娯楽
都市の明るいエピソードなんて、おそらくこのページぐらいかもしれませんね。
楽しんで頂けたら幸いです。
「久しぶり!元気だった?」
友人との再会を喜び、駅からほど近い遊園地に柊月達は足を踏み入れた。
中は大勢の人でごった返している。笑い声や叫び声が一気に押し寄せてきた。
その盛り上がった様子は、元の世界と何ら変わらない。
柊月はこの遊園地について知らなかったが、依によると「ここは元の世界にもある」とのこと。
「ね、絶叫系平気?」
入って早々、暁はジェットコースターを指差す。おそらく遊園地の目玉であろう、高低差の激しい大型アトラクションだ。
「あれに乗ろう!」
勢いのまま座席に座る。発車すると、たちまち全身が激しい感覚に襲われた。この世界に来てから体感したことない風や重力の圧、目まぐるしく変わる視界。柊月は都市への恐れも忘れ、大声で叫び、笑ってしまっていた。
境家や里永家の寺では決して味わえない、人工的なスリル。
乗り物から降りる頃には「別のアトラクションにも早く乗りたい」と、柊月はすっかり娯楽の虜になっていた。暁がまた指を差す。
「次はあれ!」
いくつか乗り物を楽しんだ後、昼食を取ることにした。
「クレープもある!食べよっかな」
メニューを見つめながら、暁はうんうん唸る。
「俺が買ってくるから、皆は座ってな」
響はそう言うと、フードコートの会計をする。その間に、柊月と依は人数分のテラス席を確保した。
しばらくすると、勇一郎が飲み物を手に戻ってくる。
「はい、サイダーとコーラ」
「ありがとう!」
シュワシュワと音を立てる炭酸。このような飲み物を口にするのも久々だった。そのせいか、思っていた以上に甘さが際立って感じられる。
気づけば柊月は心の底からこの時間を楽しみ、満喫していた。先ほどまでここ都市を警戒していたことが、嘘のようだ。
友人と会えたからという理由もあるが、それほど都市には、10代の若者を満足させる楽しいものや美味しいものが溢れている。
これほど娯楽に興じた日は、こちらの世界に来てから一度もなかっただろう。
もちろん境家や寺の落ち着いた生活は、慣れれば心地良いものだった。住めば都である。
しかし、やはり都市の娯楽はスリルがあり胸を躍らせるものだった。
昼食をもぐもぐと食べていると、柊月達の間をサーっと風が吹き抜けた。
まるでその風に背中を押されるようにに、朝陽がそっと口を開く。
「実はさ……」
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