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日傘の少女

作者: 圓華伊織

穏やかな日常が最高だよねって感じで書きました。

雰囲気だけでも楽しんでいただけたら幸いです。

 いつも同じ時間に同じベンチに座っている少女がいる。

 ベンチは道路沿いの公園にあり、子どもたちも多く訪れるのだが、少女の周りだけは静寂が包んでいるかのような不思議な空間だ。

 少女は日傘を差し、本を読んでいる。腕で傘を持つような体制だ。

 絹のような栗色の髪の毛は肩より10センチほど下あたりまで伸びている。

 ハーフアップにしているため、横顔がはっきりと見える。少女はまるで人形のように微笑んでいる。

 声をかけようにも、きっかけがない。

 本のことを聞いたとしても、興味がないから話が続きそうにない。

 日傘だって、もしかすると聞いてはいけないことなのかもしれない。

 つまり、気持ち悪いが遠くから眺めているだけでいいのだ。



 ある休日、少女を見つけた。いつもと変わらない。だが、一瞬強い風が吹き、少女から日傘と栞が離れた。栞はこちらへ風に乗って飛んでくる。

 反射的に掴み、走ってきた少女に渡す。綺麗なピンク色の桜の栞だった。

「どうぞ。」

 酷く驚いたような顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。

「ありがとう、ございます。」

 そう言うと、少女は消えた。初めから存在しなかったかのように、跡形もなく。



 それから少女を見かけなくなった。

 母が言っていたのだが、数年前、女子高校生があのベンチの辺りで轢かれるという事故があったそうだ。調べてみると1つの記事がヒットした。

 運転手の話によると、少女が急に飛び出してきたらしい。手には桜の栞が握られていたそうだ。

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