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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
44、闇落ち精霊との戦い

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494、魔物退治再開

アトラーナ本城のルラン城は、高台にありながら比較的敷地の広い、アトラーナでも一番広く格式の高い城だ。

上空から見ると、前面の執務を行う執務棟と呼ばれる本館の奥に王の住まう居城が石廊下で繋がり、居城の横には小振りの来客の館と呼ばれる別棟があり、2方には物見の塔が、そしてもっとも奥に崩れた魔導師の塔のあとがある。

居城と本館の間に謁見の間が、吹き抜けの高い屋根の下で、城でも一番の大きな部屋として存在感を出していた。


中庭の空中庭園は色とりどりの花が年中楽しむことが出来、整った庭は、精霊の国としての威厳とどこか妖しい美しさに満ちて、王家自慢の気品に満ちた城だった。


だったと言うしか無い惨状だ。


城内は、敷地の至る所に人が倒れ、死んでいるのか生きているのかもわからない。

一般兵やランドレールが目もくれなかった女達が辛うじて生きているものの、魔物の餌になることを恐れ、慌てて城を出ようと逃げ惑う。

王は強力な結界に守られた来客の館に籠城し、魔物が消えるまでをひっそりと待っている。


来客の間をいちべつして、屋根の一部が崩れ落ちた謁見の間ヘと向かう。

上空をホムラに乗って飛び、屋根に空いた穴から様子をうかがい、いったん離れて一番大きな本館の屋根の上に降りた。

謁見の間は、黒い澱が部屋を満たして、どこにキアナルーサの身体があるのかわからない。

宰相がいた玉座付近を見たが、すでに澱に飲まれてその身体は見えなくなっている。

リリスが乱れた髪をかき上げ、大きくため息をつき見回していると、マリナが心話で話しかけてきた。


『 見えないけど、いるね 』


『 うん、中央付近でこちらを見てた 』


『 どちらか神は戻った? 』


『 まだだよ、フレア様は来ないと思う 』


『 だろうね。シュリクマの分かたれた火だけでは役不足だな 』


『 何も無かった頃よりも、うんとラクになったけどね。

 でも、フレア様はこの下にいらっしゃる。

 それがわかっただけでも十分気がラクだ 』


『 眷属解放まで無理しちゃ駄目だよ 』


『 わかってる、私は生きなくてはならない。

 青も実体を呼んじゃダメだよ 』


『 もちろん、僕の実体は荷物になるだけさ。

 僕は自分のこと、ちゃんとわかってるんだけどね。

 赤はすぐに無理するから心配だよ、シャシュラ様は? 』


『 ダメダメ、ちゃんとお名前を言わなきゃ不敬!不敬だよ?

シャシュリシュラカ様!あれ? 』


その時、リリスの頭に、ぴょこんとウサギの耳の光の玉が出てきた。

フレアゴートを呼んでくると息巻いていったのに、駄目だったのだろう。


「主様、説得はいかがでした?」


「 うん、駄目だって 」


しょぼんと耳を下げて、元気が無い。

リリスがクスクス笑って、光の玉を手の甲に乗せると肩へと移す。

しょぼんと光がぐんぐん落ちて、心の動きが光の強さで現れるこの神は感情がわかりやすい。


「主様、私はあなた様の巫子でございます。

あなた様が私の全て、たとえフレアゴート様がお出でにならずとも、あなた様は光の神、命の源、私にとっては何物にも代えがたい最高の神。

これ以上、何を望みましょう。」


「 うん、でも、我には払えなかった 」


「あれを払うなど、フレア様でも無理かと。

なにしろ、愛の力には万物何物にも敵いませんとも。恐ろしいことで。」


「 愛か? 」


「愛でございます。死しても壊れぬ、(まこと)の愛でございます。」


「おお!良き!善き哉(よきかな)!」


なんだかキラキラしてきた。


「くふふ、可愛い!」


「善き哉!善き哉!真実の愛!」


ぽよんぽよん飛び跳ねるカミを肩に乗せて、リリスは心を切り替えると、マリナとうなずき合う。


「行こうか。まずは、出来ることをしよう。」


「そうだね、さて、対応は僕も青と同じ考えだ。」


「じゃあ、屋根だね。」


「うん、やってみよう。天井の装飾はとても美しかったんだけど、惜しいね。」


「まあ、ここはもう、そのまま使えるわけ無いさ。赤は優しいね」


リリスにマリナが苦笑して、ヒョイと肩を上げる。


「ホカゲの結界は、きちんとあいつをあの部屋に閉じ込めてる。

流石だね。」


ホカゲがマリナに急に褒められて、一礼する。


「恐れ多い、当然のこと。」


「まあ、当然だね。屋根が破られたらどこまで結界は効果ある?」


「壁に集中してかけているので、屋根には効果が薄く、今のあの状況では、突破されるかもしれません。」


マリナが、軽くうなずいた。


「そう、問題ないよ。

フレア様もお近くにいるし、僕も結界には手が貸せる。」


「坊ちゃまはここに控えておりましょう。」


「うん、少し離れて待ってて。ゴウカ、守ってあげてね、頼むよ。」


「御心のままに」



「では、」


「行きましょう。」


獣の姿のホムラがリリスを乗せて、大きくジャンプした。

リリスの指示を受けて屋根のはしに飛び降りると、下から黒い澱が槍のように屋根を突き抜けてくる。


「角を目指して走れ!」


「は!」


宙に現れた黒い澱は、屋根を壊しながらリリスを追ってきた。


ガガガガガがガガガッ!!


「屋根と一緒に落ちないように!」


「承知!」


だが、一辺を壊した所で、突然何を目的にしているのかがバレたのか、澱は追うのをやめた。

マリナが宙に浮いたまま振り返る。


「マズい!バレたかな?」


「 下です! 」


ホムラが叫び、突然飛び上がるとその場所をバンッと黒い槍が突き抜ける。

ギリギリで避けながら、ホムラが走る。


バンッ! ガッ! ガガッ!バンバンバン!!


「逃げて!触れたらマズいよ!注意して!」


マリナの声に立ち止まるヒマも無く、屋根を走るホムラを追って、次々と槍が突き抜けてきた。

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