不満
投稿が遅れてしまい申し訳ありません!
楽しんで頂けたら幸いです。
そんな中、里では寺の前に一台の車が止まった。
車自体ここではあまり見られないため子供達がなんだなんだと、柊月達が来た時と同じように興味津々の顔で覗き込みに行く。
車からは澪と住職の法円…あと数人が出てきた。
「急に来てごめんなさい」
まだここにいると思って、と澪は言った。
他の数人の顔には見覚えがある。『交換授業』や『里山体験』によってここで一緒に過ごした小中高生達だった。
「久しぶり…!」
「どうしてここに?」
柊月と依が、車から降りてくる彼らにそう問いかける。
「もう家に帰りたくなくて、こっちにいたいから」
1人が代表してそう答えた。
「とりあえず中へ」
「どうしてまたここへ?」
海莉がお茶を出しながら、寺にいた全員の疑問を代表して聞いてきた。驚きつつも心なしか表情は嬉しそうだった。
澪は素知らぬ顔で
「さぁ、私はこの子達のご自宅まで送っただけですよ」
と言った。しかし口調がやけにわざとらしい。
「…?いや違うし住職様だって分かって…」
柊月達は法円に目を向けるが、にっこり笑って
「私も最近人の顔が覚えられなくなりましてね」
と、もう歳でしょうかとやけにニンマリした笑顔で言った。
小中高生らは「話合わせてくれ」と両手を合わせながら頼み込む。
その様子を見て響がははぁ、と言って頷いた。
つまり、大人達は都市の子らをここへ来させたら誘拐になってしまう、だからこの子達のことを村の子だと思って家まで送った…という設定にしたということか。
柊月達は一も二もなく了承した。
「勉強しないと家でお父さんに叩かれるから、もう嫌で家から出てきた」
その中にいた1人の小学生男子が涙ぐみながら言った。行方不明届が出されている風馬だ。
「遊んでいた公園もいつのまにかなくなったし、うるさいって知らない大人に怒鳴られるし、家も勉強も大嫌い。怖い大人ばっかり。ずっとこっちにいたい」
隣に座っている響が風馬の頭を撫でた。
「俺ももう受験勉強したくなくて、またここにいたいから出てきた…。『受験やめるなら、これまでかかった教育費全部返せ』とか親に言われた」
男子高校生の公也がボソボソした口調ながらも、自身の家庭事情を話す。
「そもそも大学って勉強するとこなのに…勉強したくない俺が行くのっておかしいと思う」
「おそらく、親御さんは将来を心配して言っているんでしょうね。都市では大卒で就活するのが一般的ですから。そこを踏み外すとなかなかいい仕事に就くのが難しい」
「心配してくれるのはありがたいけどさー…」
「どちらかというと、おかしいのはご両親というより都市やこの国自体の方ですね」
保護者会でも述べましたが、と法円は言った。
「私も戻ってから気付いたけど、都市って動き回れたり遊べたりするところ少ないよね」
大声出せる場所なんて学校の校庭くらいじゃない?と中学生女子の清楓も会話に参加する。
「家の中ですら狭くて運動いっぱい出来ないし」
「マンションなんか、足音すら騒音になるからもっとひどいよ!」
「都市のサラリーマンは仕事でない限り、体を動かすことはまずねぇからな…」
壮市もいつの間にか話に加わってきた。
「都市って大人の都合優先ってこと?サイアク」
「話すら聞いてくれないもんね、仕事で疲れてるからって」
なのに勉強をやったかどうかだけは聞いてくるんだから、と不満は続々と出てきた。
「頭ばかり使うから頭でっかちになって、考えが固まってしまうのでしょうね」
「周りをコンクリートに囲まれてるから、自分の頭ん中もコンクリートになったんじゃない?」
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