鬼
楽しんで頂けたら幸いです。
「ふふっ……あはは……」
「柊月、どうしたの?」
隣で急に笑い出した柊月を見て、依は不思議そうに尋ねる。
「だってさ……」
柊月はクスクス笑いをこらえながら答えた。
「あの人達、まだ幼稚園生とか小学生が大人になった時のこと心配してるんだよ?先取りしすぎでしょ。私達なんてさー……」
そこまで言うと依も意味を悟ったのだろう。あぁ、と腑に落ちた表情を見せ、柊月と同じように笑い合う。その笑いは大人達のおかしさと、自分達の境遇の虚しさが入り混じった皮肉めいたものだった。
自分たちなんて、ある日突然この世界に放り込まれ、今までの繋がりや関係が断たれてしまった。
結局、未来がどうなるかなんて誰にもわからないのだ。
それは「志望校に受かるかどうか」とか「就職に失敗するかもしれない」なんて生ぬるい話じゃない。
次の瞬間にどこへ飛ばされるのか、そもそも生きているかどうかさえ分からないような状況なのだ。
見知らぬ世界に立ち、理由もわからぬまま帰ること、生き延びることだけを考える日々。
自分なりに考えていた将来の夢や計画なんてものは、一瞬で意味を失ってしまった。
積み上げてきたものが踏み潰されること。それが自分たちの現実だった。未来は計画立てるものではなく、理不尽に奪われるものなのだ。
そんな自分たちからすれば、子どもの将来を憂う?10年後、数十年後を心配する?など笑わせる話だ。
先を読むどころか、明日の安全すら保証されていないのに、なぜわざわざ遠い未来を心配するのか。
可笑しくて、そして虚しくてたまらない。
柊月達は笑い声をなるべく抑えていたつもりだったが、どうやら周りに聞こえてしまったらしい。
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