配信を止めるのが普通なんだけれどな。
本当に面倒なやつらだ……
「あ~テステス。ち~す、ビビビンチャンネルのユキヤだ。さっきは途中でいきなり配信を切っちまって悪かったな。コボルトの群れからはすでに逃げ切ったところだぜ!」
「へっへ~もしかして、俺たちがコボルトごときにやられちまったと思った? 残念でしたあ。アンチの野郎どもの思い通りにはならねえよ!」
俺の許可を取らずに勝手に配信を始めたDQN配信者。
そしていきなりリスナーを煽っている。リスナーの中にはこんなやつらでも本気でモンスターの群れに襲われて心配していた人もいただろうに……
「まあ、コボルトには逃げられて、ギガントキャロキアをなくしちまったのは残念だったけれどな」
「ちっ、あのコボルトどもは今度もっと酷い目に遭わせてやるからな! だがしか~し、転んでもただでは起きないのが俺たちだぜ!」
「おう。なんとダンジョンの中で最近話題の超絶有名なダンジョン配信者に遭遇しちまったぜ!」
……さあ、もう十分だな。これ以上こんなやつらへ付き合う理由がない。
「あっ、ちょっと待てよ!」
「おい、ふざけんな!」
後ろから俺を引き留める声がして、俺を追いかけているようだが、俺が走るスピードの方が断然速い。しばらく走るとすぐにDQN配信者の声は聞こえなくなった。
本当に今日は厄日だったな……
"それにしても、本当に酷い配信者だったな…… @ルートビア"
"マジでああいう配信者は滅べばいいと思っている。 @たんたんタヌキの金"
"タヌ金に禿同! 煽り系配信者や迷惑系配信者にマナーを求めてもしょうがないが、命の恩人にもあの態度とか人として論外だろ! @XYZ"
"なんでああいうやつらって、他の人のことを何ひとつ考えないで生きていけるんだろうな? @†通りすがりのキャンパー†"
DQN配信者から走って逃げ、無事に俺の家がある81階層のセーフゾーンまで帰ってきた。
先ほどまでの様子は限定配信で撮っていたから、リスナーのみんなもDQN配信者の行動はすべて見ていた。
「本当にああいう配信者も結構いるんだよなあ。那月さんたちが配信者に良い感情を持てない気持ちも分かる気がするよ」
残念ながら、ああいったダンジョン配信者も結構多いのが現実なのだ。
最近は華奈や瑠奈、那月さんたち金色の黄昏団パーティの人たちみたいな善人ばかりにダンジョン内で出会っていたけれど、ああいうDQN配信者もいることは忘れてはいけない。
下手をしたら変な因縁をつけられることもあるし、配信用のドローンは自分の身を守るためにも必要なのである。
"ビビビンチャンネルか。今調べてみたけれど、登録者数は100人くらいで、数か月前にできたばかりのチャンネルみたいだな。 @月面騎士"
"できたばかりのチャンネルで登録者数が100人なら多い方か。あんなやつらの配信チャンネルでも見ているリスナーがいるんだな。 @XYZ"
"ああいった過激な配信チャンネルも一部の人間に需要はあるからな。その分敵も多いけれど、炎上すれば再生回数は稼げるんだよ。 @†通りすがりのキャンパー†"
どうやら、あいつらのチャンネルにも多少のチャンネル登録者がいるらしい。
俺が細々と数年かけて配信を続けていたチャンネル登録者数が30人くらいだったから、たった数ヶ月でそれを上回っているのか。
……チャンネル登録者数の数を気にしていない俺だが、なんだかそれはそれでムカついてくるな。
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