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第100話 寝覚めが悪い


 このグループのリーダーと思われる金髪の少し太った男は撤退しようとせずに、コボルトたちと戦闘をすることを指示した。


 残りの3人は本当に逃げなくても大丈夫かと言いながらも、リーダーの指示に従って戦闘を続けている。


「………………」


"おいおい、なんであいつら撤退しないんだよ。コボルトは早めに倒さないとどんどん仲間を呼んでくるのに素人かよ!? @XYZ"

"大方、配信中にコボルトから逃げるのはカッコ悪いとでも思っているんだろう。見栄を張った配信者がよく命を落とすパターンのひとつだ。 @†通りすがりのキャンパー†"

"馬鹿な配信をしていたから、いい気味ではあるな。 @月面騎士"

"ああいうDQN配信者は助ける必要が欠片もないと思うぞ。 @たんたんタヌキの金"


 リスナーさんたちの言う通り、おそらくライブ配信しているのを気にして、意地を張って逃げないのだろう。


 まったく、配信なんかより自分の命の方が大事だろうに……


「痛っ! おい、もう無理だぜ!」


「このクソコボルトが! おい、一旦配信を止めて逃げようぜ!」


「ちっ、仕方ねえ!」


 どうやら負傷した仲間も出てきたところで、さすがに無理だと悟ったらしい。ライブ配信を止め、拘束したコボルトを放って撤退を始めた。だが――


「おい、こっちにもいやがるぜ!」


「くそったれ! どんだけ仲間を呼んでんだよ!」


 時すでに遅し。


 完全に撤退時期を見誤ったようだ。コボルトはそれほど強くないモンスターだが、対応を誤るとこうなってしまう。これだからダンジョンで油断は禁物なのである。


「……本当に気が進まないが、助けてやるか」


 くだらないことを配信しているからこうなるんだよ。完全に自業自得だが、あんな奴らでもこの状況で見捨てたら、俺の寝覚めが悪い。


 この階層のコボルト相手なら、華奈たちの時のイレギュラーモンスターとは違って俺の命の危険もないだろう。もちろん油断はしないつもりだが。


 はあ~さっさと立ち去っておけば良かったと、割と心の底から思っている。あるいはもっと深い階層で、少しでも命の危険がある相手だったら迷わず見捨てられたんだがな……




「ぐわっ、足をやられた!」


「もう駄目だ!」


「くそっ、こうなったら――」


 ザンッ


 コボルトの首が空を舞う。


「な、なんだ!?」


 このコボルトたちには少しだけ同情するが、こいつらもダンジョンの中にいる人を襲うモンスターだ。ここで躊躇していたら、次に後悔するのは自分かもしれないからな。


「さっさと逃げるぞ! そっちの方向に向かって走れ!」


「探索者か、ありがてえ! 天の助けだ!」


「ま、待ってくれ! 足をやられて走れないんだ!」


 先ほどコボルトが持っていた棍棒でやられた茶髪の男が左足を押えている。打撲か下手をしたら骨が折れているのかもしれない。


「そいつは俺が担いでいくから先に行け。そっちの方向のコボルトは倒してきた」


「お、おう!」


「た、助かった!」


 残りの2人と金髪のリーダーの男が俺の指示通りの方向へ走る。


「うわっ!?」


 そして茶髪の男を左肩に担いだ。


「ゲギャギャ!」


 ザンッ


 俺の方に一体のコボルトが俺に向かって襲ってきたが、右手に持った白牙一文字で首を刎ねる。


「ゲギャ!?」


 その様子を見て、他のコボルトたちの動きが止まる。コボルトは比較的知能の低いモンスターだが、それでも俺との力の差が分かったらしい。


「うわわ!?」


 そして俺は茶髪の男を担いだまま、他の奴らが逃げた方向へ走り出した。どうやら俺を脅威と認めたのか、コボルトたちもこれ以上追ってくることはなかった。




「はあ、はあ……助かった~」


「くそっ、まさかコボルトごときから逃げるハメになるとはな……」


 それからコボルトの包囲網を抜け出し、無事に転移ゲートまで戻ってきた。


「わりい、あんたのおかげで助かったぜ」


 足を怪我した茶髪の男を地面に下ろす。怪我をしているようだが、自業自得だしポーションを使ってやる気はない。


「気にするなと言いたいとこだが、これに懲りたらモンスターを使ったくだらない配信は止めるんだな。あんまりモンスターを舐めない方がいいぞ」


「……ちっ、見てたのかよ。助けてもらったことには感謝するが、配信についてあれこれ言われる筋合いはねえな」


 金髪リーダーの男はそう言った。


 ……まあ、俺もさっきみたいなことをしている配信者が、素直に言うことなんて聞くわけがないと思っていたが、予想通りだったな。これ以上は俺が何を言っても無駄だろう。


「まあ、俺がこれ以上言うことでもないな。それじゃあ、俺はもう行くからな」


 コボルトに追われて命の危険を味わってもなお、こいつらは反省なんてしていなさそうだ。これ以上こいつらと関わる機会もないだろう。


「ちょっと待て。こいつ、ヒゲダルマだ! 最近有名になったヒゲダルマチャンネルのヒゲダルマだぜ!」


 俺が移動ゲートへ向かおうとしたところで、おしゃれな眼鏡をかけたドレッドヘアの男が俺を指差しながらそう言う。


「本当だ! こいつは最近話題になっていたヒゲダルマだぜ!」


 どうやら先ほどまでは逃げることに必死で気付いていなかったようだが、落ち着いたところで俺のことに気付いたらしい。


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だから無視すりゃいいのに・・・。
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