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477、魔導の探求者

ぐにゃりといびつに曲がった顔がこちらを向いた。

生きたまま槍に貫かれ、無理矢理合体させられている。

二つの顔が歪み、上の顔は膨れ上がって元の可憐な精霊の面影さえ無い。


『  タ、タ、ス、ケ、ケ  』


下になっている一匹が千切れかけていた羽根を落とし、リリスを見て涙を流す。

ボコボコと身体の中で何かが暴れて見えて、それが余計に不気味だった。



「うっ!」


地の、眷属だ。

可憐に飛び回る下級精霊、リリスが思わず口を押さえて息を呑む。

異形の魔物が、黒い針を生み出し、リリスに放った。


バッとホムラが翼で弾こうとした瞬間、その針に触れた羽根がリリスの前でボッとはじけ飛ぶ。


「ホムラ!」


「気遣いご無用です。」


「なんだこの力。内から弾けるような……あの、姿。


そうか、精霊の力をひっくり返したのですね。

2体の精霊を無理矢理繋いで力の反発する作用を生み出したのか。」


一目でつぶやくリリスに、闇落ち精霊が仰天する。


「何だ?お前は、なぜそう、すぐに解明出来る?!」


「えっ、だって、精霊の力を凝縮させて、あんないびつに繋げたら普通はじけ飛びますよ。

その証拠に、上の子はまともに反動を受けて今にも弾けそうだ。

生きていればいいのですが、意識の無いあの子をお前は操っているのだな?」


事も無げに言うリリスに、闇落ち精霊がたじろいだ。

まるでこの元魔導師は、神に仕えるような顔をして魔物のように命で試してきたようだ。


「貴様、精霊をもてあそんだな?」


「まさか!私が考えるのは、こうすればそうなるだろうという、この頭の中で導き出す魔導の答え。

魔導はときに恐ろしい物ですが、私は魔導に希望を望みます。

それは傷つけるものでは無く、救うもので無くてはなりません。

希望無くして、それに先は無いのです。」


横で聞いていたマリナが、我慢出来ないように笑い出した。


『 クククク、馬鹿だね、リリは生まれついてからずっと魔導と精霊の中で暮らしてきたんだよ?

ただただ人間を馬鹿にして復讐の中で生きてきた、お前などには考えも及ばない天才なのさ。 』


クッと、精霊が苦虫を噛む。

今の魔導師たちは堕落している。巫子も同じだ、昔ほど力を持っていない。

自分の存在に気づいたのは、殺されず生き延びたこの2人だった。

そうだ、戦える魔導師も無く、我らの悲願はこの二人がいなければ、簡単に成就出来たはず。


忌々しい。


この時に合わせるように、

生まれるべくして生まれたというのか!


「天才など、意味がわからない。

貴様は一体何者だ?ガラリアならばまだしも、見破れるものなど無いはずなのだ。」


「天才などでは無いですよ、私は常に探求しているのです。

魔導というものを、その応用を。

精霊の力は、魔導師の補佐となります。ならば、効果的に使う力の流れを知らねばならないのです。」


リリスが目を輝かせて、白い魔導師を指さす。


「地の精霊はもろいように見えて、実は大地と常につながり身体を大きな気が循環している。

お前は一番それを知っているでしょう。

なにしろ自らが精霊であったもの。


それをあの血の槍が無理矢理繋いで反発した流れを作り、反作用の武器としてひずみを作り発射する。」


異形の魔導師が手を伸ばし、キイィィンと空気を振動させ、手の中に黒いひずみが出来て収縮する。


「ほら、ほら、一瞬大きく膨らみ、小さく絞る。力が凝縮する!

あんなもの、初めて見ます。

だから、触れた瞬間、 爆発的に! 」


細い針にになると、いきなり飛んできた。


「 弾けて大きく破壊する! 」


リリスが前に出て光り輝く手でバンと弾く。

弾いた瞬間爆発して、リリスの姿が揺らぎ、痛みに手を引いた。


「 いっ! 」


「赤様!」


「いったーーっ!これはなかなか効きます。

精霊の力だから手の光を突破されてしまいますね。

それが目的か。

さて、どうしよう。

地の精霊なれば、イネス様なら強制解除出来るはず。」


「お呼びしますか?」


巫子を呼ぶと聞いて、闇落ち精霊が焦った。

地の巫子だけは、一番会いたくない。

怖い、巫子の怒りが、巫子を通して来る精霊王の怒りが恐ろしい!



「 馬鹿な!! 地の巫子だと?!そんな物に何が出来る! 」


「お前は地の巫子が一番が怖いのだろう?

地の精霊王の怒りを買うのが一番恐ろしい。

そう言うものだよ、死して闇に落ちても地の精霊である事に変わりは無い。」


グッと精霊がひるむ。


地の巫子はマズい!血判状は諦めた。

まだ城内には、生きた人間が沢山残っている。


いったん引いて力を補充するべきだ。

まぶしいほどの赤の巫子は、自分を払ってここで黄泉に送るつもりだろう。


恐ろしい、目を黒く変えても、まぶしくて魂が抜けそうになる。

まだ、まだ私は彼の敵を討ってないのに。


嫌だ、


嫌だ、


まだ、まだ、


まだ手はある。


地下のランドレールの本体が持つ、古い火の指輪だ。

あれがあるからランドレールは肉体を失っても、これほどの力を持つのだ。


指輪を手に入れれば、まだ道はある。

今ならあの地下牢は、封印が弱く中に入る隙間がある。

指輪を奪えばランドレールは消えるだろうが、かまわない。


闇落ち精霊は次第に追い詰められ、ランドレールの眠る地下牢へ逃れる事を考え始めた。

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