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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
50、それぞれの小さな戦い

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567、敵か味方か判断に迫られる

アトラーナの本城は、逃げた下働きの雇い人たちが全て戻らないために手が足らず、本格的な復旧が後手に回っていた。

士気は高く、兵達の再編成と城の守りの強化は進んでいる。

ケイルフリントの問題は、国境へ向かったベスレムとレナントの合同軍をラグンベルクが率いて、リリスのいる砦城に入ったと連絡が来ていた。

南からリトス、西からトラン、北からケイルフリントと3方から動きがあるので、どこへでも増援を送る準備をしてはいるが、頭が痛い。

兵の数が少ないので、一方に送ると他が一気に手薄になる。

レナントからは、いつでも加勢の準備をしていると連絡はあったのは心強い。

ルシリア姫は、密に兄と連絡を取っているらしい。

リトスに対して、ベスレムと共同戦線を張ると連絡が来た。

本当に頼りになる兄妹だ。




だが、城には新たな問題が上がっていた。

トランからの加勢と言う名目の一群だ。

ここ、ルランの城下におよそ千人、それを受け入れるかを審議していた。


加勢と信じて、使者を待つ間に、すでに明日にはルランに入る距離だ。

本当に加勢なのか、それとも攻め入るのか。

レナントのガルシアは、加勢だと判断して道を通した。


加勢だとしてもだ。

現状他国に攻められているわけでも無く、城の一部が壊れている状況を見せるのも沽券に関わる。


すでにここ100年ほどは、本城は大規模な修理などやったことも無く、石工を探している最中だ。

魔導師の塔の再建を話し合っていたが、ルランには塔など建てた者が無く、肝心のレナントの工房はレナント城の作業に入っていて、行くならその次だと言って譲らない。

工事の途中で放り出すなど、沽券に関わると言ってきた。


元の設計図も、忘れられている間に虫に食われて解読不能で頭が痛い。

この騒ぎで人夫を集める当ても無い。

塔の再建は後回しで、謁見の間を何とかしなければならないが、今は圧倒的に兵力の建て直しに尽力したい。


「千など受け入れても食料が回りません。」

「5千が千になっただけでも助かるという物。」

「だが千だ。城下が戦いに巻き込まれよう。」

「王よ、使者を送りましょう。」

「使者を送って何とするのか? 何しに来たと問うと? 」


王が顎に手をやり、考えを巡らせながら、討論する家臣たちの声をじっと聞く。

当初5千という話だったが、その人数は国境近くで申し合わせたように3方に別れ、ベスレム、ルラン、そしてケイルフリント側へと向かったと報告が来た。

ケイルフリントに向かった者達は、ベルクたちと合流した頃だ。

戦いになったか、それとも共闘になったのか、それを確認させている。

向こうはベルクの判断に任せて、加勢を依頼されたらすぐに送る。


リトスの崩れた陣営は、立て直すか引き返すかを検討しているのか動きがない。

ベスレムには、レナントが行く。だが相手はリトスだ。

戦いになれば激しくなるだろう。が、


今はまだ動くときでは無い。


様子を見よう。


問題は、ここに向かってくる者達だ。

彼らの様子を見た間者の報告では、ここへ向かう多くは、大型の馬車を併走して、交代で馬車を利用しながらゆっくりと進む、軽装の男たちの行列だと言っていた。

なので、他の問題に対処しながら静観していたわけだ。が、さてどうするか。


元々の情報通りに加勢が目的ならば、先に使者が来るはずだ。

それを待つ。使者が来なければ、戦うしかあるまい。


「関に兵の配置は? 」


「終了しております。加勢目的ならば、必ず関を通るはずです。

近隣2カ所に見張りを送っていますので、関にいる人員で対処も可能です。

他の場所から侵入して戦いになりましたら、集結して対処します。」


「よし、それでいい。ケイルフリント側の砦からはまだ連絡はないか?

リリスは…… 火の巫子の1人は? 無事なのかどうか、確認せよ。」


「はい、すぐに。」


立ち上がり、窓から中庭を見下ろす。

魔物との戦いで、庭木はなぎ払われ、謁見の間の残骸がまき散らされている。

これを元に戻すのにいくらかかるのか、財力にも限度がある。

元の煌びやかな物には戻せぬとしても、これの再建に仲買や口利きをする商人貴族たちが戻るのがいつなのか、まだ貴族の姿は1人も見ない。


「いや、貴族は1人いたな。骨のある人間が、1人。

いや、姿を見ないから逃げたか。」


王は、侍従のロルドーにその人物を呼んでくるように命じた。

侍従が視線を走らせると、執事の一人が一礼して下がって行く。

そして、ロルドーから思ってもいなかった言葉が返ってきた。


「耳に入った情報ですが、ダンレンドのご子息は、このところ城下に人を呼びに行くのが仕事の模様でございます。」


「人を? 」


「は、今のままでは城の仕事が回らぬとかで。

あの方は、城に上がるまでは城下にいらっしゃったので、顔が利く物かと。

貴族ではありますが、それにとらわれない機転が利く青年です。

欲も無いが風格など持ち合わせないのも武器であるなど申されているようで。」


王は、ほうと顎を撫でて見回した。

身を売って生活した最下の者だと、王子の側近には相応しくないと毒を吐く者が多かったが、逃げ帰ることなく、この城のために動いているか。


「王子の側近ではありますので。

自然と人を使う立場に落ち着くようでございますな。」


「で? 1人くらい戻ってきたのか? 」


「は、すでに城下の町や近隣の村からも百近くが登城して、まずは城内の原状回復が進んでおります。

女が多いもので、力仕事は男手が増えてからと。」


「女が先に登城したか。」


「はい、聞いたところによると、男たちは魔物の誘惑が恐ろしかったそうで。

命を落としたのはほぼ男でしたから。

王子の悪い噂も、魔物が起こした物と吹聴も兼ねてと言うておりましたが、どこまで出来るか…… 

仕方ないから手を貸すのだと、何とも態度が悪うございましたが、元よりあのような青年でございましょう。ほっほっほ。」


臣下の議論は、トランが攻めてきたときの対処に話が移っている。


「騎馬隊の人員はどうなっているか? 」


議論していた1人が、軽く手を上げ応えた。


「隊長、副隊長が共に遺体で見つかっておりますが、小隊をまとめていた者達を格上げして再編成を行うよう命じました。

騎馬隊を連絡係に使うことにして、腕より足の速さを優先せよと伝えています。」


「武芸に秀でた兵が主に命を落としていますので、今は騎士殿のほとんどが無事であったことが幸いしております。」


ザレルは無言で表情も変えず、うなずいている。

皆、散々ザレルを腰抜け呼ばわりしていたが、今となってはそれが最善の策だったか。

まこと、頼りになる男よ。


「ダンレンド様がお見えになりました。」


執事が告げると、臣下達が話を止めて一斉にこちらへと向きを変える。

ルクレシアが入るなり嫌な顔をして、フンと息を吐き王の前に進む。

ピタリと老執事がその後に付き、チラリと冷たい視線を臣下達に送った。

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