もう2度と
楽しんで頂けたら幸いです。
「先に警察呼んでおいて本当に良かったわ」
無茶するんだから、と澪は呆れた表情を浮かべる。
「ああいう輩にはわざと怒らせた方がいいんだ。すぐに本性見せるから」
「あの…主人がご迷惑おかけして本当に申し訳ありません」
そう言いながら澪の後ろから出てきたのは風馬の母親だった。
「俺も病院行って診断書貰ってくよ。それと弁護士連れていけば離婚しやすくなるさ」
「何から何まで…本当にありがとうございます」
境家に風馬の母親が訪ねてきたのは、数日前のことであった。
「すみません、小学生の男の子を見ませんでしたか?私の息子で4年生なのですが…」
境は玄関に出て応対する。
「もしかしてその子は風馬くんて言う?」
え、と母親は驚きの声を上げる。
「ご存じなのですか?」
「娘が何日か前に里永さんの寺へ送ってったよ。元気に過ごしているらしい」
「息子は、風馬は無事だったんですね…!」
あぁ良かった…ありがとうございます、と母親は安堵のあまり涙ぐむ。
「実は1つだけお願いがございます…。近い内、私の夫がこちらへ来ると思います。その時は息子のことを見かけてないとおっしゃっていただけないでしょうか」
母親は頭を下げる。
「ん…?」
「夫は世間体を気にする人ですから、無理矢理にでも里へ行って息子を連れ戻しに来るでしょう。それを何としてでも阻止したいのです」
母親の体が少し震えている。しかし声は力強いものだった。
「離婚して、もう2度とあの人に息子を傷つけさせはしない」
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