表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

大往生中毒

作者: K-chicken

 「自由の刑に処せられている」

 私は考え事をしながら、何処に衒う相手が居るともなく、覚束無い記憶からそんな名言を呟いてみた。

 確か、サルトルだったか。その言葉は舌の上と前頭葉を蠢くようして、何処か不快にさせた。別に、彼が言った事を否定的に捉えているのではない。私は哲学等と云う高尚な学問には甚だ不相応であろうし。ただ、その独り言ちた響きが、卑屈に笑って自分を見上げている気がしてならないのだ。

 

 在り来りの常套句、寧ろ定型文とでも言おうか。更にその前に、私は自らの大きさを推し量っていた。つまり私の人生、細分すれば言動が、どの程度の物なのか。

 青年期、思春期に於ける自己同一性を模索する行為にも似ていると客観的に思ったが、どうやら似て非なる物である様だ。それは単に社会、言い換えれば自分の知る所の構造に、如何にして組み込まれるか、若しくは組み込まれてしまうのか。そこに関心を持つなり、恐怖を覚えるなりする事だろう。併し、私が思っていたのは本質的に違う。私は、何を目掛けて走れば良いのか、解らなかった。最早「良い目標」を認めようとする事自体が烏滸がましい気さえした。

 否、そんなに温い物では到底ない。私は私の思考に銃口を向け、皮を剥いで鞣し、その上に座していたのだ。嗚呼、悍しい。


 此れを苦悩と呼ばずして何と呼ぶ。独善か。憚って演じているのか、あの下卑た笑みを。


 笑いは、次第に冷めた目線と見下すような嘲笑に変わり、200mgのモルヒネが詰まった注射器を私に寄越すようになった。


 

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ