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5話 例の物


 という訳で、オーガスト兄様のお見送りもそこそこにして、私とツェリーナ姉様は、お城の中を歩いています。


「あ、あの、ツェリーナ姉様。一体どこへ?」

「黙ってついてくれば、分かるわよ」


 そういうツェリーナ姉様について歩くこと、十分ほど。訪れたのは、お城の地下倉庫でした。このお城の地下には、食糧から武器まで、幅広い物が保管されている。広くて、じめじめしてるし、薄暗いし、好きじゃないんですよね。

 そんな地下に辿り着いて尚も、ツェリーナ姉様は歩みを止めない。石で囲まれた通路を、堂々と歩いていきます。すれ違う兵士の視線が、痛いです。どうして、お姫様姉妹が揃って、こんな地下倉庫を訪れたのだ。目で、そう訴えられているけど、話しかけられることはない。ツェリーナ姉様に話しかけると、ろくな目にあいませんからね。みんな、知っているんです。触らぬ神に、祟りなしです。


「ついたわ」


 ツェリーナ姉様が止まったのは、扉の前でした。扉に掲げられたプレートには、倉庫管理室長室と書かれている。平たく言えば、この倉庫を管理してる、責任者のお部屋ですね。

 ツェリーナ姉様は、そんな扉を、ノックする事無く開け放った。


「うぷっ」


 扉をあけた瞬間、充満するお酒の臭いに、私は鼻を摘まみました。お酒って、苦手なんですよ。あと、煙も充満しているんだけど、それは煙草のせいです。こんな地下で、よく煙草なんて吸えますね。頭おかしいんじゃないですか。

 ツェリーナ姉様は、そんなのに気にする様子もなく、部屋の中へと入っていきます。嫌だけど、私もそれに続いてはいる。


「おんやぁ。これはこれは……ツェリーナ姫様じゃないですか」


 散らかり放題の、狭い部屋。本や、資料と思われるファイルが、床に乱雑に積まれています。そんな本やファイルにより、作られた道の先。部屋の中央に置かれた机に、足を置いてイスに座っている、一人の男の人がいた。無精ひげをはやした、怪しい男だ。年は、30歳くらい。煙草を口にくわえ、机の上には紙やペンと、酒瓶が置かれている。


「例の物を、いただきに来たわ」

「はて……例の物、ですか」


 無精ひげの男の人は、私を見ながらとぼけたような振りをする。


「コレは、気にしなくて大丈夫」

「……と、言いましてもね。あまり、広まっても困るんですよ。被害を被るのは、どうせオレなんですから……」

「平気よ。もしこの子が下手な行動をしたり、この事が明るみにでるようだったら、この子の仕業という事で、仕立て上げてあげるから」


 な、なんですと。


「そのために、グレア様を連れてきたんですか?ツェリーナ様も、悪い人ですね。自らの妹に、罪をなすりつけようだなんて……」


 や、やっぱり、ついてくるんじゃなかった。この2人、絶対に何か、よからぬ事を、ここでしている。私は、そんな2人のよからぬ事に、巻き込まれてしまったのだ。


「そういうのは、いいから。こんなの、妹でもなんでもないし。王族のお荷物。ゴミみたいな存在なんだから、使える時には使わないと、ね」


 言い返したい気持ちは、ある。でも、今はそんな事より、この状況を抜け出さないと。じゃないと、何かに巻き込まれて、後戻りできなくなってしまう気がします。


「わ、私、帰りますっ!」

「まぁ待ちなさい。ゼン、出して」

「くっ……!」

「……」


 ツェリーナ姉様は、立ち去ろうとした私の手を掴んで抱き寄せると、逃げられないように背中に手を回されて拘束されてしまった。ツェリーナ姉様と私は、体格も力もまったく違う。こうなってしまったら、私にはもう、力づくで逃げる手段はありません。

 ゼンと呼ばれた無精ひげの男の人は、よたよたと立ち上がると、部屋の扉の鍵をしめてから、一番奥の壁を、机の上に置いてあった木のハンマーで、3回叩いた。すると、先ほどまでそこにはなかった、奥へと続く道が、どこからともなく現れた。

 魔法によって、隠されていた道だ。恐らく、どこかに魔法の装置が仕掛けられているに違いない。それも、かなりの高度な技術を持った物だ。じゃなければ、私がすぐに察知できるはずですから。


「少し、お待ちをっと」


 ゼンが、そんな通路に入っていき、姿を消した。そして、すぐに戻ってくる。その手には、布が被された、小さな何かが握られている。小さいと言っても、直径で15センチ程はあるだろうか。何かを包んでいるのは分かるけど、それが何かは見当もつきません。


「へへ。ちょうど、活きのいいのが、手に入ったばかりですよ」


 そう言って、布をまくるゼン。姿を現したのは、檻だった。鉄製の、ゴツい檻です。ただ、それは人が入るサイズではない。では、何が入るのかと言うと、正解はフェアリーだ。檻の中には、フェアリーがいれられていた。


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