原因
3/5(水)、加筆修正しました。
大学を出てからも、依はしばらくの間柊月の手を引いて走り続けていた。
ようやく立ち止まった時には既に大学の最寄り駅の前だった。気付けば雨は止んでいた。通り雨だったのかもしれない。
2人はハアハア息を吐きながら地面に倒れ込んだ。
「ここまで来れば、もう大丈夫だと思うけど…」
依はキョロキョロと周りを見回しながら言った。
2人はハンカチで濡れた服を拭いていく。
「依…原因分かったの?」
柊月は依に小声で聞いた。
「うん。あれは…多分、喋った言葉が理由だと思う」
「え…?」
「『お互い様』って言葉がダメだったんだと思う」
「え…!」
柊月は思わず目を丸くする。
お互い様がダメ?一体どう言う理屈だ。それでなぜあんな敵意丸出しの表情になるんだ。
どちらかといえば良い意味ではないか。非難されるような言葉だとは到底思えない。
加えて、柊月は禁止されている言葉とは、もっと高尚で難解な政治的内容に関係しているものだと勝手に考えてしまっていた。
気を付けていたことは事実だが、まさか子供でも気軽に言うような言葉が制限されているなどとは思いもしなかった。その身近さも恐ろしかった。
「依、ごめん…私のせいで」
柊月は謝罪したが、依は頭を振って答えた。
「ううん、柊月は私を思って言ってくれたじゃん。それにお互い様って言葉がダメなんて私も最初は分からなかったし」
2人は立ち上がって歩き出す。
「ここを出る前まではもう話さないようにしよう。必要な場合は筆談にするか、相手の耳元でコソコソ話しのようにするしかないね」
柊月は力強く頷いた。
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