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境界  作者: 柿生透
65/99

孟母三遷


楽しんで頂けたら幸いです。



 「いや…急になんですか」


 戸野の声に少し苛立ちが混じった。


 「孟母三遷、という言葉は知ってるでしょ?都市で子供を育てきる、なんて考えは所詮あなたのエゴじゃない?」


 境はあくまで淡々とした口調であった。


 「はあ?何人の家庭に口出してんの」


 戸野は怒りで敬語が抜けていく。


 「どうせ虐待かなんかして、妻子に捨てられたんでしょ。あんたに教えることなんか何も無いよ」


 「なっ…。あんたやっぱあいつらの居場所知ってんだな!?」


 戸野はそう言うと境の胸倉を掴んだ。


 「どこにいるんだ!答えろ!」


 しかし境は涼しい顔をしたまま答えない。


 「穏やかじゃないな…」


 やれやれ、と境は呆れた表情を見せる。その様子にカッとなったのか、戸野は拳を作ると境の左頬を殴った。


 境はグッと一瞬うめき、地面に倒れ込む。


 「全く…すぐ暴力に走るのか」


 しかしあくまでも口調は冷静だった。


 「もうすぐ死ぬ老人をわざわざ殴るなんて、ほんと無駄なことするね」


 境は目線を下から上へと睨みつける。



 「いくら家庭内だろうと、暴力に怯えて過ごしているなら、イラクやアフガニスタンのような紛争地域と変わらんな」



読んで頂いてありがとうございます!

感想等いつでもお待ちしてます!


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