移動
楽しんで頂けたら幸いです。
柊月は法円の言葉を反芻した。
居場所が見つからないなら、移動すればいい。たとえ元の世界に戻れなくとも、この世界に自分の生きる場所を生み出すことは出来る…。
修羅場を目にしているが、柊月の心は穏やかな波を打っていた。
「責任取れると言ったな?あんた」
父親は法円にそう尋ねた。
「はい、左様でございます」
「だったらもう知らん!公也、お前とは縁を切る!」
2度とうちの敷居を跨ぐな!恩知らず!と捨て台詞を吐いて、公也両親は家から出ていった。
公也は体を震わせていたが、その原因は喜びによるものだったらしい。
「ようやく、解放された…」
全身の力を解放し、手足をダランと下げたまま呟いた。
「公也くん、大丈夫…?
両親が出て行ったのを見届けてから、柊月と依は声を掛ける。
「大変だったね」
「いや今は、嬉しさの方が、大きいから…!」
一応形だけでもと、公也両親を玄関で見送った法円と蓮が部屋に戻ってきた。
「しかし、ご両親はいつかまたここへ来るかもしれません」
法円は少し考え込んだ後、公也にある提案をした。
「公也さん、念の為私の知り合いの寺に紹介します。当分はそちらへ移った方がいいでしょう」
「ここに、ずっと居たいけど…」
この里に愛着が湧いているであろう公也だったが、法円は微笑みながら言う。
「少しだけの引越しですよ。またいつでもここで暮らせます。…あなたはもうどこにだって行けます」
「まるでユダヤ人のようね」
蓮も会話に加わり皆で話している中、柊月は法円の言葉をまた噛み締めた。
そうだ、私も依も全く違う世界線の日本でこうして生きている。
親元を離れるなど、きっとなんて事はないのかもしれない。
「公也くん、気をつけてね」
「皆と一緒にずっと待ってるよ」
柊月と依はそう言って公也にエールを送った。
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