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416、次代を担う者

食事途中だった者は食事を終わらせて、食器を片付け会議を再開する。

レナント側の助け手は、ルシリア姫が兄に頼んだらしい。

あまりにも人が集まらないので、このままでは登城した時に巫子を守り切れないと思ったらしい。

ベスレムには状況説明だけのつもりだったが、ラグンベルク公自身から加勢の申し出があったと告げた。


「公は急に便りの途絶えた王と宰相をご心配なさっているわ。

悪霊のことまで水鏡でお話しできなかったから、きっと、ベルク様もご不安だと思います」


姫が目を伏せ、手を合わせる。

レナントは、ベスレムとは連絡を密に取り、互いの地に別荘を持っている。

親戚同士、国境を納める者として付き合いは密だ。


「とは言え、ベスレムからの増援は心強いですな」


「ええ、操られる者を殺さず捕らえようと思ったら、1対1では無理。

まず、その殺さずと言うのを考えないことが一番ラクなのですけれど……

現状甘くは無いわ」


姫がため息交じりで首を振る。

当然、剣を振りかざす者を傷つけず捕らえるなど、至難の業だろう。

だが、マリナが口を開いた。


「殺すと禍根を残してしまう。

それは今後神殿を建てる事を考えると、望まぬ事。

それが理想だが、力業がどこまで通用するかだね」


椅子を後ろに倒してゆらゆらと、何故か機嫌良さそうにマリナが話す。

意外と戦わない巫子は戦いの話が好きだ。

その横で、リリスがテーブルに肘をつき顔の前で手を組んだ。


「戦いは、マリナがいればどうとでもなるでしょう。

ですが今回のこの戦いを……、我々のやっていることが城下の人々の目に、どう映るかを私は考えています。


人々に悪霊の存在をどう伝えるか。

それは重要なことです。


でなければ、我々、そしてレナントやベスレムの方達までもが、今後反逆者として見られてしまう憂き目に遭ってしまいます。

人心をいかにこちらの味方にするか、これを成さなくては我らの戦いは負けです」


食堂の皆がハッとする。

そして、騎士達が大きくうなずいた。


「それは織り込み済みだぜ、巫子殿。

レスラ殿の指示で俺達が動いてる」


グッとブルースたちが指を立てる。

レスラカーンの横で、側近のライアが立ち上がった。


「レスラカーン様の指示で、まずは城下の噂をオスロー殿と騎士殿に調査してもらった。

主に広がっているのは、王子の奇行とそして城下で多く出ていた行方不明者に関することだ」


ミランが手を上げ立ち上がる。


「内容は私から。

王子の奇行は、以前よりあった話です。

それは城の兵を誘惑し、関係を持つという例の紐付け作業と思われます。

これは兵自身が酒場で漏らし、広まった物。ですが、話が最近は変わってきています。

それを語っていた人物が、人が変わったように乱暴になったと言う噂です。

そしてもう一つは、多数出ていると言う行方知れずになった人々。

多くは夜の外出したまま帰ってこないことから、城下は魔物が徘徊して呪われているのだと言われています」


「ガー……」


王子がガッカリして、うなだれる。

ライアが話そうとすると、レスラカーンが手を上げた。


「私が話そう、恐らくこれは、王家自身である私が話さねばならぬ事だ。

オスローは、内容を報告したあと、風の丘の火の巫子に希望を託したいとこぼした。

城下の人々も、青殿の火を見、声を聞いた人々の期待は大きいらしい。

直接希望を託せと流布の指示はしていないが、自然と声は大きくなっている。

火の巫子を知らぬ者ばかりだが、それほど青殿の声は人々の胸に残ったのだ。


反して、王に対する権威の低下ははなはだしい。

城下の混乱を放置しているこの現状。

そして世継ぎがこの有様では当然のことだろう。

兵は城の財産。有事に1人でも多くが士気を挙げ、戦うことが出来ねば国は滅びる。

その兵を誘惑して堕落させるなど、王家の者の行動では無い。


民は希望を王や王子にでは無く、巫子に求めている。

これは王ばかりでは無く、次代の王に対する失望だと私は思う」


バッサリと、言い放った。

それは、王弟の子であるレスラカーンだから言えることだろう。

誰もが顔を合わせ、同意を口にすることも反論も出来ず、シンとする。


意を決したように、レスラカーンが顔を上げる。

そしてとうとう口を開いた。


「キアナルーサは、王になるべきではない。

私は伯父上に……王にお会いしたら、まずこのことを進言するつもりだ」


「では、お前がなるのか?レスラカーン。次の王に」


同じ王族のルシリアが、言葉も硬く言い放つ。

だが、レスラカーンは首を振った。


「次代を決めるのは王だ。

王族の男子は他にもいらっしゃる。

私が強く思うのは次を継ぐのがキアナルーサでは、国が混乱すると、そう思うのだ。

だが、それでも王が世継ぎをキアナ以外に譲らないのであれば、私はこの見えない目を見開いて、全力で後ろをお守りする。

何があろうと、どんな手を使っても国を守る」


つまり、キアナルーサを守るのでは無く、彼が全力で守るのは国なのだ。

王子は、顔を上げてレスラをじっと見ると、反論しなかった。


「僕はガー、父上のお考えに従うガー」


「私はキアナが好きだよ、でも、この事態を引き起こしたのは、自分自身にも原因があると、自分の行動を見つめて欲しいんだ。

キアナ、僕は目が見えなくて頼りにならないだろう?

でも、耳はいいんだ。君の目よりも僕の耳はいい。君は僕をどう評価していた?

私は、この耳で君をずっと見てきたんだ、その結論だよ」


「わかってるガー、僕は……わかってるガー」


国を思う王子同士の、辛らつな戦いがそこにあるようで、皆言葉を失っていた。

レスラカーンはオスローと繋ぎを得たことで、情報が入りやすくなっていました。

王子のこれまでの素行と、不動の王に悪い話しか耳に入りません。

オスローは、登城をやめて配下の者と城下の民の声を収集しています。

彼は宰相を見限り、レスラカーンの指示で動いています。

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