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境界  作者: 柿生透
62/99

移動


楽しんで頂けたら幸いです。



 柊月は法円の言葉を反芻(はんすう)した。


 居場所が見つからないなら、移動すればいい。たとえ元の世界に戻れなくとも、この世界に自分の生きる場所を生み出すことは出来る…。


 修羅場を目にしているが、柊月の心は穏やかな波を打っていた。



 「責任取れると言ったな?あんた」


 父親は法円にそう尋ねた。


 「はい、左様でございます」


 「だったらもう知らん!公也、お前とは縁を切る!」


 2度とうちの敷居を跨ぐな!恩知らず!と捨て台詞を吐いて、公也両親は家から出ていった。



 公也は体を震わせていたが、その原因は喜びによるものだったらしい。


 「ようやく、解放された…」


 全身の力を解放し、手足をダランと下げたまま呟いた。


 「公也くん、大丈夫…?


 両親が出て行ったのを見届けてから、柊月と依は声を掛ける。


 「大変だったね」


 「いや今は、嬉しさの方が、大きいから…!」


 一応形だけでもと、公也両親を玄関で見送った法円と蓮が部屋に戻ってきた。



 「しかし、ご両親はいつかまたここへ来るかもしれません」


 法円は少し考え込んだ後、公也にある提案をした。


 「公也さん、念の為私の知り合いの寺に紹介します。当分はそちらへ移った方がいいでしょう」


 「ここに、ずっと居たいけど…」


 この里に愛着が湧いているであろう公也だったが、法円は微笑みながら言う。


 「少しだけの引越しですよ。またいつでもここで暮らせます。…あなたはもうどこにだって行けます」


 「まるでユダヤ人のようね」


 蓮も会話に加わり皆で話している中、柊月は法円の言葉をまた噛み締めた。



 そうだ、私も依も全く違う世界線の日本でこうして生きている。


 親元を離れるなど、きっとなんて事はないのかもしれない。



 「公也くん、気をつけてね」


 「皆と一緒にずっと待ってるよ」



 柊月と依はそう言って公也にエールを送った。



読んで頂いてありがとうございます!

感想等いつでもお待ちしてます!


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