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境界  作者: 柿生透
86/99

笑い出す


楽しんで頂けたら幸いです。



 この世界へ来た時。


 あの日は何の変哲もない一日だった。友達と喧嘩したわけでも、逆に特別嬉しい出来事があったわけでもない。


 ただ下校中に何となく違う道を選んだ、平凡な日。予兆めいたことなど、一つもなかった。


 それが、気付いた時には『こちら』の世界に居た。特に特徴もないただの高校生の自分が、いきなり異世界に放り込まれたのだ。しかもそこにはかつての同級生だった友人もいた。そして何とか元の世界に戻ろう、せめて生き延びようと、必死にもがいている。


 なぜこうなったのか、原因や理由を考えても皆目見当がつかない。唯一、友達の依がいたことには救われたが、それでもなぜお互いここへ来てしまったのか、分かったわけではない。


 自分達に降りかかってきたのはただの不条理だ。人が思い描く軌道からは、遠くかけ離れた現実。


 まるで神が悪戯しているような……。


 そんな人の手に負えない理不尽に、自分は今襲われているのだ。


 この世界に来るまで柊月は大学や就活、勉強など将来に対して人並みに計画を立て、思いを巡らせていた。



 しかし『こちら』の世界にいる今となっては、そんなものは何の意味も持たない。



 柊月は周りをもう一度見渡す。


 子供がいるであろう、数人の大人達は法円や壮市に対して


 「一体どういうことなんですか、説明してくれないと分かりません」


 「私たちは子どもの将来を案じているんだ!」


と大声で叫んでいる。


 彼らはまだ小学校にすら上がってない子供の今後や、成人した暁のことを心配しているのだ。




 その光景を目にした柊月は、思わず笑い出してしまった。




読んで頂いてありがとうございます!

感想等いつでもお待ちしてます!


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