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家庭訪問3

「そうかよ、じゃあ社長さんよぉ、今から保護者面談といこうじゃねぇか」


マリアが父親を睨み付ける


「なにを訳の分からんことを、おい!はやく警察を呼べ!」


付き添いの男がスマホを取り出した

瑠智愛はあわててマリアの腕を掴み引っ張る


「先輩!流石に相手が悪いですよ!謝って帰りましょう!」


「おいオッサン!なんでアンタはガキをここに閉じ込めてるんだよ!納得する理由を聞くまで帰らねぇからな!」


もうこうなってしまっては彼女に何を言っても無駄だ、瑠智愛は大きなため息をつき頭を抱えた


「閉じ込めてるだと?人聞きの悪い事を言うな!さっきも言ったがヤスユキは遊んでる暇などないのだ!国内でも最高峰の講師をつけてエリートとして勉学に励む、それが今のその子に必要な事なのだ!」


「はぁ?最高峰の講師?」


「勿論今は学校に通う必要もない、この年齢のうちに学校で学べる事などたかが知れてるからな!今のヤスユキはもっと上のレベルの学びが必要なのだ」


「くだらねぇ...警察が来たら言ってやるよ、このオッサンは自分の息子を監禁してますってな!」


「生意気な小娘め...おいパトリシア!さっさとこいつを引っ捕らえろ!」


「承知」


メイドが拳を握り飛びかかってくる、 マリアはそれを受け止め後方へジャンプし距離をとった


「おい、オッサン...オッサンもガキの頃学校に通わず閉じ込められてたのかよ?」


「そんなことは関係なかろう!」


再びメイドがマリアへ飛びかかる、マリアはメイドの腕を掴み放り投げた

すかさずチェーンを伸ばし宙でメイドの足に巻き付けそのまま地面に叩きつけた


「オッサンだって、ガキの頃友達くらいいただろ!」


「パトリシア!なにをしとる!」


メイドが立ち上がろうとするがチェーンが両足にしっかり巻き付いていて這いつくばることしかできない


「勉強ばっかりして社長になったのかよ!違うだろ?」


「うるさい!」


「いいか、学校てのは勉強しに行く場所じゃねぇんだよ!友達をつくりにいく場所なんだ!ガキのうちに友達の作り方学んで、将来人付き合いしていくのに役立てるんじゃねぇのかよ!」


益田は歯を食い縛りマリアを睨み付けるが何も言い返さなかった


「ガキの仕事は勉強じゃない!遊ぶことだろ!バカみたいに遊び回った日々が大人になって振り返ったとき心の支えになるんだよ!歳を取ってからじゃもう取り戻せない大事な時間なんだよ!なぁ、オッサン...アンタはどうだったんだよ...」


「わ...私は...」


「アンタにもあるんじゃないのか?楽しかった日々の記憶が...」


「う...わ、私は...」


益田はその場で崩れ落ちた

あわてて付き添いの男が駆け寄り体を支える


「あぁ、そうだ。私だって昔は学び、そして遊んだ。父から受け継いだ会社が私の代でドンドンと規模が大きくなり、このままの勢いを保たなければ...この会社をさらに大きくしなければと...焦ってしまった...」


益田が付き添いの男の手を払い、ヤスユキの元へ歩み寄る


「この子にはエリートとして将来、会社をもっと発展させてほしいと、一方的に私のエゴを押し付けてしまっていたのかもしれない...」


ヤスユキの頭を軽く撫でる


「ヤスユキ、すまなかった...私は取り返しのつかないことをしようとしていた...お前の人生の中で、最も大切で最も自由な瞬間を奪ってしまうところだった...」


その時、サイレンの音と共に警察が到着した


「何があったのですか...って、あ!!阿部マリア!またお前か!」


1人の警官が大声をあげてマリアを指差す


「げっ!ち、ちげぇよ!何もねぇよ!」


「嘘をつくな嘘を!明らかに何かあっただろ!」


警官は手錠を取り返しマリアに近付くがその間に益田が割って入った


「いやぁ、すまない、勘違いだったようだ。本当に何もなかったようだ」


「え?いや、しかし...」


「わざわざ来てもらってすまないが、もう帰ってもらって大丈夫だ」


警官は困惑しつつマリアに視線を向ける

マリアは「さっさと帰れ」と言わんばかりに手を扇ぐ


「は、はぁ...しかし一応事情聴取を」


「いらん、うちの子供とその娘たちが遊んでいてはしゃぎすぎただけだ」


「は、はぁ...」


腑に落ちないという様子でしぶしぶ警察が引き上げていく

さっきの警官が悔しそうな顔でマリアの方を振り返った、マリアは舌を出して挑発し応戦する


「パパ...」


ヤスユキが目を伏せながら益田へ何かを伝えようとモジモジしている

益田はヤスユキの気持ちを察して、頭に手を置き微笑みかけて言う


「行っておいで、あまり遅くなるんじゃないぞ」


ヤスユキの表情が晴れた


「うん!」


そしてタケルの元へ駆け寄り照れ臭そうな笑みを浮かべる


「さ、じゃあ遊んでおいで、お姉ちゃん達はもう帰るから」


瑠智愛が2人の背中を軽く叩く


「え、でも依頼のお金...」


タケルがマリアの方へ視線を向ける


「あー、そうだそうだ。そういえば今期間限定初回無料キャンペーン中だったんだ!タケル、ラッキーだったな。金はいらないぞ」


マリアのわざとらしい棒読みに瑠智愛は思わず吹き出したが、それでこそ阿部マリアだ、と彼女のことを誇らしく思い瑠智愛はマリアの元へ寄り腕を組み頬を擦り付けた


「ベタベタすんなよ気持ち悪いな!」


「それでこそ私の先輩です!」


「うー、離れろよ!」


瑠智愛を引き剥がそうと顔を手で押さえつけるが離れようとしない


「ホントに君は、親御さんから素晴らしい教育を受けたみたいだね」


その益田の言葉にマリアの表情がスッと曇った


「いえ...」


「いやいや、謙遜しなくても良いよ」


「謙遜なんかじゃない...だってアタシは...親父を殺したいと思ってる...」


和やかだった空気が一変した

不味いことを言ってしまったと益田は気まずそうに視線を落とす


「先輩、そろそろ帰りましょうか」


瑠智愛がマリアの肩を軽く叩く

少し間がありマリアが軽く鼻で息を吐き出すといつもの調子に戻って軽く微笑んだ


「そだな、オッサン。庭を荒しちゃってすまねぇ。あとそこのメイドもごめんな」


「ちょっと待ちたまえ、良ければ車で送っていくが」


「マジ?じゃあお願いしちゃおっかなあ」


「先輩!流石にそれは厚かましいですよ!」


「う、わ、わかってるよ!ほらさっさと行くぞ」


「それでは本当にお騒がせしました、これで失礼します」


瑠智愛が益田に一礼してるあいだにマリアは構わず1人で先に行っていた

慌てて彼女に追い付きふと横顔を見るとマリアの瞳はどこか寂しげに見えた


瑠智愛はマリアと父親の間になにがあったのかを知っている

いつの日かマリアの問題も益田親子のように解決する日が来ることを願うばかりだった

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