保護者との討論
投稿遅れてしまい申し訳ありません。
楽しんで頂けたら幸いです!
4/8(火)加筆修正し、内容を加えました。
何よりも保護者の反発を呼んだのは、子供達に死体を見せたことである。
「ねえ、お父さんお母さん知ってた?人って死んですぐだったら、髪の毛とか髭とかまだ伸びてるんだよ」
夕食時、久しぶりに帰ってきた我が子からいきなりそのようなことを切り出されたら、両親はギョッとして驚くに決まっているだろう。
「どうしてそんなこと知っているの?」
問いかけると子は答えた。
「『交換授業』で見たから」
どうやら他の家庭にも同じようなことがあったらしく、保護者同士で「ありえない」「どうなっているのか」と案の定この話題は沸騰した。
そんなもの見せるな、トラウマになったらどうする責任取れるのか…などの批判の声が集中する。学校にクレームの電話が相次いだ。
あまりにも収集がつかないため学校側が急遽保護者会を実施し、そこに代表として法円を招き入れた。
説明会が行われる体育館では抗議に来た保護者でごった返している。
「本日はお招きに預かり…」
法円が教師から渡されたマイクを手に取って発言した直後、
「うちの子に何見せたんですか!人の死体だなんて!トラウマになったらどうしてくれるんです!」
と母親の怒号が飛んだ。周りもそうだそうだと同調する声を上げた。
「大体説明会では死体を見せるなんてこと一言も言ってなかったのに!」
「私も死はいつ来るか分からなかったので、死体を見せる予定はありませんでした」
高齢なので覚悟はしていましたが、と法円は微笑みながら答えた。その態度が余計に保護者の神経を逆撫でにする。
「死体だなんて臭くて気持ち悪いものを…」
「そもそも火葬せずにいることが野蛮だろう」
次々と批判の声が出るが、法円は努めて冷静に答えた。
「しかし、人はいつか必ず亡くなります。現代の子供たちは『死』というものの実態が掴めていないのです。ここ『都市』で『死』は排除されています。だからこそ私は子供達に見せたのです」
説明されても納得いかないのか、保護者席はまだザワザワとしていた。
「実際に見せた時期は亡くなってすぐの頃であるので、児童達のトラウマにはならないかと思います。少し見ただけでは死体とは分からないほどです。髪や爪が少し伸びたり、せいぜい口が少し開いたりする程度。腹もまだ膨れておらず、ウジ虫なども湧いていませんでしたし…」
「もう、やめてください!気色悪い!」
金切り声を上げる保護者もいた。
説明会は小学校のみならず中学校、高校でも行われた。
「『里山体験』でうちの子に何を吹き込んだんですか!息子は帰ってきたら急に大学には行かず戻って農業やるって言い出したんですよ!受験で推薦枠取れるから参加させたのに!」
「左様でございますか、またいつでもおいでください」
ここでも、あくまで法円は穏やかな口調で返答した。
「おいでください、じゃないわよ!息子は大学に行かせるんです!」
「大学へ行くことは何も否定致しませんが…」
「農業やらせるためにここまでお金掛けて勉強させてきた訳じゃないの!部外者が口出さないで!」
口を出すわけではなくただの1個人としての意見になりますが、と法円は前置きした上で言った。
「お子さんがそうしたいとおっしゃったのならそれでいいのではないでしょうか、もう大人ですから。何も全員が全員サラリーマンになる必要はございません。大学は何歳になっても行けますからね」
「それを口出すっていうのよ!」
「大体、勝手なことばかり言ってくれるな。今時大卒じゃなきゃどこにも就職出来ないのに」
ボソっと呟かれた一言にも法円は反応する。
「それはあくまで『都市』固有の事情でございます」
激しい攻防は続く。
「そもそも私は最初から反対してた」
と言い出す者も現れた。
「5人組とかある封建的なところなんて…」
「10世帯程はあるので正確には5人ではないですね」
「そんな細かいことどうでもいいわよ!働いてないような人もいたらしいじゃないですか!子供の手本にならないじゃない!」
そのような後出しジャンケンの主張にも法円は答えていく。
「しかし多かれ少なかれ皆人々に支えてもらいながら生きていきますでしょう?都市側が彼らを引き取らないので、うちで最低限の生活を送らせているのです」
しかし、法円の発言に対し保護者達はどこ吹く風だった。
「学校教育で宗教じみたことを教えて…」
「子供に訳の分からないこと吹き込むし」
「これじゃ意味が無い。将来のためと思って参加させたのに」
保護者たちの非難の声は止まらない。しかし法円は温和な態度を崩さず反論した。
「お父様お母様、そもそも私の寺では子供達に『これをしたら、こうなる』という考えは教えていません。『里山体験』に参加させたら頭が良くなる、勉強ができるようになるなどということは決して無いのです」
今度は教師がえっと驚いた顔をした。担当していた教師すらこの『里山体験』の狙いを曲解していたらしい。
「私達に出来るのはあくまで手助けだけ。勉強するかしないかは本人次第です。学ぶには時があるとも言います」
法円は真摯に保護者に訴える。
「若者の未来がどうなるのか把握することは出来ません。しかしだからこそ、それが希望なのです」
読んで頂いてありがとうございます!
死体って何のこと?と思われた方いらっしゃると思いますが、前エピソードを加筆修正していきますので少々お待ちください!
感想等いつでもお待ちしてます!




