表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

385/562

384、祭壇の役割

「これは、見たところ王子が集めた傭兵が多いな。

馬上の戦士も見た事もない顔が多い」


ガーラントが腕を組み漏らす。


「私は力を貸せないよ。

地の神殿の意志は確認していない」


水鏡を見ていたイネスが身を起こして念を押す。

横でサファイアが、うなずきながら訪ねた。


「ヴァシュラム様の気配は感じますか?」


「いや、とても不安定だ。強くなる時もあるし、弱くなる時もある。

今は……そうだな、なんだろう、言いようのない感じだ」


「では、やはり御身のお力は不安定かと存じます」


「わかってるよ、サファイア。

でも、村に結界をしいて、魔物から村人を守ることは出来ると思う。

だが直接襲ってくる兵からは無理だ。1人1人倒すしか無い。

どうするんだ?リリ」


訪ねられ、リリスとマリナが手を繋いで水鏡をのぞき込む。

2人の髪が、赤と青の炎にボッと燃え上がった。


「な、な、大丈夫なのかい?ここは干した薬草だらけだぞ?」


「大丈夫さ、この炎は我らのオーラ、本物の火とは違う。

ほら、こうすれば、誰が紐付きの者か見えるだろう?」


マリナが水面に手をかざす。

赤黒い、太さの違う紐が無数に多くの兵から出ている。

驚くほどのその数に、皆が声を上げた。


「まさか、この数が??!」


「なんだ?こりゃあ??」


リリスが小さくため息を漏らす。


「紐の先にいる人々は、あの悪霊に紐付けられた人です。

配下、手下と言ったがわかりやすいでしょうか?」


「太さの違いは?」


「悪霊と結んだ関係の太さです。思うに悪霊は色と欲で出来ていますから、太い方はあの清めた騎士と同じ状況でしょうね」


「うわぁ、王子閉め出して正解か。聞きたく無さそうだったもんなあ」


「当たり前ですよ、自分の身体で勝手に色事に使われたら死にます」


ミランの吐き出した言葉に、思わずリリスが手を握る。

ハッと、ミランが彼を見た。


「ミラン様、死んじゃ駄目です。許しません」


「死にませんのでご安心を」


「良かった」


燃え上がる髪の火の巫子は、ニッコリ笑う。

冗談が通じるようで通じない、真面目さが変わらない彼の性格に、フフッと笑った。


「うーん、正気の方ばかりでもないようですね。

話し合うのも無駄のようなので、お帰り願いましょう」


「どうやって?」


リリスがんーと考え、神官を呼んだ。


「どうでしょう、私が霊体で追い払うというのは。

先代はどうされていたでしょうか?」


グレンがゴウカと顔を合わせ、少し考えて顔の前垂れを上げ頭を下げた。


「日の神はとても気まぐれな御方です。

力を貸して下さるかどうか、それは相性1つと存じます。

かなり代をさかのぼった話ですと王族の出の巫子様で、日の神のお心を掴む事が出来ず、力が不十分でご苦労されたという話も聞いた事がございます」


「なるほど、私は初めて神のお声をお聞きして、ただただ懐かしさだけを感じておりましたが……

相性のお悪い方もいらっしゃったのですね。

何か日の神と少しでもお近付きになれる方法はご存じでしょうか?」


「それでしたら……祭壇が必要かと。

祭壇は、神をおまつりするもの。神との対話の場とあります。

ですが、祭壇はただ作っても意味はありません。

我らには良くわからぬ、道がそこにはあるのだと、リリサ様は仰っていらっしゃいました」


「道……は、通せば良いのですね?

わかりました」


きっぱりと言い放つリリスに、ハッと神官達の顔が驚きに変わった。

神事など何一つご存じででは無いこの方が、出来るのだろうか……

そんな杞憂も吹き飛ぶような、この心強さ。


「やってみます!私にはそれしか無いのです。

では、簡易な物で構いません、祭壇を作りましょう。

そうですね、2階の私の部屋が角部屋で朝日の方に窓があるのでよろしいかと。

ベッドは廊下に出しても構いません。

私はどこでも眠れるので」


「承知致しました」


神官達が薬草倉庫の廊下を出て、リリスの部屋に向かう。

廊下に出ると、掃除していたカナンが後ろをついて行くエリンに、そうっとささやいた。


「巫子様を廊下で寝かせるのはまずいですよね」


「ええ、もちろん。どこかに寝台は移動させましょう」


「では、イネス様のお部屋が広いですので!」


イネスがピクンと耳を立て、薬草部屋から顔を出してにっこりカナンに大きくうなずく。


「そうですね、あの部屋は余裕がありますね。ではそうしましょうか」


「はい!」


カナンがイネスに腕で丸を作り、イネスが彼に満面の笑みで親指を立てた。

神官は、神殿の心臓部である祭壇の事を語ります。

ですが、リリスは見た事もありません。

聖なる火も無い、眷属もいない祭壇で、何が出来るのかさっぱりです。

それでも、やれる事をやりましょうと力強く言います。

彼はもしかしたら、日の神との相性の良さを感じているのかも知れません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ