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境界  作者: 柿生透
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正論で


楽しんで頂けたら幸いです。



 来客が自分の両親でないとわかるや否や、風馬は意気揚々と部屋から飛び出し外で遊び始めた。



 清楓両親は居間に通される。急に家からいなくなって心配した、無事でよかった…と清楓に話し出す。


 「…」


 しかし、彼女はそれには答えず無言のままだった。


 「そもそも、どうしてここへ…?」


 母親が本質を突く質問をした。


 清楓はチラッと法円や柊月達を見る。


 「この人たちが一緒にいるなら…」




 居間には清楓家族と、法円、それに柊月と依が残された。あくまで話は家族のみで行い、残り3人は見守るという形だ。


 「どうして出ていったの?」


 改めて母親が話を切り出す。


 清楓は少し黙った後、小声で言った。


 「噂が嫌だったから」


 「噂…?」


 両親は首を傾げる。


 「都市に帰ったら家でも学校でも人の話ばっかりだったから」


 はぁ、と清楓はため息を吐きながら続ける。


 「他にも話題はたくさんあるのに息が詰まる」


 「だからここへ来たのか?」


 少し尖った口調で父親も口を出した。


 「辛いのは分かる。でも現実的に考えて、勉強して高校や大学に行かないと辛いのはお前の方だ」


 表情を変えないまま説いていく。


 「少しでもレベル高い学校へ行けば、環境だって良くなる。お前が努力している姿を見ても誰も笑ったりなんかしない」


 柊月も依も父親の理屈それ自体は理解できる。しかし彼から出てくるピリピリとした雰囲気は、話し合いの空気とは真逆のものだった。


 「ここへ来てもその場しのぎになるだけだぞ」


 「ほら、それ」


 間髪入れずに清楓は言った。


 「お父さんはいつも正論で私を殺すよね」


 強い言葉に両親は息を呑む。


 「お父さんの言うこと、間違ってないと思うよ。私だって少しでも良い環境に行きたいとは思ってる」


 けど、と清楓は続けた。


 「お父さんは自分の意見ばっかり言って、私に寄り添ってくれない。私の話なんて聞いてくれないじゃない」


 正論言って叱るのはさぞかし気持ち良いだろうね、と清楓は両手で拳を握った。


 「ここのお坊さんは『里山体験』の時に、私の話をいつも聞いてくれてた。…仕事が忙しいから後にしてって言ったりしない」


 両親は気まずそうな表情を浮かべ、お互い顔を見合わせた。


 「正しいことを言うだけなら機械だって出来るよ。お父さんもお母さんも、他の大人もみんなロボットに見える」


 少し涙ぐみながら答えていく清楓に、柊月と依は思わず彼女の背中をさすってしまった。口は挟まない約束はしていたが、これくらいは許されるだろう。

 

 「今私が言ってること、『里山体験』から帰った後もずっと言ってたんだよ。でも2人は聞いてくれなかったよね」



読んで頂いてありがとうございます!


よく「正しいこと言ってるんだから良いでしょ」と言う人いますよね…。ChatGPTですら人に寄り添うようになっているに、わざわざ人間らしさを捨てて何がしたいんだか。…少し言い過ぎですね、申し訳ありません。


感想等いつでもお待ちしてます!


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