逃げる
3/3(月)、加筆修正しました。
「…?」
急にピンと張り詰めた空気に柊月は困惑する。辺りを見渡してみると周りの人達が顔を顰めてこちらを見ていた。
ヒソヒソと何か話している人もいる。
それは明らかに嫌悪感丸出しの表情だった。
「え、何…」
今まで浴びたことがないほどの敵意ある視線に柊月は怖気付いた。
超高速で自分の行動を振り返って原因を探る。
道の邪魔だったからか?それともぶつかったことに対して少し大きい声を出してうるさかったからか?
しかしそれらの場合であればもっと早く反応するはずだ。
今いきなりこのような状況になるのはおかしい。
たくさんの鋭い目に刺されていると、周りの何人かが柊月達に近づいてきた。その様子はまるで公共の場で迷惑行為をしている人を注意する時に似ている。
「ちょっと、あなた…」
ついにその中の1人が声を掛けてきた。その時。
ポツポツ…。
水が地面を叩く音が聞こえてきた。雨が降ってきたのだ。
しとしと…。
雨の音が少し大きくなった。地面の色は徐々に変化していく。
本降りとまではいかないが小雨程度ではないほどの雨の量だった。
「ちょっと、やだぁ!」
話し掛けてきた目の前の人が金切り声で叫んだ。
そしてそれに続くように周囲の人も
「うわ最悪」
「雨じゃんっやばいやばい」
「早くこっち」
と口々に言って屋根のある校舎へ一目散に逃げ込んだ。
大して強くない雨にも関わらず、まるで地震にでも遭ったかのような慌て振りだった。
短い時間の中で起きた出来事に付いていけず、柊月はその場でオロオロする。
「まさか…」
依は呟く。何か思い当たるものがあるような表情だった。
何?と尋ねる前に依は柊月の手を取り、
「行こう!」
と言って駆け出した。
大勢の人々の視線を浴びながら2人は大学から走って抜け出す。
「…」
その様子を1人の人間が物陰からジッと見ていた。
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