最終話 一人で彼のもとに
出血と炎症がひどいのとで体調が万全ではないが
電車のルートや送迎バスの有無などを調べて一人でS市にある霊園に
あれからさらに数年
再びS市の霊園を訪れた
こんどは一人で
20歳の頃とは違う
もう30代半ばになった私
すっかり中年おばさんだよね
しかも松葉杖ついてるし
あの頃はまだ足も落ち着いていて
彼のオートバイの後ろに乗れた
オートバイのタンデムシートに座って彼の背中をいつも見ていた
アライのジェットヘルかぶるとアン×ンマンになるの笑うなし!
彼と別れてから彼の後ろ姿を見つめる夢ばかり見ていた
何度も何度も・・・
花とお線香を供え
今日は一人だから
彼の墓碑に話しかけた
哲一緒だと無理(汗
あれから別の男と結婚&離婚したこと
ステージ2のがんで来週手術すること
今日は哲は学会で来れなかったこと
かなり遠いので何年も来れなかったこと
あと・・・
ごめんね・・・
あんときちゃんとお別れできなくて・・・
それとも
無理してでもあなたに会いに行けばよかったのかな
あの最後に交わした電話のあとすぐにでも・・・
そうしたら何か変わったのかな
どうなんだろ
全てはもう過ぎてしまったこと
終わってしまったこと
でも・・・後悔の念で頭がいっぱいだ
どう悔やんでも
もう彼はいない
涙が止まらないよ
・・・
ガラスのケースからノートを取り出した
ノートのナンバリングをみるとそれが十数冊目だとわかる
見るとサークルメンバーらしき人が多い
ただここ数カ月は誰も書き残していないみたいだ
最後に書き込みがあったページの下のほうに
イニシャルと「ごめんね」とだけ書いた
涙が「ごめんね」の文字の上にポツポツ落ちた
ガラスケースにノートを戻し
「今度は哲引っ張ってくるね。また来るね」
・・・
気のせいかな
彼の声が聞こえた気がする
「はるかさん、待ってるよ」
過去をいろいろ振り返ってみて
あのときどうすればよかったのか?何かもっと方法があったのか?
考えれば考えるほど胸が痛い・・・未だに
幸いがんは転移無しで術後1クールだけ抗がん剤(念のため)受けたけど
今のところ無事
まもなく5年を迎える
でもまた別の病気で手術の予定があるんだよね(汗
またそのうちセージ君とこに行こうかな・・・