忠告
首の苦しさが絶え間なく続く。このまま死ぬなんて絶対に嫌だ。
もう助からなくてもせめて襲われたことやこの女に対する痕跡をどうにか残せないだろうか。
柊月は意を決して目を見開く。
女の顔は相変わらず帽子で隠れていて見えないままだ。何か、何かないのか。この状況でも自分に何かできること、残せることはないか。どんなにちっぽけなことでも。
柊月が痛みに悶えながらそう考えていた時。
女が素早く横にずれて柊月の視界から姿を消した。それと同時に違う何かが現れてた。
首にかかった圧力は無くなる。気道に新鮮な空気が入ってきた。
何だ…?何が起きた?
「何してる!」
男性の力強い声が聞こえる。もしかして助けが入ったのか?
「あら、王子様の登場?」
女はそう言った。王子様?誰?
「はあーっはあー…」
柊月は荒く呼吸を繰り返す。
「君、大丈夫か!」
男性は柊月に声を掛け、そのまま近づいて背中をさすった。
「はあーっケホ、ケホッ…」
この人が柊月から離そうとして入れた蹴りを女が避けたということが分かった。
助けが入ったことに柊月は安堵の涙が出てきそうだった。
「この子を殺そうとしたのか、貴様」
「少女1人の首を絞めて殺害なんて、そんな手間が掛かることしないわよ」
「うちの家の人間だ。手を出すな」
うちの家?ということはつまりこの人は…。
「あくまで忠告しただけよ。…お嬢さん、これ以上怖い思いしたくないなら、もう出しゃばる真似はしないことね」
出しゃばった覚えなど毛頭無いと柊月は返したかったが、もう体に力が残っていなかった。そして人の腕に包まれた安心感で柊月の気が抜けていく。
女が去っていくのを男性は待て、と追いかけようとしたが柊月の意識が失っていく様子を見て慌てて止まった。
男性の大丈夫か、しっかりという声が遠くなるのを感じながら柊月は目を閉じた。
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