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世界最強の魔術師が百合でした  作者: あめふる
2章 解放、旅立ち
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19話 テンションあがってきました


 しばらくオリアナの膝の上で休憩した私は、復活です。この先の事を考えると、まだまだ暗くて嫌になっちゃいますが、とりあえずは元気が出ました。


「私、復活です」


 立ち上がった私は、口に出して、宣言します。

 せっかくの私のありがたいお言葉なんですが、オリアナはそんな私を、完全に無視です。無視して、私が乗って来た馬の荷物を降ろすと、それを広げて中身を確かめ始めます。


「……食料は、全滅ですね。道具も、大したものは、ありません」

「え?」


 私も、オリアナが広げた荷物を、覗き込みます。すると、そこには石やら木やらが詰め込まれていて、食糧なんてどこにもありません。加えて、テントや寝袋は、ずたずたに切り裂かれ、穴だらけ。これじゃあ、まともに機能しません。唯一、まともに使えそうな物といえば、ボロ切れでしょうか。よく見たらコレ、私が牢屋で着ていた服と、掛布団にしていた布ですね。棒の先端に巻いて、油をしみこませて松明にでもしましょう。


「──じゃないですよ!なんですか、コレ!嫌がらせにも程があるでしょう、本気で私をメリウスの魔女の生贄にさせるつもり、あるんですか!?辿り着く前に死にますよ、これ!?」

「……メティア様としては、オーガスト様をあんな目に合わせた、メリウスの魔女を許すつもりはないでしょう。体よく姫様を殺させ、その後で魔女も殺すつもりなんじゃないでしょうか。だから、とりあえず貴方が死ねば、後はどうでもいいんじゃないですか」

「くっ」


 さすがに、ここまで露骨に嫌がらせをされると、悲しくて涙が出てきそうです。せっかく復活したのに、急転直下ですよ。


「持たされたのは、コレだけですか?」

「……はい」


 やっぱり、あの時レックス兄様に、無理やりにでもチェックしてもらうべきでした。これじゃあ、旅に出るなんて、不可能です。お金も入っていないようですし、いきなり詰みですよ。


「あ」

「?」


 そういえば、レックス兄様が、別れ際に胸を指さして、ジェスチャーで何かを伝えてきたんでした。私は、胸当ての下に手を突っ込んで、胸をまさぐります。


「いきなり、どうしたんですか。痴女ですか?欲求不満なんですか?」

「違いますから……!」


 どうやら胸当ての下に、何かが隠されているようです。それを引っ張り出すと、それは麻袋でした。ジャラジャラと音がするので、中身は見なくてもわかります。みんな大好きな、お金が入っているようです。


「金貨が、5枚……!」


 中身を取り出すと、そんな大金が入っていました。

 金貨1枚で、1か月は贅沢をして暮らせるほどの大金なので、それが5枚という事は、5か月遊んで暮らせます。

 やっほい!テンションがあがってきました。


「レックス兄様が、隠し持たせてくれた物のようです。コレで、贅沢ができそうですね!」

「お金を見た途端に、元気にならないでください。レックス様は、贅沢をするために、お金を持たせてくれた訳ではありません。コレで、旅に必要な物を揃えたり、魔女と上手く交渉しろ、という事ですよ」

「そんなの、分かってます。これだから、冗談の通用しない、生真面目なメイドは困るんですよ」

「姫様の場合、冗談かどうか分からないんですよ。普通の人では、到底口にしないような、信じられない事を言い出しますからね。これだから、冗談の下手な姫様は困るんです」

「ぐむぅ!」


 生意気な事をいうメイドに、私は腹がたちます。でも、内心は、こんなやり取りがまたできるようになって、喜んでいます。


「……頬を膨らませながらニヤついて、何がしたいんですか。ほら、行きますよ」

「へ?行くって、どこに」

「こちらです」


 オリアナは、広げた荷物をほったらかしにして、馬だけを連れて、道を外れて茂みの中へと消えていきます。私は、置いて行かれるのが嫌で、慌ててそれを追いかけました。すぐに追いついた私は、オリアナのメイド服を掴み、その後に続きます。

 少しすると、開けた場所があって、そこでは焚火がたかれていて、おまけに良い匂いがします。焚火を利用して、お肉を焼いていたようで、傍には焼き終わったお肉が置かれていました。近くには荷馬車があって、馬も1頭います。


「な、なんですか、コレ」

「言いましたよね、私。趣味の、旅に出かけると。旅に必要な物は、お城を出てすぐに買いそろえたんです。勿論、食糧も大量に」

「オリアナ、貴方もしかして、最高ですか……?」

「ええ、まぁそうですね。最高です」


 私は、思わずオリアナに抱き着いて、感激してしまいました。このメイド、用意が良すぎます。どんだけ有能なんですか、貴方は。もう、ちゅっちゅしてあげたいくらいです。


「私、まともな食事をしばらくとっていないんです。早速、いただいてもいいですか?」

「は?」

「へ?」

「嫌ですよ……この食料は、私のです。何か食べたければ、その辺の山菜でも食べてればいいじゃないですか」

「そ、そうですね……じゃあ、私はこのキノコでも食べますね。ちょうど、落ちてました……」


 予想外の反応に、私はオリアナから離れ、地面に生えていたキノコを拾い上げます。赤くて、紫色の斑点があるキノコですが、美味しそうです。お腹も空いていますし、とりあえずコレで膨らませましょう。


「冗談ですよ。ちゃんと、姫様のご飯を作りますから、それをお召し上がりください。それから、それ、ヤバイキノコですので、捨ててください。食べたら死にますよ」

「オリアナ好き!」


 私はキノコを捨てて、再びオリアナに抱き着きました。


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