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境界  作者: 柿生透
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境家




 「あなたが柊月さん?」




 翌日、起床すると柊月は1人の女性に声を掛けられた。



 「あ、はい。そうです。えっと…」


 柊月は返事をしながら「この人は誰?」と隣に居る依に目線を向けた。



 「ご主人様だよ。ご隠居様の娘さん。…おはようございます、ご主人様」


 依は小さい声で柊月に伝えてから、挨拶した。



 「おはよう、よく眠れたかしら」


 歳は50代くらいだろうか。そのふんわりと笑う優しい笑みに、昨日の境の面影を見た。



 「初めまして。境澪(さかいみお)と申します」


 「は、初めまして。柊月と言います」


 「家族を紹介したいのだけれど…生憎当分の間家に居ないの」


 帰ってきたら言いますねと澪は伝えた。

 


 






 「父から聞きましたよ。依さんと同じところから来たって。…それならそのことを外で口外しないで欲しいの。約束してくれる?」


 「え、はい…でも何故ですか?」


 「他の地域…『都市』の人たちが近頃怪しくて、私たちを同化させようとしているみたいなの。…言葉とか習慣とかね。よその世界から来た、なんて知られたら柊月さんが1番に目をつけられるでしょう」


 柊月は怖くなった。ここはそんな危ない場所なのか、そしてやはり言葉が関係しているんだ。体が少し震えた。



 「目立たずにいれば大丈夫よ。あなたたちのような若い人を犠牲になんて絶対にさせないから」


 そんな柊月の様子を見て澪は柊月の手を取り包み込みながら言った。






 「じゃあ子供達と先生がもうすぐいらっしゃるみたいだから、一緒に勉強見てもらえる?」


 「はい」






 「子供達と先生って?」


 柊月は依に問う。


 「教育を満足に受けられない小学生くらいの小さい子達がここに来て勉強するの。で、私たちはその手伝いをするってわけ」


 専門的なことは先生が担当するけど、と依は付け足した。


 親のネグレクトや虐待で最低限の生活や常識を知らない子供を1から教えていくらしい。食事も振る舞って作法も教えるのだとか。


 しかし勉強はともかく、作法について柊月は少し気まずくなった。正座するとすぐ足が痺れる自分が小さい子達に作法を教えるのか…。


 「すぐ慣れるから大丈夫だよ」


 柊月の気持ちを見抜いてるのかいないのか依はそう言った。


 「う、うん…。それにしても、この家はそんなことしているんだね、すごいね。お金持ちとかなのかな」


 このお屋敷も大きくて立派だし、と柊月は話題を逸らした。


 「周りの家よりはお金持ちらしいけど、それくらいだって言ってたよ。…あ、来たみたい」


 玄関からザワザワと人の声が聞こえてきた。






 依は苦笑いしながら言った。


 「なかなか『やばい』子たちがいてね…」



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