見せたくない
楽しんで頂けたら幸いです。
しかし移住者の数人は眉を顰め、
「ちょっとうちの子には見せたくないんですけど……怖がってて」
と、部屋に入ろうとしなかった。
「このご遺体は亡くなったばかりなので、子らが見ても大丈夫ですよ」
損傷が激しい場合は見せませんから、と住職の法円や荘市らは穏やかに答える。
「そうじゃなくてね……そもそも死体とかわざわざ見せなくてもって話で」
どうやら一部の人々は合掌するどころか、遺体を視界にも入れたくないらしい。
「死を実感することは大事なことですよ」
「いや子供達がトラウマになったら困るんですよ。ていうか死体見たからって別に頭良くなるとかどうなる訳じゃないでしょ?」
口調が喧嘩腰になり、その場の雰囲気が重くなってきた。葬式とはまた違う方向の暗い空気が漂う。
「死体だなんて縁起でもない」
「ウチの子は潔癖だから……」
「子供のいるところに持ってこないで」
そんな声を上げる大人に同調するかのように、何人かの子供達も話し出す。
「触ったりしたら呪われそう」
「死体とか怖っ」
「めんどくさーい」
その様子は『交換授業』後の保護者会とまるで同じであった。
そんなふうに言わなくてもいいじゃないか、と柊月は心の中で毒づいた。そもそも人が亡くなっている前で、こんな口喧嘩のような状態になるなんて。
「ましてや『そんなの』に触るなんてねぇ……」
ある人は腕を組みながら言った。
「『そんなの』って、そんな言い方しなくても……」
思わず柊月は会話に参加してしまうが、海莉や壮市らが
「大丈夫だから、向こうに行ってなさい」
と制した。
柊月は後ろ髪を引かれながら、おずおずと退散する。
「大体どうして『それ』見つけたんです」
「別の集落を回っていたら倒れていたんです。一番近い寺はウチですから……」
「はぁー。とにかくうちはやりませんから」
彼らははっきりと拒絶し、結局、亡骸が置かれた部屋に入ることはなかった。
なぜそこまで意固地になるのか?触るのはともかく、合掌だけならさっさと手を合わせて退散すればいい話じゃないか、と思いながら柊月は部屋を出る。形を取り繕うこともしないのか?
死んだ人間ならもはや一緒に居たくもない。
そんな思いが詰まっているようだった。
読んで頂いてありがとうございます!
感想等いつでもお待ちしてます!




