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孟母三遷
楽しんで頂けたら幸いです。
「いや…急になんですか」
戸野の声に少し苛立ちが混じった。
「孟母三遷、という言葉は知ってるでしょ?都市で子供を育てきる、なんて考えは所詮あなたのエゴじゃない?」
境はあくまで淡々とした口調であった。
「はあ?何人の家庭に口出してんの」
戸野は怒りで敬語が抜けていく。
「どうせ虐待かなんかして、妻子に捨てられたんでしょ。あんたに教えることなんか何も無いよ」
「なっ…。あんたやっぱあいつらの居場所知ってんだな!?」
戸野はそう言うと境の胸倉を掴んだ。
「どこにいるんだ!答えろ!」
しかし境は涼しい顔をしたまま答えない。
「穏やかじゃないな…」
やれやれ、と境は呆れた表情を見せる。その様子にカッとなったのか、戸野は拳を作ると境の左頬を殴った。
境はグッと一瞬うめき、地面に倒れ込む。
「全く…すぐ暴力に走るのか」
しかしあくまでも口調は冷静だった。
「もうすぐ死ぬ老人をわざわざ殴るなんて、ほんと無駄なことするね」
境は目線を下から上へと睨みつける。
「いくら家庭内だろうと、暴力に怯えて過ごしているなら、イラクやアフガニスタンのような紛争地域と変わらんな」
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