結果
楽しんで頂けたら幸いです。
5/12(月)、加筆修正しました。
「結局、住職様の意見は理解してもらえなかったらしい」
響はそう柊月と依に話していた。保護者からの激しいクレームを、法円は1人で直接受けたとのこと。
子供に死や宗教などを教えるなという声も上がったが、同じくらい槍玉に挙げられたのが第一次産業についての話である。
寺では中高生らに、そもそも一億総サラリーマン社会になったのはせいぜいここ数十年〜十数年前のこと、それこそ戦後間もない頃は第一次産業に従事している人の方が多かったと教えていた。だから勉強が苦手ならば、就職してサラリーマンという道以外にも目を向けてみましょう、何か学びたい学問ができたらその時は大学へ行きましょうと助言していたのだ。
親や教師、文部科学省からしたら一番やめてほしい考えだろう。余計なことを吹き込まれたと思っているに違いない。『里山体験』から帰ってきた我が子と将来についての考えが正反対で、両親に刃向かい激しく意見が対立するようになった家庭は少なくないらしい。
「俺からしたら、子供が自殺する都市の方がよっぽど可笑しいと思うけどな」
なんで小さい子が、勝手に将来の心配して「生きていても仕方ない」なんて考えるんだ、と響はため息を吐く。
一方で都市から帰ってきた里の子供達はゲームに夢中になったらしく、帰ってからもゲームやりたいとねだっていた。あんな楽しいものが世の中にあったのかと。交換授業に行ってよかったと興奮した口調で喋っていた。
しかしだからといって、必ずしも楽しいことばかりではなかった。里にいる感覚で友達と遊んでいると案の定、
「うるさい!」
「危ないだろ!」
と周りの大人から睨まれたり怒られたりしたようだ。子供達からすれば、なぜうるさいと怒鳴られてしまうのか不思議でならないだろう。里では大人たちにとにかく外で遊んできなさい、と言われてきたのだから。
いつも通りに過ごしていただけなのに大人から怒られたという経験は、子供達の心の中に不信感を残した。
「ゲームは楽しかったからまた行きたいけど、いつも大人が不機嫌そうだった」
「勉強しろ勉強しろってうるさくってさー」
「なかなか外で遊べなくて窮屈だった。ゲームは続けるけどね!」
「あとなんか喋ってたら『そんな言葉使うな!』って怒鳴られた。何だったかは忘れたけど」
里に帰ってきた子供達は口々にそう言い合った。柊月はやはり言葉の制約は都市に今なお存在し続けているのか、と恐ろしくなった。小学生にもそんな厳しい目を向けるなんて。
「あとさー都市の奴らってみんなすっげぇ勉強してて、遊びに行こうって外出ても着いて来るやつ少なかった。つまんねー」
ハーッと残念そうにため息を吐きながら言った。
「ずっと家の中で勉強するのってなんか体に悪そうだよな」
一方その頃都市では、1人の女性が交番へ駆け込んでいた。
「息子が!息子がまだ帰って来ないんです!」
読んで頂いてありがとうございます!
フィクションなのでここでは勉強しなくてもいいとか大学に必ず行く必要はないと簡単に言ってますが、現実は難しいですよね。
今の日本社会では大卒資格を強く求められているのが現状ですから…。
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