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プロローグ

今日からきままに書いて行こうと思います。自己満です、すみません。

 異世界モノのアニメを見ながら寝落ちして、目が覚めたら大自然。

 それが俺の異世界転生の始まりだった。

 神様からの天啓やら啓示なんてものは皆無。

 不慮の事故で死んだ人間が神様の慈悲で特別なスキルを与えてもらって異世界へ……とはよく言ったもので、リアル異世界転生の場合、寝て起きたら異世界、終了。

 そして、勝手に始まる。

 何がって、だーーーれにも注目されない異世界生活、が!

 イギリスの詩人が言うように、事実は小説よりも奇なり、だった。

 まだ小説で字を追って「そんな訳ねぇだろ」とか「厨二病っぽい発言さっむ!」、「展開はやすぎてつまんな」などと言っていた方が平和なんです。

 異世界モノのラノベやアニメにいちゃもんをつけてた、三年前の異世界転生する前の俺に助言を与えるなら、その言葉を伝えたい。

 「もっと現実的な作品を俺は見たいんだ!」とSNSに投稿していたが、今思えば……


 「異世界転生してる時点で()()()()作品ではなくねぇか?」


 異世界に行っちゃったならもういっそのこと非現実一直線の方が割り切れるし、なにより楽しめるだろうが。

 変に異世界モノに現実的な描写を加えた作品は、なんか嫌だ!

 現実にブサイクはいるから異世界モノにブサイクを現実的な確率で書き加えたら、たまにスマホの画面が暗くなった時に写る自分の顔がブサイクだってことに気付いて、急に現実に引き戻されるだろうが!

 どんなにモブキャラでさえ、平均顔以上で描かれる異世界アニメは最高だよ!

 ってなんの話してたっけか。


 ところで、俺がこの三年で学んだことは、三つある。

 一つ目は俺は強いこと。

 それも考えられないほどの戦闘力を持ち合わせている。

 国を挙げて兵力を結集してなお勝率が五分五分の魔獣を、少し固めの麺をご所望の方向けのカップラーメンが完成する程で倒せる。

 二つ目は強さにも被るが、ありとあらゆる魔法を使える。

 魔法には属性があり、主に六つで、()(すい)(ふう)()(こう)(あん)

 各属性を極めた者が到達できる、(えん)(ひょう)(らん)()(せい)(じゅ)が存在し、これらを進化系魔法(職人魔法やS級魔法など)と呼ぶ。

 ちなみに読み方に決まりはなく、六つ並べて言うときの言い方が音読みなだけで、普通は「火魔法(ひまほう)」とか伝わりやすい読み方をするのが一般的。

 伝わりゃなんでもいいってこと。

 そして、六つの進化系魔法を習得した者は全てを極めた人物という意味で、森羅万象と一括りになる。

 要するに「あなたの属性はなんですか?」と言われた時に「炎、氷、嵐…」と答えるのは面倒だし、かといって「全てです」と簡素な答えも格好悪い。

 なにより世界中の人が敬意を込めて「森羅万象を操りし者」と敬うのだ。

 とはいえ、全ての魔法をマスターした人物を知らない人間がいないので、世界中で有名人。

 よって、森羅万象とはただの装飾になる。

 寝落ちしたら森羅万象を手に入れた俺は恐らく、世界で五本の指に入るくらいには強い。

 転生前の異世界知識は豊富だったため、森羅万象だの戦闘最強などの()()()()は誰にも教えていない。

 というより、三年間でできた友人はゼロなので会話すらまともにしていない……。

 ただ、どうにも人と関わらなければ生きていけない現代社会を生き抜いて来て、精魂尽き果てた現代人の俺には()()()()()ではなく()()()()を優雅に生き抜いている。


 そして、異世界で学んだ主なことの三つ目は、顔を隠して生活することはメリットが多いことだった。

 幸運なことに、異世界に降り立ち自らの力に気付いて森の魔獣を倒しまくっていたら、とある貧困村に辿り着いた。

 最近魔獣がめっきり減って狩りが思う存分できるようになったから稼ぎ放題! 村中がお祭り騒ぎだよ! と言ってきた老人が経営する雑貨屋に入ると、レジ横に置いてあった呪いの被り物なるものを手に入れた。

 呪いと名付けられた被り物は、その名に比べ大変可愛らしいのだ。

 まるで狸とアライグマを足して二で割ったような容姿である。

 目と口は切り取られていて特に視野、呼吸に違和感はない。

 なぜか通気性抜群で蒸れたりも全くしないし、禍々しいオーラ的なものも感じない。

 一つの難点は、被ると狸人間になってしまうことだ。

 

 店主の話によると―――


 「知り合いの親戚が骨董市で格安で手に入れたそうじゃが、一週間で家族が三人死んだようじゃ。それに興味を持った知り合い……知り合いの親戚の知り合いじゃ、が引き受けたそうじゃが、毎晩悪夢にうなされて、不眠症。精神的にやられてワシの所に来たわけじゃ。」

 「はあ……。では、あなたはどんな不幸を?」

 「いやいや、ワシは今のところ何もないんじゃよ。むしろ魔獣が減って村中に金が回り始めて客足も増えて稼ぎが増えたんじゃ。」

 「呪いの被り物が幸運をもたらしていると。」

 「じゃから幾分怖いんじゃ。ただ……」

 「ただ?」

 「ワシの仮説は、闇魔法を持っている者には幸運をもたらすんじゃなかろうか、と。」

 「ご主人は闇魔法を?」

 「ええ、これでも(のろい)まで極めて四十年、冒険者として結構名を馳せたんじゃよ。ああ、すまんすまん。老人の昔の自慢話ほど価値の無い話はなんじゃ。忘れてくれ。」

 「いやあ、すごいっすね。」


 お世辞ではなく心の底から「すごいっすね」と思った。

 貧困村で店を構えているのだから昔から暮らしは変っていないのか思っていた節がある。

 だから、この村にいる身分としては、という隠語が込められていたのかもしれないが。

 とはいえ、呪いの被り物が幸運をもたらす被り物に様変わりした話は興味深かったし、店主もとい、呪まで極めて何十年も第一線を走って来た人間の仮説を俺は素直に信じた。


 現代人の中で最も異世界知識が豊富だと自負していた俺にとって、現実の異世界を受け入れることは容易かった。

 全属性の魔法を持っているのは特別なことだし、魔法を使わずにある程度戦える戦闘力が存在するのも異常であると客観視できた。

 異世界モノの王道の流れは、多くの他人の命を救い貴族や国王のような人物と関わり合い、有名人になるのだ。

 絶対にそのようなストーリーに乗せられない人生を歩みたい。

 以上、俺が強すぎる件、俺が魔法を使える件、俺が顔を隠している件の三つを肌で学び、行動しているのでした。


 しかし、理由は知らないが森羅万象と純粋な戦闘力を兼ね備えている最強の俺自身を使わないのは癪に障る。

 自分が死なない程度には魔獣を倒したり、時には人を助けてヒーローのような扱いを受けてみたい……承認欲求がちょっとは俺にもある訳で。

 にしても、金を稼いで大きな家に住んでみたい、なんて欲求もなければ、毎食贅沢な料理を食べたい訳でもない。

 普通に起きて、好きな時に必要な分だけ稼いで、好きに生きたい。

 そう思えるのは、やはり森羅万象のお蔭で、恐らく稼ごうと思ったらバンバン魔獣を倒して知名度を上げて有名人になればいい話。

 そうすると色々想像に容易い嫌~な事に巻き込まれるんだろうなあ……。

 てなわけで、曰く付きではあるが被り物を序盤に手に入れられたのは全くの幸運であった。


 一年間は狸人間として森の中を彷徨って魔獣を倒したり、小さな村に立ち寄って殺した魔獣を売ったりして生計を立てた。

 徐々に狸の被り物をした妙な人間があらゆる強い魔獣を倒すと噂が立ってしまったため、深い森へ潜り、丸一日かけて移動した先の村―当分噂が届かないであろう場所―に辿り着いた。

 念のため、狸人間は引退し、新たな被り物を購入。

 次は、貴重な鹿に似た魔物? 動物? の標本を購入し、力ずくで額縁から引きはがしたものを被り物とした。

 鹿の首が壁から生えてて、初めて見た時は心臓がキュッとなるアレである。

 何処の世界でも考えることは、皆一緒みたいだ。

 立派に生えた角がドアのつっかえたりして不便なので、これも力ずくで捥ぎ取った。

 狸人間の次は鹿人間として約半年金を稼いで、普通の暮らしをしていると、森の向こう側の狸人間の噂が追い着き、またしてもここら一帯から離れなくてはならなくなった。


 俺は至って普通の食事と普通の洋服……金持ちの生活をすることに興味は無い。

 洋服なんてそこら辺で買えるし、オシャレでなくてもキャン玉と棒が隠れさえすればいいが、目立ってしまうからちゃんとした服を着る。

 最低限のマナーは守りましょうって感じで。


 ここまでの生活で三年である。

 貯金は2億G(ゴールド)で、日本円で20億円。

 この世界ではGが世界共通の単位であり、日本円換算は10倍すれば丁度いいくらい。

 あくまで普通の暮らしをするのに2億G(20億円)もいらない。

 でも、お金配り鹿人間になりたくない。

 最近の主たる悩みは、このお金を有効利用してくれる人いないかなあ、である。

 大きな町に行けば寄付もできるが……寄付した額の100%が有効利用されている気がしないし、太ってハゲ散らかしたお偉いさん懐にスーッと吸い込まれて行く気がしてダメだ。

 どうせお金がなきゃ抱けない女性のために使われると考えると……。

 かといって貧しい人にいきなりお金を配り始めると、悪事を携え寄って来る輩の相手をするのは面倒。

 良いお金配り先はないものだろうか……。

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