表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の魔術師が百合でした  作者: あめふる
1章 囚われの身
15/79

15話 私のメイドさん


 冷たく鋭い目で、牢屋の中の私を見てくるオリアナは、まるでゴミを見るかのようです。その目と言葉に、私は鳥肌がたつのを、感じました。


「オリアナ、私は……!」

「黙りなさい。貴方のせいで私は、お城を追われる事になったんですよ。分かっているんですか?」

「そんな……なんで……」

「なんで?私が傍で仕えていた人が、死刑になったからです。監督責任という奴でしょうか。貴方のせいで、私はこれから路頭に迷う事になったんです。分かったら、謝罪の言葉の一つでも欲しいくらいなんですけど」


 私のせいでは、ない。全ては、ツェリーナ姉様と、お母様が仕組んだ、罠だ。でも、その罠に簡単に引っ掛かり、オリアナにまで迷惑をかけてしまったのは、私の浅はかさが原因とも言えなくない。


「……ご、ごめ──」

「──やっぱり、いいです。貴方の謝罪に、もう何の価値もありませんし、よく考えたら聞きたくもありません。あとは、せいぜい死ぬまで、心の中で謝罪してくださればいいです」

「く……っ!」


 謝罪の言葉を遮られた上に、要求しといて、価値もないと言われてしまいました。元々、生意気なメイドではありましたけど、ここまで態度を変えてくるなんて、普通じゃないです。

 とまぁ、正直その時はブチ切れそうでしたけど、そこで気づきました。普通じゃ、なさすぎるんです。オリアナらしからぬネチっこさは、ツェリーナ姉様の影を散らつかせます。

 更には、恐らくはオリアナと一緒に入ってきたんでしょうけど、見張りの兵士が3人増えているのが気になります。増えた連中、私とオリアナの会話に、聞き耳たてています。


「……それで……謝罪の言葉も聞きたくないなら、何をしに、来たんですか……」


 数日間の監禁生活のせいで、声が上手く出てきません。精一杯に声を出し、オリアナにそう尋ねました。


「おかげさまで、お城を追い出される事になったので、その挨拶に伺ったというのもありますが、国王様から、伝言があります」

「父上、から……?」

「はい」


 頷いて、オリアナが取り出したのは、見覚えのあるハンカチでした。少し汚れたそれは、私が助けたフェアリーの下に敷いてあげておいた、ハンカチです。鉄格子の隙間から、それを中に投げ入れてきたので、私はそれを拾い、手にとって確認したので、間違いありません。


「そこには、何もなかった。国王様は、そうおっしゃっていました。私には意味が分かりませんが、姫様には分かりますか?」

「……そうですか。確かに、聞きましたが、そんな事、父上が直接言いにくれば……いいじゃないですか……」


 私は、小さな声で答えました。

 そこに、あの子がいなかったという事は、別の場所に逃げたか、その前にツェリーナ姉様達に見つかったか、あるいは獣に浚われてしまったか……。確かめる術はありませんが、逃げたと信じたいですね。


「実は、メティア様によって、貴方には面会の禁止令が出されているんです。それは、国王様も王子様や姫様も含め、全員です。私はもう、貴方に会う事はできないと思い、諦めていたのですが、メティア様には格別の配慮をいただきました。おかげさまで最後に、みじめな姫様の姿が見れて、少しは気が晴れましたし、そろそろ行きますね」

「それは……良かったですね……」


 ちなみにメティアとは、お母様の名前です。

 恐らく、初日に訪れたサリア姉様が、私が話した事を父上に伝えた事に、危機感を覚えたんでしょう。それで、面会の禁止ですか。オリアナに許可が下りた理由は分かりませんが……この様子だと、恐らくは私に対する敵対心を見せているから、いいよ的な事でしょうか。


「ちなみに私、この後旅に出るつもりなんです。お金もまぁまぁ溜まってますし、もうじき魔族の軍勢が攻めてくるみたいですし、丁度良いかと思いまして。かねてよりの夢であった、旅に出かけようかと」

「はっ……」


 そんな夢、初めて聞きましたよ。貴方はもっと、やる気のないインドア派だったはずで、そんな趣味ないはずなんですけど。思わず、小さく笑ってしまいました。


「では、ここから出されるまで、精々お元気で。さようなら」


  ここから出されるとき。それは、私が死ぬ時という意味でしょうか。それまでお元気で、とか、どんだけ嫌味なんですか。


「……さようなら。私の、メイドさん」

「……」


 オリアナは、私の嫌味っぽい返しに、メイド服のスカートを摘まんであげて、お辞儀をして去っていきました。

 でも、私はこの一連の会話で、オリアナからメッセージを受け取り、元気が出てきました。いや、そのメッセージの内容は、よく分からないんですけどね。とにかくオリアナは、もうじき何かが起きようとしていると、伝えに来たんですよ。……たぶん。いえ、オリアナとは長い付き合いです。絶対に、たぶん、そうです。でなければ、オリアナが私を罵倒するなんて……あるような、ないような……いやいや、絶対にないです。信じてます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ