一瞬
「そう…」
柊月の返答に相手の女性は口を閉ざした。分かってくれたのだろうか。
柊月はそう思って目線を女性から逸らし、体の向きを少し変えた。その時だった。
不意に片足に衝撃が走った。何が起こったのか分からぬまま柊月は体勢を崩す。
一瞬で女の足が柊月の背後に周り、そのまま足を掬ったのだ。動きが早すぎて目に何も映すことが出来なかった。
片足が砂浜から離れる。体の重心が取れないまま、その女から肩をグッと押された。背中から柊月は砂浜に倒れ込み、その衝撃で周りの砂が2人にかかる。
「…!?」
驚くばかりで何の反応も出来なかった。
女は柊月の首元に手を掛ける。
「っ…」
柊月は恐怖で体が震える。
どうしていきなり襲われたのか。目の前にいるこの人物は一体誰なのか。
女は口を開く。
「あなた、やはり別の世界から来たという子ね」
「…!?」
なぜ境家以外の人間が知っている。公言してないのに、いつ情報が漏れたのだ。
顔を青ざめ、震えながらも柊月は
「ち、違います…」
と今にも消え入りそうな声で言った。隠し通そうとするがもうほとんど無意味だろう。
「もう1人のお嬢さんは今まで大人しくしていたから見逃してあげようかと思ったけれど」
もう1人のお嬢さんとは依のことだろう。
「秩序を乱されてしまうのなら、あなたはそうもいかないわね」
「…!?」
首にかかる手の圧が強くなる。息が出来ない!殺される!助けて!
柊月は両手で女の手を叩いたり、何とかして離そうとするが全く動かせず、足をバタつかせることしか出来ない。
頭の中で依や澪、境、そして家族や友人達の顔が浮かんでくる。涙が滲んで口元から唾液が溢れてきた。
いやだ、死にたくない!私は元の世界に帰りたい!
まだここで死ぬわけにはいかない!




