親
楽しんで頂けたら幸いです。
※5/26(月)加筆修正を行い、内容を一部変更しました
我が子の変化を見て、中には一旦自分の考えを見直す保護者もいた。
朝陽・暁兄妹の母親がそうだ。
2人は自宅に帰ってすぐ、里山体験でこんなことをした、友達が出来たなど嬉々として話していた。
「田んぼとか畑とか最初は面倒だったけど、やり始めると面白かったよ」
「住職とか坊さんも話が分かる人だったわ」
そんな2人に母親はよかったねと返す。
しかししばらく経っても里山の話は尽きなかった。
「またあのお寺に戻りたい。田んぼとか畑作業やりたい」
「あそこは気楽だったな」
最初は明るくハキハキと話していたのに、時間が経つにつれ遠い目をしながらそんなことを言うようになった。明らかにだんだんと元気が無くなっている。家の中でも少し落ち込んでいる様子が見受けられた。勉強に身が入らないらしい。学校も苦痛だと言っていた。ボーッとしていることが多い。
最初こそは
「勉強したくないからそんなんでいるんでしょ」
と軽く見ていた。父親は特にそう思っている。しかし2人は
「そうじゃなくてさぁ…」
「ていうか何ですぐそう捉えるの?」
若干苛立ちが混じった口調で返された。母親は慌てて謝って最近どうしたのかと聞いてみる。
「勉強で頭ばっか使って気が滅入るんだよ。だから農作業とか色々して体も動かしたいってこと。まあ部活で一応動かしてるけど」
「土いじりは部活でやれないもんね!」
「上手く説明できねぇけど、都市って役に立たないって思ったらすぐそれ排除するじゃん。結構恐ろしいこと言ってるよな」
「でもあの人たちって何か変なこととか言ってなかった…?」
と母親は返したが、
「言われてねぇし、むしろ人に対して化け物とか、もうやめた方がいいと思うけど」
と子供達にむしろ諭されてしまった。
「むしろ住職さん面白い人だったよ。ああいう人が担任とか顧問だったらなー」
「…」
何も言い返せなかった。
もしかして、おかしい考えをしているのはこっち?
そんな思いが小さく母親の胸の中に残った。テレビのニュースでも近年、都市の子供の不登校率、自殺率が軒並み上がっていると流れている。
自分の子供達はそこまでではなくとも、都市の学校に対して違和感を感じ、逆に里や農村にはまた行きたいと言っている。
…今のこの状況は、本当に子供達のためと言えるのだろうか。
そんな疑問を抱えるようになった。
しかしそんな考えも、父親が玄関のドアをガチャリと開け、足音を響かせたことでかき消されてしまったけれど。
同じく、風馬の母も保護者会で放った法円の言葉を思い出していた。
『学ぶには時があると言います』
『子供は漠然とした、どうなるか分からない未来を持っています。ここ都市ではそれを全部予定として捉えていますが、それは子供のためにならないのです』
自分の家庭とはまるで正反対のことを言っていた。
都市に、そしてこの家にいるのは息子のためになっていない…。
母親は衣類やあざの写真、病院の診断書などを荷物を詰め出した。
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