雑談
楽しんで頂けたら幸いです。
4/22(火)加筆修正しました。
雨は一段と激しさを増す。
てるてる坊主を作った子供達が縁側の内側にある窓から雨空の様子を見ていた。
「ずっと雨のままだね」
そうだねと柊月も返す。
「大丈夫、そのうち止むよ」
励ますつもりで言ったが、子供達の反応は意外なものだった。
「別に止まなくてもいいよ。濡れても雨の中だって遊べるし」
「あたしも!雨も好き、匂いとか好き!」
「大人の人達が晴れたらいいなって言ったからてるてる坊主作ってあげたんだ」
「…そっか」
柊月は子供達の気持ちを勝手に決めつけていたことに恥ずかしくなる。早く晴れたらいいねという言葉も大人へのリップサービスだっのか。
柊月自身、決して雨は嫌いではなくむしろ好きだった。雨特有の空の薄暗さや匂い、雨音は心を落ち着かせるものだった。
むしろ素直に自分の気持ちを言っておけばよかったかと少し後悔した。
部屋の中へ戻ると依が数人の中高生と座って話をしていた。柊月に気付いた依は手招きする。
「なんか話していたの?」
柊月も会話に参加した。
「さっきの授業の感想会?みたいな」
「学校とかで言われているのと全然違う内容で…」
中高生の1人が口を開く。
「自分は変わるなんて聞いたことなくて、むしろ個性を大事にしなさいってしょっちゅう言われるし」
「ね、将来の夢とか就く仕事も自分に合ったものを選びなさいとか」
「君子豹変っていうけど急に変わったら怒られそう」
「確かに平家物語とか古典でやったけど、授業だと文法ばっかだし」
戸惑いの表情が見て取れた。
「一体どっちが正しいんだろうな」
「ねー」
彼らは悩んでいるようだがよく分からない世界線の『都市』とかいう空間に蔓延る思想と、元いた世界に実際に存在する平家物語や方丈記、どちらを選ぶかといったら圧倒的に後者だと柊月と依は思った。
しかしそれを口には出せない。
「…でも都市ってほんと大変そうだよね、勉強とか受験とか」
依が都市に対して少し探りを入れるように言った。柊月もコクコク頷く。
「ほんと大変だよ。将来のために勉強しろ、我慢しろだの。高校受験終わった途端次は大学受験、その後は就活だって言われるし」
「へぇ…」
「てか2人も都市出身じゃないの?」
ギクッと2人の体が震える。間違っても違う世界から来たとは言えない。慌てて柊月は
「私達はみんなが来る少し前からここに住んでて…」
と取り繕った。依もうんうん頷く。嘘はついてない。幸い、周りはそこまで興味が無かったのかふーんと反応しただけで、そのまま話し続ける。
「お寺に行くのだって親はいい顔しなかったわ。国が認めて紹介してるところだからまだ良かったけど」
「あぁ、怪しいところだったら怖いもんね。カルト宗教とか」
それに関しては同意ができる。
「それもあるけど、そもそも宗教自体嫌だって。理屈に合わないだの合理的じゃないだの。親が不機嫌になってめんどくさかったわ」
うちもそれあったーと声が上がる。
「最初は、受験で有利だからって理由でここに来たけど…」
声を顰めながら話し出したが、
「でも今となっては結構楽しいかも」
と朗らかな表情で言った。
柊月はこの子達を怖いと思ったことを少し反省した。そもそもそういった考えやシステムを生み出したのは都市の大人達で、彼らはそれに従っているだけだからだ。責める気などなれない。
「住職さんも面白くて話分かる人だしね」
「赤ちゃんも抱っこできて嬉しい!」
「もうすぐ里山体験終わっちゃうけど、正直まだ居てもいいかもなー」
「まぁ、なんだかんだ来てよかったよね」
うんうん、と和やかな雰囲気で柊月と小中高生らは談笑した。最初の期待値が低かったからか、終盤の今となっては皆ここの生活にそこそこ満足している様子だった。
このまま終わればよかったのに。
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