手紙
楽しんで頂けたら幸いです。
「そんで、その親子もお寺さんに住むことになったのか」
柊月と依から話を聞いた勇一郎はふーんと相槌を打つ。
「とりあえず当分の間はここに居るんだって。いずれは引っ越すらしいけど」
まあ、また親子一緒になれて良かったなと勇一郎は返した。
そんな中、同じく居間にいる海莉は手紙などの郵便物を1つずつ確認している。差出人の名前を見てはこの方はどちら様かしら、初めて見るわ…と呟いていた。
「たくさんありますね」
お手伝いしますよ、と響がやってきて隣に座る。柊月達3人も手分けして、たくさんの封書を整理整頓し始めた。
「ご存じですか?どうやら最近、都市の人口流出が増加傾向にあるらしいです」
作業中に響が話題を切り出す。
「SNSで『地方・田舎への引越し』と多く検索されていて。今頃文科省やら政府やらはなんでこんなことに、と大騒ぎでしょうね」
「引越し?」
柊月のオウム返しに響は頷く。
「要因の一つに、交換授業や里山体験が挙げられています」
「まぁ…」
「そりゃまた、何でですか」
勇一郎も興味が湧いたのか聞いてくる。
「子供達が都市にいるときより、明らかに活気があるからでしょう。都市は不登校数も自殺率も高い。このまま自殺などされるくらいならいっそ移動する…という考えが浮かんだのでは」
「警察官に睨まれながら引越したのかな」
柊月はこの里山を訪れる前に見かけた、境界に立つ警官の険しい表情を思い出した。そんな呟きに依はクスッと笑う。
「今のところ、都市から里へ移住すること自体は可能ですが…」
響は腕を組みながら、うーんと唸る。いつもの優しい雰囲気は消え、代わりに硬い表情をしていた。
「だからかしらね、この手紙の量は」
海莉は積もった手紙の束を見ながら言う。
「届けられた手紙のほとんどが、里や農村への移住希望の話ばかりなの」
その時、玄関から「すみません、どなたかいらっしゃいますか」と声が聞こえてきた。
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