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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
33.日の神おろし

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392、命令通りに動く兵達

地面に累々と部下共々へばりつきながら、それを率いる男が上目遣いで愛想笑いをした。


「あの、あの、巫子殿、そちらの兵達はどうなったのですか?あの、まさか、死…… 」



「 いいえ、ご心配なく。お国にお帰りになっただけです 」



「そ、そうですか。しかし、我らも王子の勅命を頂いた身、……私だけでは……」


男が戸惑いながらボソボソと答える。



「 おや、即断出来ないのですね?

  でも、解いたら理由もなく村人を殺すのでしょう? 」



「我々は、村人を丘に追い込めと言われてきただけで……

殺すのは傭兵達の仕事だったのです。

しかしこうなると、話が変わってしまいました。

巫子のかたりの手助けをする村人の処分は、王子だけではなく、宰相閣下の(めい)でもあるので……わかって頂きたい」



「 わかりません。私を見ても、かたりと仰るのですか? 」



「王家の方々は、そう判断しておいでです。ならば、くつがえす事は出来ません」



「 かたりではないと言っても、力を見せても信じて頂けない。

  あなたは私に、人が意味も無く殺されるのを見ていろと仰るので? 」



「し、しかし、私だけでは判断しかねます……

私たちは好きで殺しに来たのでは無いのです。命令なので、兵ならば上の命令は絶対です。

ですが、私は精霊の国の兵士、巫子様には剣を向けられません。ですが、村人は……」


一体この男は何なのだ?何を言っているのだ?言っている事が破綻している。

自分で考えない、こんな男がこれだけの兵を率いている。

少なくとも理由のある魔物よりタチが悪い。


判断しようともしない。

これほどの力を見せても迷っている。

王家と巫子を天秤にかけている。


だが、いい方に考えればそれは、王子の命令に忠実に従いたいという、忠義にも辛うじて見える。

それでも、自分の後ろにいる神に対する恐れが見えない。(うやま)いの気持ちがない。

ただただ、恐怖しか見えない。

精霊の国の兵でありながら、忘れられた神というのは何と軽い物だろう。


リリスは顔を上げて、少し考えた。



「 わかりました。では…………


  決めるまでそこにいなさい 」



「「 えっ!? 」」



「 あなた様がこの兵達を率いているのなら、あなたが判断なさい。

  勅命を受けたからには、それ相応の覚悟と判断が求められる物です。

  手を引くか、引かないか、あなたが決めなさい。

  引かなければ、私は火をもって全力で戦いましょう。

  ですが……

  今のあなたは戦うとも、引くとも言っていない。

  ただ、決めかねると言っている。

  ならば、結論が出るのを待ちましょう。

  運良く、現状は生きるか死ぬかという状況ではありません。


  では、さらば 」



「えっ??!!ちょっと、待って下さい!!


巫子殿!!」


リリスはクルリときびすを返し、スタスタと丘の方へと戻りはじめる。

その姿は白い輝きが次第に消え、そして赤く燃える髪が風に消えるように普通の赤い髪へと変わった。


「巫子殿!」


「巫子様!お許しを!!」


背後からの悲鳴にも似た苦しそうな叫びに目を閉じ、そして丘へと歩んで戻って行く。

手を合わせ、日の神に礼を言った。



「シャシュラマシュリカカシュカシャラ様、御礼を申し上げます。

お力を貸して頂きありがとうございました」



『  お前は面白い!!放置するとは!!  』



「放置ではありません、あれだけの兵を率いていながら、決断も出来ない我が国の兵にガッカリしただけです」



『   あれは放置とは言わぬのか?  』



「んー、やっぱり放置ですね」



『  はっはっはっはっはっは!!


お前は面白い!!我が名を違えず言えたのは、お前が初めてよ!


我が巫子、汝には力を与える。自由に使え!!  』



「ありがとうございます。

ですが、私の近くにも来て下さいませ。私にはあなた様の存在が必要なのです」



『  また呼べ、いつでも近くに来ようとも


   気が向いたら  』



「それ、いつでもとは言いませんよ?」



『  わはははははははは!!  』



ふっと、身体が重くなり、トトッと2歩足がよろめいた。

日の神が降りると、身体が風に舞い上がるように軽い。

あの時、名が間違ってなかったのは運が良かった。

スッと口から出たのは、過去の巫子たちが力を貸してくれたのかもしれない。


” たすけて!たすけてくれ! ”


背後に兵達の心の声が響いてくる。


わかっている、自分はひどい事をしている。


だが、この力を前にして、引く判断をしてもらいたかったのだ。

彼らが自分を何の躊躇も無く巫子と呼んだのは、紛れもなく恐怖からだろう。

だが、そこに敬意はない。

神に対する恐れもなかった。


自分は怒りにまかせて2人の腕を封じたが、彼らを城に返すのは良しとしないと考えた。

無駄に戦いを生んでしまう。だから、地の精霊に頼んでいっそ故郷に帰す事にしたのだ。


” かたりの火の巫子が!巫子がこんな事をするものか! ”


” 殺してやる! ”


ああ……自分への怒りが、怨嗟の声に変わった。


「止めて下さい、あなたたちを解放する事が出来なくなってしまう。

考えて、自分たちの目で見たものから、自分たちはどうすればいいのかを。

あなたたちは考える事をやめている。


それでは魔物の思うつぼなのです。

それでは、魔物の手先でしかない。


本当に戦う相手は誰なのか。

自分の(あるじ)の視線がどこを向いているのか、あなたたちは考えなければいけないのです」


リリスは顔を上げ、丘を見ると大きく深呼吸をした。

母に会いたい気持ちがわいてくる。

精霊の母に。

胸のシャツを握りしめ、リリスは兵達の声に耐えながら丘へと歩みを進めていた。

兵は確かに命令を聞くのが仕事です。

ですが、かたりだと言われて見たものが、かたりじゃ無いと判断したら、それは引く事も出来る柔軟性も必要だとリリスは思うのです。

言われたとおりに動くのはラクです。

考える事をやめるのは誰でも出来ます。

リリスは兵として、その質を問うたのです。

あきれ果てて……

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