同じ
楽しんで頂けたら幸いです。
3/9(日)、加筆修正しました。
依は自室に柊月を招き入れた。その頃には曇り空からポツポツ小雨が降り始めていた。
「布団出さなきゃね」
依は押入れをあけて掛け布団やら敷布団やらを取り出していく。柊月も重い布団の片側を持って手伝った。
「埃は大丈夫かな…」
依はそう呟きながらテキパキと動いていた。一方柊月は布団を敷く段取りがよく分からなかった。
普段はベッドで寝ている柊月が布団を使う機会はせいぜい祖父母の実家に泊まる時のみで、慣れてない作業だった。
「えっと…」
「枕はここで紐を結んで…」
柊月は依に教えてもらいながらなんとか布団を敷いた。
2人分布団を敷き終わった頃、外はシトシトと雨が降っていた。
「もう寝る?」
「…うん」
柊月は布団に入った。疲れと眠気のあまり、体が重くなった気がする。
私も寝ようと依も布団に入る。
幼少期の友人とはいえ、自分に親切にしてくれる優しさが身に沁みた。
「依、色々よくしてくれてほんとにありがとう」
「え、そんなこと…」
「依がいなかったら私今頃どうなっていたか…」
そう考えると恐ろしい。
「ま、今日は早く寝てまた明日ね」
おやすみ、と言って依は電気を消した。
何分経っただろう。依はもう寝たのか、隣から寝息がスー…と聞こえる。
「…」
柊月は依の優しさに心から感謝した。
一方で、不安に押しつぶされていた。
このまま元の世界に、家に帰れなかったらどうしよう。
部屋の隅にはさっきまで着ていた柊月の高校の制服がハンガーに掛けられている。
またあの制服を着る機会はすぐに来るだろうか。
家族や友人達の顔が頭の中に浮かぶ。寂しい。
…帰りたい。目に涙が浮かんできた。
いやそもそも家に、元の世界に帰られるのだろうか。
依も突然ここに来たと言ってそれきりだ。帰る手立てなど無いということだろう。依は1人でこの孤独感に耐えてきたのだろうか。
先程までは何が何やら分からない状態だったため、これからのことを考える時間など無かった。しかし寝る前の今、状況を把握していくうちに柊月は一気に不安と寂しさの感情に襲われた。
ザーッザーッ…。
雨は大きい音を立てて本降りになった。ゴロゴロと雷の音も聞こえる。時折パッと光が部屋に差し込んできた。
柊月は寝ている依を起こさぬよう、静かに布団から出て障子を開けて空を見上げた。雷によって真っ暗の夜の曇り空は照らされる。
「…」
目の前にあるそれは見知ったものだった。こっちの世界でも天気は変わらなかった。
見慣れない世界の中、天気は元の世界と同じだった。
柊月は空を見続ける。
ーお前がどうなろうと、我には何も関係ない。
夜空はそう言ってる気がした。
大雨や雷を見て柊月は何故か気が抜けて泣き笑いの表情を浮かべた。
読んで頂いてありがとうございます!
感想等いつでもお待ちしてます!